[映画]『バグジー (バリー・レヴィンソン監督/1991)』

データ
原題: Bugsy
監督: Barry Levinson
製作年度: 1991
製作国: アメリカ
アスペクト比: 1:1.85f
時間: 2h16/2h29(ロングバージョン)
公開日: 1992/2/22
配給: コロンビア トライスター映画
はじめに
日本公開は1992年2月22日。事前に「ショウビズTODAY(テレビ朝日で放映していた洋楽や洋画の情報番組)」で"91年の興行的大失敗作"と報じられていて、そうは言っても、傑作『わが心のボルチモア (Avalon/1990)』に続くバリー・レヴィンソンの新作ということで期待して観に行った。劇場は日比谷スカラ座だったように記憶する。
そして結果としては期待外れだった。当時のメモで"観客に好まれないキャラクターが主役である映画は当然のごとく観客に拒絶される"という「ショウビズ」のコメントの通りだった…これがあのバリー・レヴィンソンの作品だとは…などと、いろいろ酷いことが書いてあった。
なのに自宅にDVDがあり突発的に再見することにした。ロードショー以来、35年近く経っての再見で、果たして公開当時の印象は覆るのか、変わらないか…ちょっとドキドキした。なお劇場公開版より13分長いロングバージョンでの鑑賞となった。
概要
オープニング
1941年、ニューヨーク州スカースデイル。雪が降る中、ベンジャミン・シーゲル(ウォーレン・ベイティ)が娘2人と妻エスタ(ウェンディ・フィリップス)と別れて車で家を出るシーンから始まる。
次のシーンは仕立屋。ネクタイを物色している傍で、別の客がベンジャミンに気づいて"バクジーだ"と妻に耳打ちする。それに気づいたベンジャミンは客を別室に連れ込み、二度と"バクジー"と呼ぶなと脅す。
次のシーンはホテルのロビー。見かけた美女(デブラ・ファレンティーノ)に声をかけ、言葉巧みに最上階のペントハウスに連れ込む。
以上のスケッチがクレジットとともに描かれていくが、これで家族を大事にしながら女癖が悪く、そして他人に馬鹿にされることを極端に嫌うベンジャミンのキャラクターを端的に描いている。
土砂降りの中で停まっている車。ベンジャミンはマイヤー・ランスキー(ベン・キングズレー)とチャーリー・"ラッキー"・ルチアーノ(ビル・グラハム)に見送られて外に出て、賭博屋のジェリー(アンソニー・ラッセル)の店に入っていく。"ベンはチンピラ時代から経済観念が無い…"とぼやくマイヤー。
ベンジャミンはジェリーに仕立屋で選んだ派手なネクタイをプレゼントし、おもむろに撃ち殺して店を立ち去る。ジェリーは売り上げをくすねていた、という理由だった。
L.A.へ
ベンジャミンの次の仕事は組織が西海岸に侵出するため、まずは現地の顔役ジャック・ドラグナ(映画監督のリチャード・C・サラフィアン)に仲間になる振りをして接近することだった。マイヤーは一匹狼のミッキー・コーエン(ハーヴェイ・カイテル)に気を付けることと、友人の俳優ジョージ・ラフト(ジョー・マンティーニャ)には近づくな、という注意を受ける。
妻子に見送られて列車に乗り込むベンジャミンのもとに友人のハリー・グリーンバーグ(エリオット・グールド)が現れる。金の無心だった。ベンジャミンは渋々5万ドルを貸すとハリーは列車を降りていく。
L.A.のユニオン駅に列車が着く。ベンジャミンがまた新たな女(ウェンディ・マリック)とともに下車すると、ファンに囲まれたラフトが迎えに来る。ベンジャミンはラフトで映画スタジオへ。スタジオ内を見学していると助監督(ピーター・ジュリアーノ)にエキストラと間違えられて外に出されそうになりながら、ジョージ・ラフト『大雷雨 (Manpower/1941)』の撮影風景を眺める。
