直角ばぁちゃんは我が道を行く
私の近所に、いつも畑仕事に精を出してるお婆さんがいる。
それだけにとどまらず、公民館の前を通りかかれば、そこの花壇の手入れまでしてくれていた。
そんな彼女の姿はいつも決まっている。
農作業の最中、ぐっと深く腰を曲げた前かがみの姿勢。
いや、前かがみという生易しいものではない。
見事なまでに、腰が「直角」に曲がっているのだ。
私は、長年にわたって大地と向き合ってきた彼女の努力に心からの敬意を込めて、密かに「直角ばぁちゃん」と呼んでいた。
先日、車を運転していると、前方が微妙に渋滞していた。
「おや、どうしたんだろう」
と、思いつつスピードを落とすと、その先をシルバーカーのおばあちゃんがフラフラとしている。
十分に距離を空け、ゆっくりと追い越そうとしたその瞬間、私は思わず目を見張った。
シルバーカーを押してるのは、あの直角ばぁちゃんだったのだ。
「えっ、歩いてても直角なんだ!」
畑仕事の時だけかと思いきや、彼女の背筋は、シルバーカーを押していても、直角を維持していた。
カートを押す手と彼女の頭の位置がほぼ同じ。
顔は完全に下を向いている。
「待って、前は見えているのだろうか……?」
視線の先には地面しか映っていないのではないかという疑問を抱きつつ、私はハラハラしながら、そっと彼女の横を通り過ぎた。
今日も直角ばぁちゃんは、独自のスタイルで我が道を突き進んでいる。
ドライバーとしては、その我が道はぜひ歩道であって欲しいと願わずにはいられない。

