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小説 NE次XT 第1話「死んだら驚いた」

【あらすじ】
人は死ぬと次の世界に生まれ出る。
主人公の鈴木史郎も同様に新しい世界に生まれ出た。前世の記憶をそのままに。
その世界は、すべての人間が前世の記憶を持ったまま生きている。
子供の育成は、管理化されていて専用の施設に入る。そこでは、育成センターにて前世の自分について膨大なデータのインプットが義務化される。それは、15歳まで続けられる。これは、前世での犯罪歴や素行の悪さ、などニューワールドで犯罪を起こさせない為に行われている。だが、育成センターでも、前世の秘密を完全に隠した犯罪者もいるのも事実だ。それを調査して犯罪を防止する機関が世界警察機構GPO 。
この前世の記憶が大きく影響を与える新世界で起こる事件に立ち向かう史郎の物語。

老人の名前は「鈴木史郎」。
現在87歳。
そして、今、彼は最期の時を迎えようとしている。
もう7年も前に発覚した癌が全身に転移していて、今日まで生きているのが不思議なくらいである。さらに、抗がん剤も良く効いて副作用も無かった。
奇跡的に穏やかな日々をおくってくる事が出来たのは、彼の持ち前の強運さと、定年退職後から始めた還暦野球における極限までの体力増強、とまではいかないが健康な体力維持のおかげではあった。

野球のポジションは、キャッチャーだった。野球における試合での運動量に関して言えば、草野球のそれはピッチャーの運動量に近いものがある。中腰で捕球しては、返球の繰り返し。ランナーがいる場合においては、牽制球や盗塁阻止の為の全力での送球をしなければならない。頭の中は、打者に対する配球と守備位置のチェックなどを考えるので体と共にフル回転させなければならない。自分だけが、自軍の選手全員を眺めながら守備をする特殊な立場に長年身を置いていると体力と共に忍耐力と洞察力も身についた。

そんな還暦野球で維持してきた体力と健康。
だがしかし、どんなに健康を意識していても癌は襲い掛かってくるのだ。
病室のベッドの脇には、女房と娘がいる。息子は海外出張中で、危篤の報を受けた時には、アメリカのメリーランド州ボルチモアに居たため、とても臨終には間に合わないようだ。
ただ、昨年の夏に嫁と孫を連れて帰省してきた際に会って元気そうな笑顔も見ているので史郎に心残りは無かった。

ベッドの反対側には、医師と看護師が立っている。

史郎は、この世の最後の眺めをぼーっとしながら見ていた。
自分の命の期限の近さは史郎自身が一番良く分かっていたので、不思議と恐怖などは感じられなかった。
泣きながら覗き込む家族の顔と、何の感情もないような医師の顔が見える。

そして、その時が訪れた。2025年9月25日午前3時30分
ふーっと息を吐き出した史郎の瞼がゆっくりと閉じていく。
瞼を閉じても部屋の明かるさのせいで瞼の内側が、うすら赤く見える。
しかし、それもやがてゆっくりと暗くなっていき。
やがて、真っ暗になり無音の世界になった。
その状態が、しばらく続いた。
それが1分なのか1時間なのかは、自分では良く分からなかった。
それが意識なのかも分からないでいた。

やがて突然、その無音で暗闇の世界の時間は、終わりを迎えた。
なんの感覚も無かった体が、急に全方位から圧力がかかった状態になり、少し息苦しい。
すると真っ暗闇だった世界にうすら赤い明るさが戻ってきた。

と、その瞬間。
あり得ない程の圧力が頭を中心にかかり、やがてそれは解放された。
瞼は開かないが、明らかに明るい世界が感じられた。
匂いも感じられる。鼻が詰まってよく分からないが。
でもこれは、間違いなく「血の匂い」だ。

そして、何より体中が痛い。
癌の症状で体中の関節が痛かったが、そういう痛みではなく、ヒリヒリとした痛みだ。体中がヒリヒリ痛い。剥がれたかさぶたの弱く薄い皮膚を触られた感覚に近かった。
不覚にも、その痛みに史郎は泣き出してしまった。
すると、信じられない言葉が聞こえてきた。

「聞こえます? 大丈夫ですか? 今、柔らかいタオルで包みますからね。もう少し我慢して下さいね。」

{えっ、誰だ? あれっ、目が見えない。なんかうまく動けないし。てゆうか、なんだ?あれっ、俺裸じゃねぇか! これ絶対に裸だ。なんかベタベタしてるし。 }

「すみません、これってどういう状態なんですか? 俺、死んだんじゃないの?」 

って、しゃべっているつもりなのだが、言葉にならない。
だが、それをすべて理解しているかのように女性が話す。

「ごめんなさいね。まだすぐには話は出来ないんで、少し我慢して下さいね。私、担当の看護保育士の横山と申します。よろしくお願い致します。」

「えっ、看護師さんなの? 体中が痛いんだけど、あとドクターは? 家族はどこだ?」

それには答えずに、看護師は抱きかかえた。
{えっ、デケェ。何この巨人みたいな腕の感触は。目は見えないけれど、絶対に俺の体を軽々と抱きかかえたぞ。まるで赤ん坊を抱っこするみたいに. . . .。}
そんな事を思っていると、体の痛みが少しずつ薄らいできた。

「喉乾きましたでしょ。いま、ミルクあげますからね。」

{おいおい、これじゃ本当に赤ん坊みたいじゃ. . . . . . }
「えっ!! 俺本当に赤ん坊なのか? 生まれたって事? 来世って事?」

泣くのではなく、ハッキリとしゃべろうとした。
「あらっ。すごいですね。もう、おしゃべり出来るようになったんですね。普通は、一度たっぷり眠って、起きてからなんですけどね。早いわぁ。」

「ウソでしょ? マジで生まれ変わったの? さっき死んで、すぐ生まれ変わったって事?」

「その通りです。あなたの言う来世って事ですよ。」

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