監督がラオール・ウォルシュ(ロバート・ビーチャー)、主演はエドワード・G・ロビンソンとマレーネ・ディートリッヒ(クセニア・プロハスカ)の犯罪もので、ラフトとディートリッヒのからみの部分のリハを見ながら、自分でもラフトの台詞を口ずさむ。
ベンジャミンはスタジオで端役の女優ヴァージニア・ヒル(アネット・ベニング)を目にする。ラフトからは組織の一員のジョーイ・アドニス(ルイス・ヴァン・ベルゲン)の女だから手を出すな、と忠告されるが、ベンジャミンは構わずヴァージニアに声をかける。が、軽くいなされてその場は終る。
ベンジャミンはラフトの運転でビバリーヒルズの豪邸を見て回る。ベンジャミンは一件の豪邸に
眼をつけてラフトに家主を聞く。有名なオペラ歌手のローレンス・ティペット(ジョー・ベイカー)邸であることを聞くとベンジャミンは車を降り、ティペット邸へ。
執事ロナルド(エリック・クリスマス)にとりついで貰ったベンジャミンは強引に邸宅に入り内見した挙句、ティペットにその場で6万ドルで邸宅を(執事ごと)買い取ると申し出る。
ラフトはベンジャミンにそんな金の使い方では持たない…と忠告するが、ベンジャミンは聞く耳を持たない。タクシーでジャックに逢いに行く途中、すれ違った車の運転手に"いい車だな!"と声をかけると、次のカットではベンジャミンはその車を運転していた。
L.A.での生活
ジャックに会った早々、ベンジャミンはジャックに脅しをかける。
お前には道がふたつある、ひとつは俺たち(ニューヨーク)と手を結ぶことだ
もうひとつは?
(拳銃を手渡し)俺を殺せ
ジャックは手を打つことにする。ベンジャミンは自分を"バクジー"と呼んだジャックを弟のルーを殴り倒して去っていく。ジャックは"噂通りにイカれた奴だ。ほっといても自滅する"と部下達を抑える。
ベンジャミンのロスでの生活ぶりのモンタージュが流れる。様々な女性とを浮名を流し、新聞の一面を賑わすようになっていくベンジャミン。
あるパーティで女性と踊っているベンジャミン。そこへ男が声をかける。女性(ベベ・ニューワース)はその男をフラッソ伯爵(ジャンカルロ・スカンディウッツィ)と紹介し、自分はその妻であると伝える。伯爵夫人はフラッソの一番の親友がヴェニト・ムッソリーニであることを説明する。
ユダヤ人であるベンジャミンはヨーロッパでヒットラーとともに同胞を虐殺しているムッソリーニの友人がアメリカに居るのか…と憤る。
そんな最中にジャックから、ミッキーが賭場を襲って5万6千ドルを奪ったとの連絡を受ける。その電話を受けながら、男と踊るヴァージニアを目にする。ベンジャミンは給仕に頼んでヴァージニアに指輪を渡す。
ベンジャミンが邸宅で独り、映写機でなにやら観ている。それは『大雷雨』のラフトの台詞を言う自分自身だった。ベンジャミンは密かにカメラテストを受けていたのだった。そこへヴァージニアがやってくる。この日をきっかけに二人は付き合い始める。
翌日、ベンジャミンはラフトを仲介してミッキーと会う。そしてジャックから奪った5万6千ドルを返せと迫る。が、ミッキーは悪態をついてその場を去っていく。ベンジャミンはその際にミッキーが奪ったのは4万2千ドルだったことを知り、呼び戻し、仲間になることを伝える。
シマを荒らされる奴よりかは荒らす奴と組みたい
そのうえで奪った4万2千ドルをジャックに返却させることを約束させる。
ヴァージニアと夕食(スカンピ)。
ベンジャミンはミッキーの悪態の中にあった、ヴァージニアが過去につきあっていたドラマー(ジーン・クルーパ)や闘牛士のことをネチネチと言い続け、とうとうヴァージニアはキレてガラスの灰皿をベンジャミンに投げつける。
↓1947年出演作『Beat the Band』。
