3ドルのUSBスティックが、捨てられるはずだったPCを救えるか
Windows 10のサポートが終わった今、世界中の「まだ動くのに使えなくなった」PCが静かに積み上がっている。そこにグーグルと中古テック市場のBack Marketが、ちょっと変わった答えを持ち込んできた。わずか3ドル(約470円)のUSBスティックだ。
「まだ動く」のに捨てられるPCたち
2025年10月14日、Windows 10のサポートが正式に終了した。
ハードウェアそのものが壊れたわけではない。セキュリティ更新が届かなくなっただけだ。だが現実問題として、サポートの切れたOSで使い続けるのはリスクが高く、かといってWindows 11の要件を満たさない旧世代のPCはアップグレードもできない。結果として多くの端末が「使えるのに使えない」状態に追い込まれた。
その規模は、4億台以上という試算もある。
電子廃棄物はすでに深刻な問題だ。国連訓練調査研究所によれば、2022年の電子廃棄物は全世界で6200万メートルトン超に達しており、その増加ペースは正式な回収・リサイクルの5倍の速さで進んでいる。OS一本のサポート終了が、その数字を一気に押し上げる可能性がある。
「既存の技術の寿命を延ばすことが、電子廃棄物を削減する最も即効性のある方法のひとつだ」——Back Market CEO、ティボー・ユグ・ド・ラロズ
グーグルとBack Marketの回答
リファービッシュ(整備済み中古品)のマーケットプレイスとして知られるBack Marketが、グーグルとの提携を発表したのは2026年3月4日(日本時間)のことだ。

内容はシンプルで、Back MarketがChromeOS Flex入りのUSBスティックを3ドルで販売するパイロットプログラムを開始する、というものだ。試験販売は3000本限定で3月30日から。手応えがあれば規模を拡大する方針だという。
Google is partnering with Back Market to sell USB sticks that let you install ChromeOS Flex on older Windows and Intel-powered Macs collecting dust. https://t.co/IaKor7f5k2
— WIRED (@WIRED) March 4, 2026
Back Marketは2025年9月にも、HPやレノボのリファービッシュ端末にChromeOS Flexをプリインストールした状態で販売を始めている。今回はその流れをさらに手軽にした形だ。
ChromeOS FlexとBack Marketとのこのパイロットプログラムで、互換デバイスの寿命を持続可能な方法で延ばす手段を提供する。
ChromeOS Flexは何ができて、何ができないか
ChromeOS Flexは、グーグルが提供するクラウドファーストのOSで、x64ベースのWindowsマシンおよびインテル製プロセッサ搭載の旧型Macに導入できる。
処理の多くをグーグルのサーバー側に委ねる設計になっているため、古いハードウェアでも軽快に動く。ウェブブラウジング、動画視聴、ドキュメント作成、ウェブアプリの利用といった日常的な用途なら十分にこなせる。
ただし、制限もある。ChromebookとChromeOS Flexは同じOSを名乗るが、Androidアプリは非対応だ。また対応機種には限りがあり、すべてのPCで動くわけではない。
技術補足:ChromeOS Flexは「認定モデルリスト」を公開しており、自分のPCが対応しているかを事前に確認できる。インテルMacは多くの機種がリストに載っているが、ARM系のApple Siliconは非対応。
正直なところ、技術的には自分でインストール用USBを作ること自体は無料でできる。今回の3ドルスティックは、「やり方を知らない人にも届ける」という認知拡大と利便性の話だ。
マイクロソフトは何かしているか
短い答えを言うなら、していない。
Windows 11にアップグレードできないPCへの公式な救済策として、マイクロソフトが用意したのは「Windows 10 ESU(拡張セキュリティ更新)プログラム」くらいだ。これは2026年10月まで有償でセキュリティパッチを受け取り続けられるもので、根本的な解決にはならない。
一方でLinuxという選択肢もある。古いハードウェアでも動作するディストリビューションは豊富にあり、実際に有効な延命策になりうる。ただし「新しいOSを覚えたくない」層には、ChromeOS Flexの方が学習コストが低い面もある。
要点:3ドルUSBスティックは3000本限定・3月30日発売。Microsoftはサポート延長ESUを2026年10月まで提供するのみで、ハードウェアを動かし続けるための抜本策はない。Linuxも有力な選択肢だが、敷居の低さではChromeOS Flexに軍配が上がる。
グーグルとBack Marketは今回のパイロットを「Slow Tech Uprising(遅いテック革命)」と名付けたイベントとともに発表した。3月4日(日本時間)にバルセロナで開催されたこのイベントは、MWC(モバイル・ワールド・コングレス)2026に合わせて開かれたものだ。AIや新機能の追加ではなく、すでにあるものを長く使い続ける——そんな逆張りのメッセージが込められている。
3ドルのUSBスティックが3000本。世界に4億台のPCがある現実と比べれば、象徴的な規模にすぎない。
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