[映画]『007 ノー・タイム・トゥ・ダイ (キャリー・ジョージ・フクナガ監督/2020)』

データ
原題: No Time to Die
監督: Cary Joji Fukunaga
製作年度: 2021
製作国: アメリカ=イギリス
アスペクト比: 1:2.35f
上映時間: 2h43
公開日: 2021年10月1日
鑑賞日: 2021年10月16日 (MOVIX川口)
配給: 東宝東和
鑑賞時の感想 (mixiより転載)
『カジノ・ロワイヤル(2006)』で6代目のジェームズ・ボンドに抜擢されたダニエル・クレイグの最終作ということでそれに相応しい?内容となった。ただ家族をネタにしたのは致命的な間違いで、凡百のアクションものにつきものの「足枷」となり、思った通りのクライマックスに向けてのスローダウンとなった。
監督含む3人で原案を作り、4人で仕上げたシナリオはいろいろと見せ場を作っていたのだろうが、監督がうまくさばき切れなかった模様。シーンごとのじっくりとした描写の割には話のつなぎ方が乱暴で、今回のマクガフィンであるDNA兵器の扱いがゾンザイになり、最後まで話が持たせられなかった。その結果のシリーズ最長の163分である。
キャリー・フクナガ監督は初めてだが、このシリーズに適任ではなかったのでは。映画が始まると2つのプロローグが重なり、お楽しみのオープニングタイトルが始まるまでに30分近く要するのも長すぎ、出鼻をくじかれた。脚本のせいか演出のせいか判断できないけど。演出で言うと、マシンガンやら手榴弾やらで正面攻撃されてもほぼ無傷というのも乱暴だなーと思った。"荒唐無稽"と"シリアス"のせめぎあいが上手くいく時といかない時が作品によってバラバラだが、今回はバランスが非常によくない。
話も込み入りすぎていて、ヒロインの父親が「ミスター・ホワイト」で、『カジノ・ロワイヤル』『慰めの報酬 (2008)』に出てたじゃん、と言われても。。とか、ボンドが墓参りしているヴェスパー・リンドはその「ミスター・ホワイト」の部下で『カジノ・ロワイヤル』で死んだとか、よほど過去のシリーズをちゃんと理解していないとストーリーに入り込めない作りとなっている。私は綺麗さっぱり忘れていたので困りました。
ボンドが"忘れられたスパイ"として若手から軽んじられるのはル・カレのスマイリーの雰囲気があり面白かったが、そこは全く膨らまない。前作で殉職したジュディ・デンチに代わってMに就任したレイフ・ファインズは、決断力の弱い優柔不断なトップというキャラクターだったが、あまり効果的ではなかったような気がする。同様にクレイグのボンドも弱音を吐いたり、慌てふためいたりと珍しく人間臭さを出すが、違和感だらけ。
異例尽くしの今回の007はダニエル・クレイグ主演5作では芳しい出来ではないが、引退の花道を飾るためのものだったと思えば納得せざるを得ないか。
長いエンドクレジットの一番最後にいつもの"James Bond Will Return"が出てくるが、このクレイグ・ボンドの一連の設定を総てリセットして、いわゆるリブートとしてお目見えするのだろう。とりあえずダニエル・クレイグさんはお疲れ様でした。
以下は単なる気づき
ちょくちょく配給会社が変わっていったが、今回は最初に日本語でユニバーサル映画と出て次いで東宝東和のマークが出て、いつものMGMのライオンマークが出て、最後にユニバーサル映画の地球マーク(この簡素なイラストは初めて見た)と出た。
ビリー・アイリッシュの主題歌はあまり面白みが無いがタイトルデザインは久しぶりに良い出来。一方で、エンドクレジットではなぜか『女王陛下の007(1969)』のテーマ曲(ルイ・アームストロング)がフルでかかった。
概要
オープニング
MGMのマーク、モノクロっぽいユニバーサルのマークが続き、ユニバーサルの地球の丸がそのままガンバレル・シーケンスにつながる。そして丸の中でジェームズ・ボンドが銃を撃つという、モーリス・ビンダーのデザインを踏襲している。アイリス・イン的に丸が広がると雪原の俯瞰移動となる。