そこへミッキーがやってくる。額から血を流しながら応対したベンジャミンに驚きながらも、約束通りに4万2千ドルを返却する。
ミッキーが帰る際にジャックと入れ違いになる。ジャックに悪態をついて去っていくミッキーに"ユダ公め"と呟く。邸宅に入るとベンジャミンから4万2千ドルの入った袋を渡される。そのうえでジャックを徹底的に侮辱し、差額1万4千ドルを着服したことを白状させる。ベンジャミンはミッキーが今後の相棒であり、ジャックはその手下にすることを宣言する。
ラスヴェガス
ベンジャミンはラスヴェガスの荒れ地にある賭場の管理をするためにミッキーとヴァージニアと3人で向かうことに。ヴァージニアがセスナ機を拒否したため、車で5時間半かけて向かう羽目になる。
着いた賭場は荒れ果てていたが利益を上げていた。住民は他に金の使い道が無かったためである。
帰り道にベンジャミンとヴァージニアが口喧嘩を始める。そしてベンジャミンは車を止め、砂漠の中で立ち尽くす。そして突然、天啓を受けたようにひらめきが生まれる。
しかしミッキーが車を降りたタイミングでヴァージニアは二人を置き去りにして車で去っていく。
ダンスパーティで伯爵夫人と会話するベンジャミン。夫人にイタリアでムッソリーニに逢いたい…と話していると、ヴァージニアがフラメンコのギタリストを伴って現れる。ベンジャミンは男を無視してヴァージニアにニューヨークに戻る…と伝える。ギタリストに対しては銃で脅すが、ヴァージニアが怒り、ギタリストを伴って去っていく。
ユニオン駅で朝食をとるベンジャミン。見送りに来たミッキーはパフェを食べている。パーティでのギタリストとのもめごとが新聞の一面に載っていて、ベンジャミンは自分の写真写りが悪いと文句を言う。ベンジャミンはミッキーにニューヨークに戻ったらエスタに離婚を切り出すつもりだ…と話すが、ミッキーは"せっかくの家庭を壊すとは残念だ…"と応える。
次のカットではベンジャミンが自宅で娘の誕生日用のケーキのデコレーションをしているシーンとなる。そこへマイヤーがジョーイ、ガス・グリーンバウム(本作の脚本担当のジェームス・トバック)、モー・セドウェイ(ジョゼフ・ローマン)を伴ってやってくる。
もともとのベンジャミンのニューヨーク訪問は、チャーリーが逮捕されたこと、そしてその原因がベンジャミンの友人であるハリーによるタレコミだったためだったが、マイヤーたちを迎え入れたベンジャミンはラスヴェガスの計画を熱心に語り始める。
計画はラスヴェガスの賭場をフラミンゴというギャンブルを含むリゾートホテルにするというもので、フーバーダムからの電気を使ってどの客室も22℃にするエアコンもつける…というものだった。マイヤーはキューバの賭博合法化のほうを優先すべき…と反論するが、ベンジャミンは外国は政権次第でいつでも追い出される可能性があるが、こちらは国内だし、合法的なビジネスだ、と説得する。
建設費には100万ドルかかるが、マイヤー含むニューヨークのギャング達に投資してもらうことで調達することにする。
マイヤーはベンジャミンと二人で話をする。その中でベンジャミンは1週間後にイタリアに渡り、ムッソリーニと対面することができた…と伝える。目的を問われると"暗殺することだ"と言われ驚くマイヤー。マイヤーは、そんなことは連合軍に任せておけ、あとそんなことは誰にも話すな、まともな人間が耳にしたら信用を失う、と忠告する。
その後、ジョーイに何かあるか?と聞くとジョーイは有無を言わさずにベンジャミンを殴る。ジョーイがヴァージニアの"元恋人"ということで、これでわだかまりは消えたな…と語りかけるが、ジョーイはあんな淫売に誰が本気になるか、と吐き捨てて去っていく。
そして娘の誕生日パーティは行われず、ベンジャミンは娘の信頼を失う。
