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式神のまなびや1-7

「はぁはぁ」
「どうしたの? 大ちゃん?」

「なんでも…なんでもない」
「そんな訳ないでしょ?何があったの?」

こはるをこれ以上、怖がらせるわけにはいかない。
それに、声が聞こえただけだった。
何かに襲われたわけじゃない。
とにかく無事でよかった。
多賀はそう思った。
「なんでもないよ」
多賀は息を整えながら言った。
箱の留め具を確認する。
ちゃんと閉まっている。
何も変わっていない。
「本当に?」
こはるはじっと顔を覗き込む。
「本当に」
「顔色悪いけど」
「走ったからだよ」
「ふーん」
納得していない顔だった。
だが、それ以上は聞かなかった。
「帰ろっか」
「ああ」
二人は並んで歩き出す。
夕暮れが近づいていた。
障子から差し込む光が赤く染まっている。
「大ちゃん」
「なんだよ」
「待っててくれてありがと」
多賀は少し顔を逸らした。
「別に」
「優しいね」
「違う」
「優しいよ」
「違うって」
こはるは笑う。
その笑顔を見て。
多賀は胸の奥に残っていた冷たい感覚が少しだけ薄れるのを感じた。
だが。
二人の後ろ。
誰もいない廊下の角。
そこから。
じっと。
何かが見ていた。
『優しいね』
聞き覚えのある声で。
『だから開けると思ったのに』
影は残念そうに呟く。
『もう少しだったのにな』
暗闇の中で。
細い指が箱を開く真似をした。
そして。
『次は誰にしようかな』
その視線が。
縁側で笑っている子供たちへ向けられる。
白峰。
まこと。
カナタ。
そして。
七瀬こはる。
影は楽しそうに笑った。

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