以下はユニバーサルのマークが入っていないバージョン。ユナイテッド・アーティスツ・リリーシングがアメリカ、ユニバーサル映画がアメリカ以外の主な国の配給を担当しているので多分、アメリカ版の動画だろう。
ノルウェイ
雪原の中の一軒家。母親(マティルド・ブルバン)と幼い娘マドレーヌ(コリーヌ・デフォー)が暮らしている。娘は窓の外に能面の男がいることに、気づき悲鳴を上げ、戸棚に隠れる。
男(ラミ・マレック)はリューツィファー・サフィンと名乗り、マドレーヌの父親(ミスター・ホワイト)に家族を殺され、その復讐にきた、と告げると男は母親を撃ち殺す。
ミスター・ホワイト(イェスパー・クリステンセン)はもともとブロフェルドの部下だったが、スペクターの方針に逆らったことで、タリウムを盛られてしまう。最後はボンドに娘マドレーヌを託し、自決する。(『スペクター (2015)』)
娘は戸棚の中で銃を見つけ、扉を開けた男に向かって発砲する。能面の一部が割れ、男は倒れる。
娘は男を外に引きずり出すが、死んだと思った男は息を吹き返す。娘は凍りついた湖を逃げるが、氷が割れて水中に落ちる。追い付いた男はなぜか娘を助け出す。
イタリアのマテーラ
海から浮上するマドレーヌ・スワン(レア・セドゥ)。幼少期の湖の記憶がフラッシュバックしたのか、しばらく茫然としていると、浜辺から心配したジェームズ・ボンド(ダニエル・クレイグ)が声をかける。
現役を退いたボンドはマドレーヌと静かに暮らしている。ボンドは村のあちこちで住民が紙を燃やす光景を目にする。過去を忘れ未来に進むために紙に秘密を書いて燃やす、という伝統の祭りだった。
これは映画の創作であり、マテーラではそのような祭りは存在しない。
マドレーヌはボンドが日ごろから背後を気にしていることを心配している。そしてヴェスパー・リンドのことを話題にあげるがボンドは渋る。マドレーヌは"過去が生きている限り、後ろを見続ける"と諭す。そしてもしボンドがヴェスパーのことを忘れ、マドレーヌとの未来を考えるならば、自身の秘密を教えると約束する。
そしてマドレーヌは紙に"能面の男(l'homme masque)"と書いて火を点ける。
翌朝、ボンドはベッドのマドレーヌに"過去を葬ってくる"と伝えて出かける。ボンドはヴェスパーの墓を訪れる。墓石の写真に"君が恋しい"とつぶやき、"Forgive Me(許してくれ)"と書いた紙に火を点ける。
ボンドは墓石に飾ってある花束につけてあるカードを目にする。そこにはスペクターの紋章が冠されていた。その瞬間に墓所が爆発しボンドは意識を失う。
気が付いたボンドはすぐマドレーヌに電話するが通じない。墓場を出ようとするボンドはオートバイや車に乗った賊に銃撃される。
細い通路でマシンガンを乱射されて一発も当たらない不自然さをどうとらえるか…。私はここで引っかかってしまった。"荒唐無稽"と"シリアス"のせめぎあいの結果だろう。
また爆発シーンでキーンという金属音とこもった音声…という演出はここ10年でよく見かけるようになったけど、なんか肌に合わない。
オートバイに乗った男プリモ(ダリ・ベンサーラ)に飛び掛かり、締め上げると、プリモは"ブロフェルドがよろしく、と言っていた"と言い、さらにマドレーヌの父親がスペクターであることも暴露する。
ボンドは奪ったバイクでホテルに戻る。そしてチェックアウトしようとしていたマドレーヌに"過去は追いかけてくる"と声をかける。ボンドはマドレーヌがスペクターとグルであると勘ぐっていた。ボンドはアストンマーティン・DB5にマドレーヌを乗せてホテルを出る。賊が後を追う。
逃走中にマドレーヌの携帯に電話がかかる。
"ブロフェルドだ さすがホワイトの娘だ 君の犠牲は尊い"
ボンドは賊を振り切ったがもはやマドレーヌを信用できず駅で到着していた列車にマドレーヌを一人乗せて別れる。
So, this is it ?
This is it.
これでおしまい?