ロスに戻ったベンジャミンは自宅でヴァージニアと再会する。しかしそこには男の姿があり、ベンジャミンは窓から投げ飛ばす。しかし男はヴァージニアの弟チック・ヒル(ブライアン・トラヴィス・スミス)だった。半狂乱になったヴァージニアにベンジャミンはホテルの総収入の5.75%を渡すことを伝える。
フラミンゴ・ホテル
ヴァージニアはフラミンゴの経理担当となり、ホテルの建設が始まる。しかしベンジャミンは建築デザイナーのデイビッド・ヒントン(レイ・マッキノン)がヴァージニアに色目を使っているのではないかとやきもきする。一方で、建築現場でムッソリーニの処刑のニュースを知る。
チャーリーはイタリアへの国外追放が決まり、さよならパーティが開催される。マイヤーは当初100万といわれていた予算が既に超過していることをベンジャミンに伝えるが、ベンジャミンはミケランジェロやシェイクスピアが予算超過で文句を言われたことがあるか!?と食って掛かる。
行き場を失ったハリーはロスのベンジャミンを頼って来て、邸宅に泊ることになる。ある晩、ベンジャミンはハリーをドライブに誘う。どうしても一緒に行くというヴァージニアを伴って三人で夜のドライブに出かける。
車は操車場で停まりハリーは二人だけの話がある…と、ヴァージニアを車に残して林の中に消えていく。二人がなかなか帰ってこないためヴァージニアはベンジャミンを呼ぶ。と、遠くで銃声が響き、そしてベンジャミンがひとりで戻ってきて、そのまま車を走らせる。
帰宅後、ベンジャミンはヴァージニアに独りにさせてくれ、と頼み、邸宅に入る。ベンジャミンは親友殺したことで自責の念に堪え切れず拳銃自殺しようとするが、邸宅に入ってきたヴァージニアに停められる。
そしてチャーリーの出国パーティ。チャーリーはベンジャミンに建造費が300万にふくれあがったことに文句を言い、さらにヴァージニアが経理をやっていることの不安を伝える。ベンジャミンはヴァージニアはいずれ妻になる女だ、と伝えて、納得させる。そしてジョーイを呼び出し徹底的に痛めつける。
日本が降伏し終戦となり大騒ぎのニューヨーク。レストランで家族と食事中のベンジャミンはエスタに家族揃っての西海岸で暮らすのはあまり良くない…と口籠りながら話す。エスタはベンジャミンに女が居ることに勘づく。エスタはベンジャミンに自分の口から別れたいと言うように迫るが、ベンジャミンは何も言えず、最後はエスタが別れたいのね?と聞くと、ベンジャミンは小さく頷く。エスタは娘二人を連れてレストランを出ていく。
急ピッチで工事が進むフラミンゴ。既に費用は450万ドルを超えていた。にもかかわらずベンジャミンはカジノからプールが見えないから壁を壊せ!と無茶な指示を出している。そこへ地元の警察がやってきてベンジャミンをハリー殺害の容疑で逮捕する。
警察に連行されたベンジャミンのもとにハートマン副地方検事(クライヴ・ローゼングレン)がやってくる。3万ドルも献金したのにこのざまか!と食って掛かるベンジャミンに、事件当日にハリーをベンジャミン宅まで乗せたタクシー運転手が見つかったと伝えるハートマン。
裁判まで牢獄に入れられるベンジャミン。しかしコックが料理とワインを運び込み、中には専用の電話もつながっている豪華な部屋だった。電話でタクシー運転手の件はどうにかなった、と話すベンジャミン。ヴァージニアもやってきてマイヤーが現地の下見に来た、と報告する。
釈放されラフトが迎えに来る。そこへマイヤーがやって来てベンジャミンを車の中に招き入れる。マイヤーはベンジャミンに既に600万ドルに達したが、ファミリーで約束したのは300万ドルであり、超過分は我々でなんとかしなければならない…と伝える。
