見出し画像

【089】 犀の角のようにただ独り歩め

【このブログの目次はこちら】

(*写真は食肉目ネコ科ヒョウ属ライオン種インドライオン亜種)

「音に驚かぬ獅子のように、網に捕われぬ風のように、水に汚されぬはすのように、犀の角のようにただ独り歩め。」

これは、南伝上座部仏教のパーリ語で書かれた経典の一つ『スッタニパータ』にあるシャカの言葉と一節とされる。超ざっくり言うと、古代インド北部の「書き言葉」がサンスクリット語。その話し言葉の「パーリ語」が、南伝上座部仏教の公式言語であったが、現代では話者はおらず消滅した。パーリ語の表記は、元来ブラーフミー文字であったがこちらも消滅、その派生のシンハラ文字はスリランカの公用語として現役で残っている。

仏教のアイコンは、インドライオン、はす、そしてインドサイ。群れない、一本角のインドサイは孤独の象徴。そしてインドライオンとインドサイは、日本で狛犬になった。

しかし東大寺南大門に現存する世界最古の狛犬は、両方が「阿」で角はない。しかも向かって右は雄、左は雌だ。ちゃんと股間の造形が異なっている。この南大門および狛犬は、平重衡の南都焼き討ち(1181年)後に再建されたもので、オリジナルのデザインを踏襲しているのかは不明である。

平安時代後期、1146年頃の作とされ、建築用語図鑑の元祖と言える『類聚雑要抄るいじゅうぞうようしょう』では、以下の記載があるそうだ。

「左獅子 於色黄口開 右胡麻こま犬 於白不開口 在角」

この左右が本殿から見たものなのか、参拝者が入る側から見たものなのかは分からない。しかし平安時代には「口開け獅子」と「口閉じ角あり狛犬」の別物として定義していたようだ。

1221年頃の成立と伝わる有職故実ゆうそくこじつの解説書『禁秘抄きんぴしょう』でも、「師子狛犬在帳前前北 左師子」とあり、やはり獅子と狛犬を区別していた。

その後いつの間にか、一角狛犬と獅子という呼び名は廃れ、右:雄:阿、左:雌:吽の両方狛犬に収斂していった。インドサイは定着しなかったのだ。

続いて、仏教のアイコン動物を見てみよう。

次のブログはこちら。

いいなと思ったら応援しよう!