おしまいだ
マドレーヌの乗った列車に背を向けるボンド。
メインタイトル
ここでオープニングクレジット。昔のシルエット美女がクネクネ踊るデザインからモダンなデザインに変わった。テーマ曲もビリー・アイリッシュが歌うが、これから始まる映画が決して能天気なアクションではないことを宣言しているのだろう。
ロンドン
5年後。
高層ビルを降下してあるフロアに侵入する賊。そこは細菌兵器の開発ラボだった。同僚と無駄口を叩いていたロシア出身の細菌学者ヴァルド・オブルチェフ(デヴィッド・デンシック)に電話がかかってくる。電話はサフィンからで計画を実行する、という連絡だった。サフィンはヴァルドに機密レベル4の冷蔵庫から"兵器"を取り出すように指示をする。
賊はヴァルドに"兵器"を取り出させ、そしてヴァルドを拉致して立ち去る。
MI6。マネーペニー(ナオミ・ハリス)は部長M(レイフ・ファインズ)に事件の報告をするが、Mは既に知っていた。マネーペニーはMに"ヘラクレス計画"について尋ねるがMは回答を拒否し、ガス爆発の事故として処理するように指示し、007の行方を尋ねる。
ジャマイカ
ジャマイカで一人静かに暮らしているボンド。セーリングを終えて住居に戻ると訪問者の気配を認識する。ボンドは身支度をして銃を引き出しにしまいランドローバー・シリーズIIIで街中に出かける。
引き出しの中には"テロリスト、終身刑"の新聞の切り抜きが入っている。エルンスト・スタヴロ・ブロフェルド(クリストフ・ヴァルツ)の裁判記事だった。
街で旧友でもあるCIAエージェントのフィリックス・ライター(ジェフリー・ライト)がアメリカ国務省のローガン・アッシュ(ビリー・マグヌッセン)を伴ってボンドの前に現れる。
三人はバーへ。3日前に拉致されたヴァルドが2日前にキューバに入国したことが確認されたこと、またスペクターの会合もあることを伝え、MI6を引退した身であるボンドにヴァルド救出を依頼する。ボンドは回答を保留する。
二人と別れて帰ろうとするが車が動かない。そこへバーで見かけた女ノーミがスクーターで通りかかり、乗せて行ってもらうことに。ボントはノーミと家へ。そこでノーミに近づいてきた理由を問う。ノーミは"先輩に敬意を表して…"と答えるが、ボンドは"ボンド中佐と呼べ"と返す。ノーミは2年前に00部門に配属されたという。そしてCIAの依頼は忘れるように警告する。
私がいまの007よ 永久欠番だと思った?
ただの数字だ
ノーミは"キューバで会いましょう"と言って去っていく。
MはQ(ベン・ウィショー)から調査状況を聞く。ヴァルドは大半のファイルを削除しており困難な復元作業に追われていた。Mのもとに首相から連絡が入るが、直後にボンドより連絡が入り、首相は後回しにする。
007とMの久しぶりの会話。ボンドはノーミからMI6とヴァルドが絡んでいると聞いた、と言うと、Mは関わらないようにと警告する。
しかしボンドはスペクターが絡んでいることを伝えるとMは電話を切る。Mは英国政府によって重犯罪者刑務所に収容されているブロフェルドの映像を確認する。ブロフェルドは正気を逸しており発言も支離滅裂だった。MはCIAを出し抜くことを決意する。
翌日、ボンドは悩んだ末、フィリックスに連絡して手伝うことを伝える。喜ぶフィリックスはサンティアゴに向かうように指示する。
キューバのサンティアゴ・デ・クーバ
ヨットでサンティアゴ・デ・クーバのヨットハーバーに入るボンド。同じくしてセスナで入国するノーミ。ボンドでバーでCIAのパロマ(アナ・デ・アルマス)と合流する。パロマは"初の大仕事で緊張する"と話しボンドを不安にさせる。
タキシードに着替えたボンドはパロマとパーティ会場に入る。そこはスペクターの関係者で賑わっていた。バーでマティーニを頼むボンド。
Two vodka martinis, shaken, not stirred
二人はフィリックスにグラスを掲げる。マティーニを一気飲みするパロマにさらに不安になるボンド。
裏ではプリモがヴァルドにDNAを駆使した殺人兵器の準備をさせている。それは特定のDNAを持つ人間にだけ効く毒ガス兵器だった。ヴァルドは隙をついてDNAをすり替えて兵器を完成させる。