マイヤーは100万ドルをベンジャミンに手渡し、残り200万ドルをなんとしても作れ、と指示する。そして"お別れだ"と伝えて車を降りていく。
ベンジャミンは邸宅を含め私物を競売にかけ、さらにホテルの株券を伯爵夫人を始め様々な知り合いに売りつけていく。
ラスヴェガスの現場に戻ったベンジャミンのもとにミッキーが近づく。ミッキーはヴァージニアが自身のスイス銀行の口座に200万ドル入金した、と伝えるが、ベンジャミンは無視する。ミッキーはさらにベンジャミンが無計画に株を売りまくった結果、300%を超えていることを忠告する。
ベンジャミンはヴァージニアと会話するがヴァージニアはホテル建設に対する貢献度として5.75%を貰っている、と反論。そしてそのままベンジャミンのもとを去っていく。
破滅
キューバのホテル・ナショナル・デ・キューバ。
イタリアからこっそり抜け出したチャーリーを含む幹部たちによる会合が開催される。議題は予算が600万ドルまで膨れ上がったホテル・フラミンゴの件と、ヴァージニアのスイス銀行の件。後者についてはベンジャミンがヴァージニアにやらせたのか、ベンジャミンは知らなかったのかが議論になる。
マイヤーはベンジャミンはヴァージニアに惚れた挙句まわりが見えなくなっているし、そもそも金に無頓着であることからヴァージニアの単独行動だろうと説明する。そして1946年12月26日の開業の結果で判断すると一同に伝える。成功すれば投資は回収できるが、失敗したら…私が片付ける、と約束する。
オープンの日。嵐となり客足は無かった。クラーク・ゲイブルも訪れず、あげく停電となる。手持ち無沙汰のスタッフを前にベンジャミンはホテルの一時閉鎖と立て直しを宣言する。そこへマイヤーから電話が入り、ロスにガスとモーが来ているので会いに来いと言われる。何かを覚悟したのか、ベンジャミンはミッキーにヴァージニアを何があっても守ってくれ、懇願する。
嵐の中、ロス行きのセスナに乗り込もうとするベンジャミン。そこへヴァージニアがやってくる。手には200万ドルの小切手。しかしベンジャミンはその場で破り捨て一人、セスナに乗り込む。
待ち合わせ場所のロスのバーでベンジャミンはラフト、ミッキーと話し込む。しかしガスとモーは現れなかった。ベンジャミンは二人と別れてひとり邸宅に戻る。
中に入るといつかスタジオで撮影した自身のカメラテストが映写機で上映されていた。
そして射殺される。
翌日、フラミンゴにやってくるモーとガス。フラミンゴを仕切りに来たという二人にヴァージニアがここはベンジャミンのホテルだと反論する。ガスは"バクジーは死んだ"と伝える。ショックを受けるヴァージニア。砂塵の中で絶叫する。
エンドクレジット
字幕で以下の説明が入る。
ヴァージニアは200万ドルをすべてマイヤーに返金し、オーストリアに移住。その後、薬物で自殺した。
ベンジャミンが600万ドル投資したホテル・フラミンゴは1991年時点で1000億ドルの利益をあげた。
そして現在のラスヴェガスが一瞬映ったのちにエンドクレジットがスクロールする。
感想
ディーン・ジェニングスの「We Only Kill Each Other: The Life and Bad Times of Bugsy Siegel (1967)」をベースにしている。もともとベイティが『レッズ (Reds/1981)』完成後に次作として検討したところから企画が始まったという。そして友人のジェームズ・トパックに脚本化を依頼する。
