Intel復活の狼煙——Core Ultra X9 388Hが示す18Aの実力
「x86でバッテリー寿命の王座を取り戻す」——Intelがそう宣言したとき、どれだけの人が本気にしただろうか。だが本日解禁されたベンチマークは、その言葉が空虚なマーケティングではなかったことを証明している。
18A——アメリカ製の最先端
Core Ultra X9 388Hは、Intelが「アメリカで設計・製造された史上最先端のプロセス」と呼ぶIntel 18Aで製造されている。1.8nmクラスのこのノードは、RibbonFETとPowerViaという二つの技術革新を同時に投入した野心的な挑戦だ。
RibbonFETは、約10年にわたり業界標準だったFinFETに代わるGAA(Gate-All-Around)トランジスタ。電流を流すチャネルをゲートが完全に包み込むことで、リーク電流を大幅に削減する。PowerViaは電力供給を配線層の裏側に移動させることで、信号配線との干渉を解消し、効率を高める。競合のTSMCやSamsungがまだ実用化していない技術であり、Intelが「世界最先端」を自称する根拠となっている。
CEOのリップブー・タンは「18Aの出荷を2025年末までに行うという約束を、予定より早く達成した」と胸を張る。アリゾナ州チャンドラーのFab 52で量産が進み、本日1月27日、搭載ノートPCのグローバル発売が始まった。
ベンチマークが語る性能
HotHardwareがLenovo IdeaPad Pro 5で測定したGeekbench 6のスコアは、マルチコア1万8058、シングルコア3012。シングルコアではAMD Ryzen AI Max 395を上回り、マルチコアではQualcomm Snapdragon X 1E-78-100搭載機を超えた。





Cinebenchではマルチコア5091、シングルコア537を記録。WccftechがASUS Zenbook Duoで測定した結果もほぼ同等で、個体差の少なさがうかがえる。Intelが主張する「Lunar Lake比60%のマルチスレッド性能向上」は、少なくともこれらのテストでは裏付けられた。



特筆すべきは、電源接続時とバッテリー駆動時の性能差が小さいことだ。多くのノートPCは電源を外すと性能が大きく落ちるが、388Hを搭載したIdeaPad Pro 5では、Cinebenchのマルチコアスコアがほとんど変わらなかった。出先で作業する人間にとって、これは地味だが決定的な進歩だ。
統合GPUの新境地——Arc B390
388Hの目玉は、12基のXe3コアを搭載したArc B390内蔵GPU。Intelは「Lunar Lake比77%のゲーミング性能向上」「RTX 4050相当」と豪語していたが、これも実測で確認された。
PC GamerのテストでCyberpunk 2077をフルHD・Medium設定で動作させたところ、平均64fps。RTX 4050搭載機には及ばないものの、60fpsを超える水準を維持し、最低fpsも52に抑えられた。XeSSアップスケーリングを有効にすれば平均92fpsまで向上する。




重量級タイトル「黒神話:悟空」でも、Medium設定で平均39fps、アップスケーリング併用で57fps。快適とは言い難いが、統合GPUでこの水準に達したこと自体が異例だ。AMD Radeon 890M比では82%高速という主張も、複数のテストで裏付けられている。
Arc B390は、統合GPUとして初めてMulti-Frame Generation(MFG)4xモードをサポートする。フレーム補間技術により、対応タイトルでは見かけ上のフレームレートを大幅に引き上げられる。エントリークラスの外付けGPUが不要になる——Intelはそう示唆しているが、あながち誇張とも言い切れない。
22時間超のバッテリー駆動
動画再生テストでは1342分、つまり22時間22分を記録した。Arm系チップのSnapdragonには及ばないが、x86としては圧倒的だ。Intelは「最大27時間のNetflixストリーミング」を謳うが、PCWorldの実測でも25〜28時間を記録しており、誇大広告ではない。
3年前のCore 7 150Uと比較して、4K YouTube再生時の消費電力は約2.8分の1。日常的なワークロードで最大65%の消費電力削減という主張も、過大とは言えない範囲に収まっている。
価格と入手性
本日より搭載ノートPCが発売開始となったが、選択肢はまだ限られている。Dell XPS 14はCore Ultra X7 358H搭載で2049ドル(約31万円)から、HP OmniBook UltraはCore Ultra 7 356H搭載で1549ドル(約24万円)から。いずれも出荷は2月中旬の見込みだ。
Lenovo IdeaPad Pro 5iやYoga Slim 7i Ultraなど、Core Ultra X9 388Hを搭載する上位モデルは第2四半期以降の発売となる。1699ドル(約26万円)からと、価格はやや高めだ。
注意点として、12基のXe3コアを搭載するのは上位のX9/X7シリーズのみ。主力となる下位モデルは4コアにとどまり、ゲーミング性能は大きく異なる。「Panther Lake=ゲームが動く」と短絡するのは早計だ。
誰のためのCPUか
Core Ultra X9 388Hは、Lunar Lakeの省電力性とArrow Lakeの性能を一つのパッケージに詰め込んだ——Intelの説明をそのまま受け取れば、そういうことになる。実際、ベンチマーク結果はその方向性を支持している。
とはいえ、いくつかの留保は必要だ。18Aプロセスはまだ量産初期段階にあり、歩留まりが安定するまでコストは高止まりする可能性がある。搭載ノートPCの価格は現時点で2000ドル前後が中心であり、ミドルレンジのゲーミングノートとの比較で微妙な立ち位置になりかねない。
それでも、18Aという自社プロセスで競争力のある製品を出荷できたことは、Intelにとって大きな一歩だろう。2025年8月には米国政府が89億ドル(約1兆3600億円)で同社株式の10%を取得、SoftBankから20億ドル(約3100億円)、NVIDIAから50億ドル(約7600億円)の投資も受けた。国家的な支援を受けながらの復活劇は、単なる企業の成功譚を超えた意味を持つ。
ファウンドリ事業の顧客獲得にも、この実績は影響する。TSMCへの依存を減らしたい企業にとって、18Aは選択肢の一つになり得る。タンCEOは「14Aにも大規模に投資する」と明言しており、次世代プロセスへの布石も打たれている。
半導体覇権をめぐる競争に終わりはない。だが今日、Intelが土俵に戻ってきたことだけは確かだ。
参照元
https://hothardware.com/reviews/intel-core-ultra-x9-388h-panther-lake-review (HotHardware:詳細ベンチマーク)
https://www.pcworld.com/article/3034214/intel-core-ultra-x9-388h-review-epic-graphics-battery-life.html (PCWorld:バッテリー・GPU詳細テスト)
https://www.intel.com/content/www/us/en/foundry/process/18a.html (Intel公式:18Aプロセス技術解説)
https://videocardz.com/newz/intel-core-ultra-300-panther-lake-reviews-are-here-cpu-and-igpu-gains-analyzed (VideoCardz:レビューまとめ)
https://wccftech.com/intel-xe3-shockingly-fast-arc-b390-igpu-on-par-with-60w-rtx-4050-crushes-radeon-890m-mfg-support/ (Wccftech:Arc B390分析)
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