プリモの義眼を通して刑務所にいるブロフェルドからメッセージが届く。はじめはスペクターに対しての激励だったが、ボンドに対してのメッセージに変わる。スポットライトが当たるボンド。"さらばジェームズ"という声とともに天井から毒ガスが撒かれる。
ブロフェルドからはボンドにしか効かないと説明があるが、周囲のスペクターたちは出血して倒れていく。ヴァルドがスペクターたちにのみ効くDNAを仕掛けたのだった。
現場から立ち去ろうとするヴァルドを確保しようとするボンドとパロマ。しかし途中ノーミに連れさらわれてしまうがヴァルドを取返し、ボンドはパロマに見送られてセスナで飛び立つ。そして洋上で待機していたフィリックスにヴァルドを引き渡す。
ボンドはヴァルドの"究極の兵器=ヘラクレス"について問い詰める。兵器の依頼元はMだった。しかしサフィンが横取りを計画していて、アッシュとヴァルドはその部下だった。フィリックスはアッシュに撃たれ命を落とす。アッシュは船倉にボンドを閉じ込め、船を爆破してセスナで逃亡する。
救命ボートで漂流するボンド。通りかかった貨物船に救出される。
ロンドン
ロンドン。秘密のアジトでアストンマーティン・V8 ヴァンテージ・サルーンをガレージから引っ張り出したボンドはMI6へ向かう。
受付で名前を聞かれフルネームで答えたうえ、ビジターカードをつけて入館するボンドをマネーペニー、ノーミが出迎える。そしてボンドはMと面談する。ボンドはブロフェルドが独房にいながらキューバの会合を仕切っていたことを告げ、面会させるように言うが、Mは拒絶する。二人は喧嘩別れし、ボンドはMI6を去る。
去り際にマネーペニーに夕食に誘われたボンドが向かった先はQの自宅だった。来客を予定していたQは迷惑がるが、ボンドはヴァルドから奪ったヘラクレス計画に関する情報が入ったUSBを調査させる。そこにはキューバで殺害されたスペクターたちのDNAを含む大量のDNA情報が格納されていた。マネーペニーは世界中でDNA情報が盗まれていると話す。
ボンドは唯一人となったスペクターのブロフェルドに逢わせろとマネーペニーに依頼する。マネーペニーは面会はただ一人しか許されていないと言う。名前を問い詰めるボンド。
自身の診療所に医師として復帰していたマドレーヌは患者と面談する。患者は名乗らなかったが、差し出した箱の中身を見たマドレーヌはかつて自分の母親を殺した男であることを知る。箱の中には自分が男を撃った際に半壊した能面が入っていた。男サフィンはボンドの殺害を依頼する。
ブロフェルドと唯一面談できるのがマドレーヌと知ったボンドは街中でMと会う。Mはヘラクレス計画は国民と部下を守るために極秘に開発したものだったと弁解する。この計画が間違いだったら全責任を負うと話すM。
私はこの国に一生を捧げ
この国が正義とするものを命を懸けて守る
ボンドは"奴ら"の狙いがブロフェルドであることをMに伝える。
マネーペニー、Q、そしてノーミがMの部屋に呼ばれるとボンドがいた。Mは00部への復帰を宣言する。
そしてQはキューバで死亡したスペクターたちの体からヘラクレス=ナノボット(皮膚接触で体内に入り込む極小バイオロボット)が検出されたことを報告する。ナノボットは標的とされたもの以外には害を与えないという最強の武器となるはずだった…とMは説明する。しかしヴァルドはさらに手を加え、ターゲットの近親者も攻撃するようにしてしまった。
私は大量破壊兵器を作るつもりはなかった…と口ごもるMは首席補佐官のビル・タナー(ロリー・キニア)に感染者の隔離を指示する。そしてボンドにブロフェルドとの面会を許可する。
ノーミに連れられてきたマドレーヌと5年ぶりに再会するボンド。二人はブロフェルドとの面会場所に向かう。しかしマドレーヌは怖気づき立ち去る。
独りでブロフェルドと面会するボンド。ボンドはブロフェルドに裏で糸を引く連中の正体を教えるように頼みこむ。ブロフェルドは話しをはぐらかしボンドを苛つかせる。ヴェスパーの墓でボンドを罠にかけたのはブロフェルドの仕業であり、マドレーヌは何も知らなかったと聴いたボンドはカッとなりブロフェルドを締め上げる。