ベイティがベンジャミン・シーゲルに惹かれた要素は"ギャングらしくない点"だったらしい。ベンジャミンがフラミンゴホテルの建築請負業者のデル・ウェブに遭った際に、"自分は16人殺した"と語った。凍り付くウェブにベンジャミンは笑いながら、"心配するな、俺たち(ギャング)が互いに殺しあっているだけだ"と応えたという。素人に手を出さず合法的な(しかし途方もない)ビジネスを思いつき、そしてハリウッド業界に憧れる…というギャングらしからぬ一面を見せながら、一度キレると相手の意見は一切聞かず、自分を欺く人間には容赦せず、ヴァージニアのこととなる疑心暗鬼となり誰も信用しなくなる、そんな一面も持ち合わせていた。
そんなアンビバレントなキャラクターを主役に、"砂漠に豪華ホテルを建てる"というアメリカン・ドリームをゴールにしたドラマを目指したのだろう…ということだろう。
しかし結果としてはうまくいかなかった。
一番の原因は主役のウォーレン・ベイティにあると思った。表情が硬いだけでなく、常に口をちょっと開けていて、感情が計り知れない。喜怒哀楽のうち、怒るシーンだけはそれとわかるのだが、他のシーンはどれも表情が変わらないように見える。
それゆえに最後まで感情移入できなかった。主人公に感情移入できなくて成り立つ映画は多々あれど、この作品に関しては、どこかで観客の共感を得られるような主人公であるべきだった。
"観客に好まれないキャラクターが主役である映画は当然のごとく観客に拒絶される"を思い出した。
役者が通り一辺倒だと脚本の狙いは達成できない。例えばマイヤーに呼ばれてニューヨークに戻るエピソードで、列車に乗る前にベンジャミンがミッキーに妻と別れる…という話をして、次のカットで娘の誕生日ケーキの準備をしているシーンに繋がるシーンなど、笑いをとるつもりはないだろうが、まったく弾けないカット繋ぎでどう反応してよいものか…と思ってしまった。
ロングバージョン
劇場公開版より13分長いロングバージョンだが以下が追加されたらしい。
親友を殺したベンジャミンが邸宅に引きこもり自殺未遂するシーン。
ラスト、ガスとモーに呼ばれてロスに向った際に、ミッキー、ラフトと会うシーン。
前者は親友を殺した罪悪感に苛まれるシーンだが、それまでの挙動からすると自殺未遂はかなり唐突な感じがした。後者は史実なのだろうが、セスナに乗る際に覚悟を決めたベンジャミンがヴァージニアに別れを告げるドラマチックなシーンがあるので、ロスに着いたあとは邸宅のシーンに繋がるほうが妥当だろう。どちらもカットして正解だと思った。
バリー・レヴィンソン
デビュー作の『ダイナー (Diner/1982)』、『ナチュラル (The Natural/1984)』『グッドモーニング、ベトナム (Good Morning, Vietnam/1987)』『レインマン (Rain Man/1988)』と傑作が続いたレヴィンソン監督作品で、その次にひっそりと公開された『わが心のボルチモア』が忘れられない作品となった。
『バクジー』以降だと『トイズ (Toys/1992)』がちょっと良くて、『スリーパーズ (Sleepers/1996)』がちょっと力作で、『ウワサの真相/ワグ・ザ・ドッグ (Wag the Dog/1997)』は面白いはずのストーリーが全く楽しめず、『スフィア (Sphere/1998)』は原作を超えられず、21世紀になると『バンディッツ (Bandits/2001)』を観たぐらいで、調べると監督作品もポツポツとあるが全く観ていないことが解った。
なので自分の中では80年代の監督という印象が強い。
さいごに
いろいろと文句を書き連ねたが、アレン・ダヴォーのカメラとエンニオ・モリコーネの音楽は素晴らしく、他の役者もよくぞ揃えた…と感心する強面ぞろい。ミッキー役のハーヴェイ・カイテル、マイヤー役のベン・キングスレーは名演。二人そろってアカデミー助演男優賞にノミネートされたが、『シティ・スリッカーズ (City Slickers/1991)』のジャック・パランスが受賞した。

