走り切った、その先へ。
ハーフマラソンチャレンジ⑲ ―最終章―
■ いよいよ本番
2025年11月1日(土)。
人生初のハーフマラソン、横浜ノースドックラン2025 当日。
昨日までは不思議なほど静かだった心が、朝を迎えるとざわめき出した。
緊張。期待。そして、少しの恐怖。
平常心を取り戻すために、いつも通りのルーティンを淡々とこなす。
乾布摩擦
ストレッチ
マインドフルネス
スタートは正午12時。
ブランチ的に、消化がよくエネルギーになるものを中心に食事を整えた。
■ 戦略を練る
会場入りはスタート2時間前。
「2時間切り」のための作戦を、冷静に整理する。
1️⃣ 十分なウォーミングアップで序盤の硬さを解消。
2️⃣ 最初の1.0975kmでリズムをつくる。
3️⃣ 可能ならペーサーに付く。
いつも一人で走っていたから、集団の中でペースを掴むのは未知の体験だった。
だが、不安よりも「この空気に身を委ねよう」という気持ちの方が勝っていた。
■ スタート
スタートラインに整列。
ざっと見ても千人を超えるランナー。
号砲が遠くで鳴り、集団がゆっくり動き始めた。
最初の1kmは思うようにスピードを出せない。
「このペースで2時間切り、いけるのか?」
不安が頭をよぎる。
スマホのアプリが告げる。
「1km到達、ペース6分5秒」
焦るな。まだ始まったばかりだ。
■ オーバーペース
5kmを一周した時点で、コース全体の感覚をつかんだ。
そして、意識せずペースを上げていた。
5’23”、5’11”、5’15”、5’16”…
体は軽い。リズムも悪くない。
「いける。走れる。俺はやれる。」
だが、11kmを過ぎたあたりから、
身体の奥で“何か”がきしみ始めた。
■ 身体の異変
12km地点。
紙コップのスポーツドリンクを掴もうとした瞬間、
腕にしびれを感じた。
脱水か、疲労か。ペースは落ち始める。
5’32”、5’37”、5’39”、5’42”…
気持ちで走るしかなかった。
■ 最後にものを言うのは――
残り5km。
脚は棒のようで、呼吸も乱れていた。
ふと、かつて麻雀プロの山本さんに言われた言葉が脳裏によみがえる。
「最後にものを言うのは、結局“根性”だよ。」
フォームも崩れ、足取りも重い。
だが、立ち止まった瞬間に終わる。
「根性」を絞り出し、最低限のペースを保ち続けた。
■ 滑り込みセーフ
ラスト2kmが永遠のように長かった。
視界の先、「Finish」の文字が見えた瞬間、
体中の力を振り絞り、なだれ込むようにゴールラインを越えた。
グロスタイム:1時間59分02秒。
ギリギリ、ハーフ2時間切り達成。



全身が熱い。
めまいとノイズのような光の中で、
「生きてる」という実感だけが鮮明にあった。
■ 走り終えて
完走直後は「もう二度と走りたくない」と思った。
だが、湯船で身体を温めるうちに、
ふと「次はフルマラソンか」と考えている自分がいた。
世間的に見れば、特別な記録ではない。
けれど、「自分との約束を守った」という一点が、
何よりの報酬だった。
走ることは、心を整えること。
そして、自分を信じる力を取り戻すこと。
明日からまた、一歩ずつ進めばいい。
走り続ける限り、人生に“ゴール”はないのだから。



(スタルヒン)
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