私は旨味ジャンキーサラブレッド
今は亡き祖母の作る白菜の浅漬けが好きだった。
他の漬物は、独特の匂いが苦手で、
「おばあちゃんのお漬け物しか食べれん」
と言っていたくらいだ。
私にとっては大好きな祖母の味だ。
そんなおばあちゃんが入院した時のことだ。
「この病院のご飯はあまり美味しくないんよ」
そう言いながら食事をしていた祖母のベッド脇には、ふりかけと一緒にハイミーの小瓶が置いてあった。
おばあちゃんは何にでもハイミーをかける。
味噌汁に。
おかずに。
そして漬け物にも。
パラパラと。
試しに一口もらうと、
「あ、おばあちゃんの漬け物の味だ」
そう。
私が求めていたのは、白菜の漬け方でも塩加減でもなかった。
旨味成分だったのである。
祖母は漬け物にまで旨味を求める、筋金入りの旨味ジャンキーだった。
ちなみに私も人のことは言えない。
キャベツに鶏ガラスープの素とごま油を入れてモミモミしたやつが大好きだ。
鶏ガラスープを使ったレシピにはめっぽう弱い。
祖母は、漬け物にハイミー。
母は、卵かけご飯に、味の素とマヨネーズ。
私は鶏ガラスープの素。
こうして世代を超え育成され、私は旨味ジャンキーのサラブレッドとして誕生したのである。
しかし、これは私たち一家だけの話ではない。
旨味は単体よりも、「植物系のグルタミン酸」と「動物・キノコ系のイノシン酸やグアニル酸」を組み合わせることで、何倍にも強く感じられるらしい。
鍋の締めの雑炊なんて、旨味回収装置でしかない。
人類は長い歴史の中で、旨味を追い求め、凝縮し続けてきた。
私の脳が旨味を求めて騒ぐのも仕方ない。
全人類、旨味の前には降伏するしかないのである。
