[映画]『サンセット・サンライズ (岸 善幸監督/2024)』

データ
英題: Sunset Sunrise
監督: 岸善幸
製作年度: 2024
製作国: 日本
アスペクト比: 1:1.85f
上映時間: 2h19
公開日: 2025年1月17日
配給: ワーナー・ブラザース映画
はじめに
映画館で見落としてCSの「日本映画専門チャンネル」で鑑賞。
\来週TV初放送✨/
— 日本映画専門チャンネル (@nihoneiga) July 21, 2025
「#サンセット・サンライズ」
◆8/3(日)よる9時~ほか#岸善幸 監督 #宮藤官九郎 脚本#菅田将暉 主演💨
東京のサラリーマンが
4LDK・家賃6万円の神物件に一目惚れ🏡
奇跡の豪華タッグで贈る
泣き笑い移住エンターテインメント🎣#井上真央 #中村雅俊https://t.co/Ot3ehxm2gj pic.twitter.com/Lr0RpeTii5
概要
2020年。会社がリモートワークを導入したことをきっかけに西尾晋作(菅田将暉)は地方暮らしを考える。どうせ移住するのならば趣味の釣りを満喫できるところが良い…と物件を探し始める。
宮城県北部の宇田濱(架空)。役場に勤める関野百香(井上真央)は人口減少に伴い深刻化する空き家問題を担当することになる。自身も空き家を持っており賃貸物件としてインターネットで募集を始める。
晋作はネットで百香の物件(4LDKで家賃6万、海そば)を見つけてすぐ百香に連絡をとる。
契約が決まり晋作は早々に移住する。晋作を出迎えた大家の百香は晋作の緩さに警戒心をいだく。まだ村にはコロナ患者が出ておらず、特に東京からやってきた人間に対する警戒心が強かった。百香は晋作にソーシャルディスタンスを守り、2週間は自宅待機することを厳命する。食料他の日用品は日々、百香が運ぶことになった。
しかし釣り好きの晋作はこっそりと釣りに出て村人も目撃するようになる。空き家に電気が点いているのを見たご近所の重蔵(ビートきよし)に誰か住んでいるのか問われた百香は咄嗟に自分が住むことにした、と言ってしまう。
その話は百香の父親で漁師の章男(中村雅俊)の耳にも入り、ある日、章男は漁で獲れた魚を持っていく。そして晋作と対面して百香の結婚相手と勘違いして去っていく。話は狭い村のなかであっという間に広がる。
勘違いのまま章男は晋作を連れて漁に連れていき、釣った魚を捌いてくれる居酒屋「海幸」を紹介する。しかし百香に惚れている店主の健介(竹原ピストル)は晋作を敵視する。
自分が敵視されていることがわからないまま、持ち前のポジティブさで村に溶け込んでいく晋作。そんな中、釣った魚をお裾分けしたおばあさんから百香の話を聞く。
百香は22歳のときに章男の息子と結婚し章男夫婦と同居していたが、3.11で夫と二人の子供、義母を亡くした。いま晋作が住んでいる家は百香たち夫婦のために建てた家であり、引っ越す準備をしていたところだった。
晋作はテレワークの期間が終了して東京に戻る前に、百香のために役立ちたいと考える。会社の社長(小日向文世)に町中の空き家を賃貸物件として貸し出すプロジェクトを提案して承認させる。
プロジェクトメンバーである同僚の仁美(池脇千鶴)は百香と晋作のやりとりを見て、晋作に百香に好かれていると伝える。晋作は百香に打ち明けるが、百香は戸惑う。
その様子を見た章男は10年が過ぎたことを伝え、好きな人と幸せになってほしいと伝え、百香はようやく晋作を受け入れる気になる。
そして晋作はプロジェクトの拠点を宇田濱に置き、東京には戻らないことを決める。
感想
震災、コロナ禍、空き家、移住といった時流にのったキーワードはあれど、愛するひとを失った者が次のステップに踏み出す…という、非常にオーソドックスな恋愛ものだった。
晋作が百香の前に現れ、大家と店子の関係から次第に親密になる。しかし晋作は"お試し移住者"であり、いずれ東京に戻っていく…という想い以上に、やはり百香の中には10年前に突然いなくなってしまった夫の存在がある。
この百香の心の移ろいの描写が割とあっけなく描かれているように感じた。晋作のキャラクターの明るさがそう感じさせるのかもしれない。また途中で東京に帰郷したと思ったらまた戻ってくるという展開においても、晋作の感情の推移が把握しづらかった。つまり告白自体が唐突に感じたのだ。
ラスト、百香が中学生の頃に見たミュージカルの「屋根の上のバイオリン弾き」の劇中歌「サンライズ・サンセット (Sunrise, Sunset)」のことを晋作に語る。
日が昇り、そして日が沈む、という日々の営みに人生を重ね合わせ、嫁いでいく娘を愛おしがりながら祝福するという劇中の名シーンだが、百香は歌うテヴィエに父親の章男を重ね合わせる。
それに対して晋作は自分がいるからもう日が沈むことはない、サンセット・サンライズだ、と答える。
タイトルの意味はそういう意味だがちょっとこじつけな気もして、すっきりと受け入れられなかった。映画の題名など途中で気にしなくなっていたので、ラストで説明されると唐突に感じられた。
↓ 1972年映画版。
移住に関しては移住者と現地民の軋轢はよく報道される話で、地域の閉鎖性や移住者の意識の薄さなど原因はいろいろとあるけれど、この作品では深堀していない。あくまで晋作のような軽さで走り切る、そんな作品だった。
原作は楡周平がコロナ禍の2022年に発表した小説。
未読だが芋煮会の熊の描写は原作には無いのではないか? 脚色を担当した宮藤官九郎のお遊び的な要素なのか、何かのメタファーかわからないけれど、違和感が残る描写だった。
と、文句ばかりだが、実際は最後まで楽しんだ。菅田将暉の軽さが脚本にフィットし、相乗効果を出したのだと思う。監督の岸善幸とは『あゝ、荒野 (2017)』でも組んでいるが、真逆のキャラクターだった。
一方で居酒屋の常連客の三宅健と、晋作の会社社長の小日向文世はちょっと引っ掛かった。三宅健は店主以上に晋作を嫌うキャラクターだが、全体的にフワフワした雰囲気の映画の中にリアルを持ちこんでいるようで違和感を感じた。一方で小日向文世はキャラクターが曖昧で、空き家の賃貸事業に対するアプローチが晋作の熱意を受けて積極的に進めているのか、単に商売としてとらえているのか、どっちつかずな部分があった。これはシナリオの問題かも。一方で晋作の同僚役の池脇千鶴はシニカルなキャラが素晴らしかった。エンドクレジットまで気づかなかったけど…。
おわりに
"ハート・ウォーミング"という使い古しの表現がフィットする。そんな心地良い映画だった。映画館で観たかったな。
あと、コロナ禍もまた遠い昔になり、懐かしさすら感じるようになった。そんなことを時々思う。