すぐ冷静になり離したがブロフェルドはほどなくして死ぬ。ボンドの体内にはキューバのときに侵入したナノボットが活きていたのだった。Qはナノボットは一生ものだ、と説明する。
ノルウェイ
ボンドはノルウェーのマドレーヌの生家へ。そこでマドレーヌ、そして娘のマチルド(リサ=ドラ・ソネット)と会う。マドレーヌはボンドの子ではないと話し、父(ミスター・ホワイト)の仕事場へ案内する。そこでブロフェルドからサフィン一族の殺害を計画したが幼い息子だけ殺し損ね、その息子が成長してミスター・ホワイトを殺しに来たが、そこにはその妻と幼いマドレーヌしかいなかった。
サフィン一族は"毒草の庭"と呼ばれる島で生物兵器の製造をしていたが、口封じのために皆殺しにされたのだった。
ボンドはQにサフィンの幼少期の写真と"毒草の庭"を送信し調査を依頼する。折り返し島についての情報がボンドに連携される。日本とロシアで領土権を争っている島で、第二次大戦中に化学兵器の工場があったところだと言う。ボンドはさらにサフィンの手下だったアッシュの行方を聴くとノーミが追ってノルウェーに向かっていると言われる。
アッシュたちが自分たちを狙って向かっていることを知り、二人を連れて逃げ出すが、途中でアッシュたちに追跡される。ボンドは原生林の中の小屋に二人を隠し、一人濃霧の中で追っ手を片付けていく。そしてアッシュも始末するが、サフィンがヘリコプターで二人を連れ去っていく。
極東の"毒草の庭"
ボンドは合流したノーミとオーランドのノルウェー空軍基地へ。そこで英国空軍の輸送機に乗り込み一路、"毒草の庭"へ向かう。輸送機の中でMはヘラクレスの存在確認、ヴァルドとサフィンの抹殺、マドレーヌ母娘の救出の三つの指示をボンドに出す。そしてボンドとノーミはグライダーで島に侵入する。
ボンドとノーミは基地に侵入しナノボットの培養工場とミサイル施設を発見する。コントロールルームに侵入しヴァルドを発見する。爆薬を仕掛ける二人に無線でサフィンが呼びかける。"大切なもの"との交換を提案され、サフィンのもとに向かうボンド。そこにはマチルドをそばに置いたサフィンがいた。マチルダを助けるために土下座をするボンド。
隙をついてガードを撃ち殺すが間一髪でサフィンに逃げられてしまう。
QはMに国籍不明の高速艇が島に近づいていることを報告する。一方、ロシア、日本、そして英国海軍からも英国空軍籍の輸送機が島の上を旋回していることで抗議が入り始める。
ノーミはヴァルドを殺し、ボンドとマドレーヌ、マチルドと合流する。ボンドは島全体がヘラクレスの工場となっていることをMに伝え、ミサイルで工場を破壊するように訴える。そして一人島に残りミサイルが効かないほど強固な防御扉を開けようとする。
サフィンの部下を次々と倒していきようやく島の制御室に辿り着き、防御扉を開けることに成功する。そしてQ経由でMにミサイルの発射を要請する。Mは島近辺に居るイギリス海軍の45型駆逐艦「ドラゴン」に攻撃命令を下し海軍はミサイルを発射する。
着弾まで9分、島から脱出しようとしたボンドは防御壁が閉まるのを目撃し、慌てて戻る。そこでサフィンに銃撃され傷を負う。サフィンと格闘し抑え込むが、サフィンはボンドがナノマシンに感染したことを告げる。この先、触る人間は誰であり死に至らしめる殺人兵器と化したのだった。
ボンドはサフィンを射殺し制御室に戻り防御扉を開く。そしてミサイルが着弾するまでの間、無線でマドレーヌと話をする。ボンドは戻れないことを話し別れを告げる。マドレーヌの頭上をミサイルが通過していく。マドレーヌはボンドと最後のやりとりをする。
She does have your eyes
I know
そしてミサイルの着弾を自らの目で見届ける。
エピローグ
ロンドン。MI6ではM、Q、ノーミ、マネーペニー、そしてターナーによる追悼の集まりが開かれる。Mは挨拶代わりに一文を抜粋する。
The function of man is to live, not to exits.
