病理医のための快適入力環境構築【第4回】外勤先でも分割キーボード編
働く場所が変わっても、快適さは持ち運べる
これまでの記事では、狭い机でも快適に作業できるように── 分割キーボードの導入から、スイッチとキャップの選定、配列のカスタマイズ、IMEとの連携まで、 “病理医のための入力環境づくり”についてお話してきました。
そして今回はいよいよ、「働く場所が変わっても快適さは持ち運べる」というテーマで、 常勤先・外勤先の2台運用体制と、マウス・収納・周囲の反応まで含めた実践編をお届けします。
私自身、ここまで分割キーボードに慣れすぎたせいで、 もう普通のキーボードでは「うまく診断できない身体」になってしまいました。笑
ならば──自分の道具ごと、診断先へ持っていけばいい。 そう考えて始めた、“持ち運びできる診断環境”の工夫について、今回はまとめていきます。
常勤先と外勤先の2台運用
さて、分割キーボードに慣れすぎた私は、今では通常のキーボードでは違和感を覚えるようになってしまいました。
そのため、外勤先(診断業務)でも快適に作業できるように、もう1台、同じタイプの分割キーボードを用意しました。
外勤先:机が広め → 通常のキースイッチ
常勤先:机が非常に狭い → ロープロファイル
外勤先は比較的スペースに余裕がありますが、
顕微鏡を正面に据えて、できるだけ自然な姿勢で診断入力を行うには、
やはり左右を自在に配置できる分割キーボードの利便性が欠かせません。
実のところ、外勤先に自前のキーボードとマウスを持参する病理医は、正直見たことがありません。
でも私は、ある言葉をよく思い出します。
「アメリカ西部のカウボーイたちは、馬が死ぬと馬はそこに残していくが、どんなに砂漠を歩こうとも、鞍は自分で担いで往く。 馬は消耗品であり、鞍は自分の体に馴染んだインタフェースだからだ。 今やパソコンは消耗品であり、キーボードは大切な、生涯使えるインタフェースであることを忘れてはいけない」
だから私は、自分専用の分割キーボードを持って診断に行きます。
どこで診断するにしても、“快適な手元”は変えたくないのです。

外勤先構成:静音スイッチの左右非対称カスタム
せっかくなら少し違う構成を試してみようと思い、常勤先とは異なるカスタムにしました。
今回は、左右で異なる静音スイッチを採用した冒険的構成です。
使用スイッチ
右手:Durock Silent Linear Dolphin 62g
静音リニアスイッチ(5ピン、金メッキスプリング、潤滑済み)。
しっとりした打鍵感と確かな静音性が魅力です。
左手:DRAOZA Kailh Box Deep-Sea Silent PRO
Kailh Island仕様のサイレントリニア。打鍵音を抑えたい職場環境にマッチ。
静音で評判の良さそうなものを左右別々に試すという、自作初心者らしい選択にしました。
キーキャップ
FILCO PBTキーキャップセット(JIS 108キー・ブラック) 刻印あり+無刻印を組み合わせて使っています。落ち着いたデザインで職場でも目立ちません。 ※ キー配置の参考には、SPHHビルドガイドを活用しました。
外勤先では、普段とは違うキーボードの打鍵感を楽しんでいます。
おむつポーチで持ち運ぶ、私だけの“診断ツール”
外勤先へのキーボードとマウスの持ち運びには、使わなくなったハンナフラのおむつポーチを流用しています。SDGs!
軽量で内部にポケットがあり、分割キーボードとマウスなどの収納にちょうどいいんです。
▲閉じると完全に“おむつポーチ”感全開。正直、職場で出すとけっこう浮きます。笑
でも外勤先では自分のブースで黙々と作業しているので、人目はあまり気になりません。


■ マウスにもこだわりあり:Logicool G304
私はマウスにもかなりこだわっています。
使っているのは、Logicoolのゲーミングマウス「G304」。
「ゲーミング」と聞くと派手な印象があるかもしれませんが、G304は見た目が比較的地味で、病院でもまったく浮きません。
そして何より、オンボードメモリ対応であることが最大の決め手です。
病院のPCでは、セキュリティの都合上ソフトウェアのインストールができない場合が多いのですが、
G304は設定をマウス本体に保存できるため、接続するだけでショートカット機能が使えるのが魅力です。
私は、サイドボタンに「コピー(Ctrl+C)」や「ペースト(Ctrl+V)」などを割り当てており、報告書の編集やコピペ作業を爆速でこなせるようになりました。
ただし、唯一の欠点はクリック音がやや大きめなこと。
常勤先ではココナラで静音化カスタムをお願いし、バイト先には通常モデルを持参しています。
ちなみにこの「ソフトが入れられない職場でも使えるマウス活用術」については、また別の記事で詳しくまとめる予定です。
病院に限らず、役所や教育機関など「設定変更ができないPC」で働く方にも参考になるかと思います。お楽しみに。
周囲の反応は、ちょっと拍子抜け?
さて、せっかく時間をかけて最適な環境を整えたのだから、検査室で少しくらい話題になるかな…と密かに思っていたのですが──
実際には、周囲の反応は意外なほど薄くて、ちょっと拍子抜けしてしまいました。
ちなみに、私のパソコンを時々使う上司には、
「なんだこの変なキーボードは…使いにくいな」
と遠慮のないひと言をいただきました。
まあ確かに、慣れていないと使いにくいですよね。
そのため、上司が使うときのために、以前使っていた薄型のキーボードも脇に常備しています(トップの写真でモニターの下に写っている、黒い板がそれです)。
一方で、久しぶりに検査室に来た技師さんからは、
「えっ、なにこれ!?すごい…どうやって使うの?」
と素直な驚きと興味を示してもらえて、ちょっと嬉しくなったのも事実です。
いつか作りたい“趣味全開”の一台
今回はあくまで「病理診断の現場で実用的に使えること」を第一に考えた構成です。
でも、次に完全な趣味用キーボードを作るなら──
もっとクセの強い配列
可愛らしいキーキャップ
個性的なスイッチ
「見た目も使い心地も、自分だけの一台」を作ってみたい。
そんなふうに、自作の楽しさにますます惹かれています。
最後に:働く環境は、自分でつくれる
病理医の働く環境は、IT的にも物理的にも、まだまだ最適とは言えません。
でも、自分の“手元”だけでも変えられれば、それだけで仕事の快適さは大きく変わります。
分割キーボード
オリジナルのキー配列
静音マウスとショートカット設定
全部合わせて、「私だけの診断環境」が完成します。
ここで紹介した構成や工夫は、あくまで私の一例ですが、気になるところがあれば、ぜひ取り入れてみてください。
この文章が、同じように働く病理医や細胞検査士、あるいは狭い机で仕事をしているすべての人の、ちょっとした参考になれば幸いです。
……ただ、できればもっと広い机で仕事したい。笑
おわり。
読んでくださって、ありがとうございました
これで、「病理医のための快適入力環境構築」シリーズはひとまず完結です。
狭い机にフィットする分割キーボード
自分好みに調整したスイッチとキー配列
静音化カスタム済みのマウス
そして、おむつポーチに収まる診断ツールたち
それらはすべて、「作業環境を自分で整える」というささやかな試みの積み重ねでした。
この連載が、同じように窮屈な作業環境に悩んでいる方の参考になれば、とても嬉しいです。
私自身もまだまだ試行錯誤中ですし、次は もっと趣味全開の“可愛い一台” を組む予定です。笑
これからも、ゆるく、でも本気で快適さを追い求めていこうと思います。
ここまでお付き合いいただき、本当にありがとうございました!
── 蛙田 月光