I shall not waste my days trying to prolong them.
I shall use my time.
人間は存在するだけでなく、生きるべきだ
だがいたずらに生を延ばさず
その時間を使い切りたい
上記はジャック・ロンドンの名言。
マテーラ。マドレーヌがボンドの形見であるヴァンテージ・サルーンを駆りながら、助手席のマチルドに実父であるボンドのことを語り始める。
エンドクレジット
長いエンドクレジットはまずルイ・アームストロングの「愛はすべてを越えて (We Have All The Time in the World/1969)」がフルで流れる。『女王陛下の007 (In Her Majesty's Secret Service/1969)』で劇中流れた"愛のテーマ"である。
最後の最後でモンティ・ノーマンの「007のテーマ」が流れ、最後のギターの音がフェイドアウトした後に、いつもの一文が出る。
James Bond Will Return
感想 (26/7/10)
新しいプロダクションで新しいジェームズ・ボンドがアマゾンスタジオから配給(もしかしたら配信?)されるだろうが、自分の中では一段落したというのが正直な印象。ジェームズ・ボンドのシリーズは自分の中では確実に終わった。
シリーズではあるが、ボンド役も6人変わったし、フェリックス・レイターはたしか、『消されたライセンス (Licence to Kill/1989)』でサメに片足を食われたりしている。シリーズはあまり前後関係にこだわらず、1作完結型で作られ続けていた。シリーズ間での整合性にこだわり始めたのはダニエル・クレイグのボンドからである。
それでもこの映画の、この終わり方(ジェームズ・ボンドの死)はクレイグ版ボンドだけでなく、イオンプロとしての終焉を宣言しているように感じられ、エピローグのMI6でのボンドを偲んでの献杯シーンはプロダクションの解散式のように見えた。
共同制作を担当するクレイグは1作目の『カジノ・ロワイヤル』完成時にプロデューサーのバーバラ・ブロッコリから契約であと4作、ボンドを演じると聞き、では最終作でボンドを殺そう、と提案したらしい。
そしてフクナガ監督がプロジェクトに参加した際に、ボンドが死ぬことは決まっていたので、どう殺すかをシナリオ化するところから入ったらしい。
イオンプロが製作から手を引いたというのは、私の中では松竹が『男はつらいよ』から手を引いたようなものである。もちろん、渥美清が不在となった時点で『男はつらいよ』は終わった。仮に別の俳優でリブートしようとしたところでそれは別物である。
映画とイオンプロは切っても切れない関係であり、イオンプロの撤退はシリーズの終わりなのだ。
そんな記念碑的な作品ではあるが、いろいろと不満が多い作品でもあった。不満は冒頭に書いた内容の通り。
孤高のスパイであるはずのボンドが恋愛に揺れ、あげく隠し子がいた、という設定はやはり違和感しか感じられない。違和感、と言えば、『ムーンレイカー (Moonraker/1979)』のように宇宙が舞台となると、荒唐無稽を通り越したやり過ぎ感があるが(実際に製作スタッフはやりすぎた、と反省したらしい)、それでもボンドはやはり世界征服か世界滅亡を企む輩とだけ対峙して欲しかった。
それ以上にスパイ映画の限界も感じられた。昔の007は世界の危機を救う存在だったが、次第に公務員色が強くなってきた。今回のとっかかりはMの暴走だった。ボンドは上司の尻ぬぐいのために命を落とすことになった。
劇中、Mはこう弁解した。
私はこの国に一生を捧げ
この国が正義とするものを命を懸けて守る
あくまでイギリスにとっての正義であり、それは時として世界全般の利益・平和に相反することもある。
またCIAのフィリックスはボンドに善と悪、英雄と悪党の違いが曖昧になってきた…とぼやく。
Harder to tell the good from the bad, the villains from the heroes these days.
そんな状況だから、ボンドの意識を公から個にシフトさせたのかもしれないが、そうなるとジェームズ・ボンドである必要もなくなる。
次回作は1950~60年代を舞台にするという話もある。そうするしかないのかもしれない。
そしてその次回作に興味が無いかというと、監督がドゥニ・ヴィルヌーブである以上、期待せざるを得ない。ただその期待はヴィルヌーブ監督の新作としてのものであり、007の新作に対するものではない。


