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マネジメント能力を一瞬で上げる、たったひとつの意識変革。

日々のマネジメント、本当に大変ですよね。いつもわちゃわちゃしていて、まったく落ち着けなかったりするでしょう。

「ずっと、こんな感じなのかな・・・」

コーヒーを飲みながら、遠い目をしていたりするかもしれません。そんなマネージャーに届けたい、重要だけれど(なかなか)教えてもらえない転換ポイントをご紹介します。


本稿は「部下が主体的に動かない」「モチベーションが低い」「成果物の質が低い」といった課題を「部下の資質」に求めてしまう人間の傾向と危険性を指摘します。

取り上げるのは、課題の定義を構造的に捉え直す重要性を指摘した研究 Dutton & Jackson (1987) による「課題フレーミング」です。

この論文は、マネジャーが課題をどのように定義するかによって、その後の意思決定や組織行動が大きく変わることを実証的に示しました。とても信頼性の高い古典的な研究です。

なので、タイトルは決して”釣り”ではありません。

経営者や現場マネージャー向けの内容です。


■ ご紹介する論文:Dutton & Jackson (1987)

Dutton, J. E., & Jackson, S. E. (1987). “Categorizing Strategic Issues: Links to Organizational Action.” Academy of Management Review, 12(1), 76–90.

論文の要点:課題の「ラベル」が行動を決める

Dutton & Jackson (1987) は、組織における課題が「脅威(threat)」として認識されるか「機会(opportunity)」として認識されるかによって、意思決定の質や行動が変わることを示しました。

重要なのは、この認識は客観的に決まるのではなく、マネジャー自身の「課題フレーミング(=課題の捉え方)」によって決まるという点です。

例えば「部下が主体的に動かない」というラベルは、課題の所在を個人に固定し、教育・指導・叱責といった打ち手に収束させます。これは課題を「脅威」として捉える典型です。

一方で「主体性を阻害している構造は何か」と再定義すると、課題は「設計可能な機会」へと転換されます。この時、検討対象は個人ではなく、制度・マネジメント・業務設計へと広がります。

なぜ人は個人に原因を求めてしまうのか

この点は、Ross (1977) の「根本的な帰属の誤り(fundamental attribution error)」とも整合的です。人間には他者の行動を「置かれている状況」ではなく「性格」に帰属しやすい傾向があります。

Ross, L. (1977). “The Intuitive Psychologist and His Shortcomings: Distortions in the Attribution Process.” In L. Berkowitz (Ed.), Advances in Experimental Social Psychology (Vol. 10, pp. 173–220). Academic Press.

さらに Argyris (1976) が指摘するように、マネージャーは、自分のマネジメントの不備(構造の欠陥)を認めたくないがために、無意識に課題を部下のせいにすることで自分を守ろうとします(=組織防衛)。

これ「無意識の防衛」であることが重要です。強調しますが「無意識」なんです。人間には、前提そのものを問い直すことを「無意識」に回避する傾向があるのです。

Argyris, C. (1976). “Single-Loop and Double-Loop Models in Research on Decision Making.” Administrative Science Quarterly, 21(3), 363–375.


■ 課題再定義の具体例と有効な問い

Dutton & Jackson (1987) の示唆を踏まえると、日常的な課題は以下のように再定義できます。

・「主体性がない」→ 主体性を発揮できない目標設定や意思決定構造
・「モチベーションが低い」→ 評価制度が内発的動機づけを阻害
・「企画書の質が低い」→ 必要なスキルを得る育成プロセスが欠如

このように、課題のラベルを変えることで、打ち手は「個人への介入」から「構造への介入」へとシフトします。

もっとはっきり言えば、課題を「部下の責任」から「マネージャーである自分の責任」に転換するわけです。

もちろん、本当に部下個人の課題である可能性も十分にあります。しかし個人の性格的な課題は、そう簡単には解決しません。労力をかけても、成果がなかなか出ない可能性もあります。

そこで、です。

部下個人の責任に帰着させたくなる人間の心理を踏まえ、それを組織構造の課題として再定義し、業務プロセスの見直しをします。それができたら、マネジメント能力は何段か上になります。しかも一瞬で。


■ 自分を疑う「クリティカル・シンキング」の問い

課題を定義する際には、以下について問い直すと良いでしょう。

・問題を部下個人の能力に帰属させすぎていないか?
・構造や制度で説明できる余地はないか?
・もし人を入れ替えても同じ問題は起きないか?

これらの問いは、課題を「個人の欠陥」から「マネジメントとして再設計可能な構造」へと変換する起点になります。

クリティカル・シンキングについては、僕のビジネスパートナー(チェンジウェーブグループ社長)が良書を出版しているので、そちらもどうぞ。

そして、人工知能の時代です。

人工知能に対して、部下個人の課題に見える状況を入力し、同時に、先の問いをプロンプトとして入力するだけです。それだけで、課題の再定義が可能となります。


■ まとめ

Dutton & Jackson (1987) が示すのは「課題は発見されるものではなく、定義されるものである」という事実です。「部下が悪い」という定義を採用すれば、その範囲でしか解決策は生まれません。

一方で、課題を構造的に「再定義」すれば、組織は初めて「マネージャーによって変えられる対象」になります。求められているのは、解決策の提示以前に「どのように課題を定義するか(課題フレーミング)」を考える力なのです。

少しのことなのに、これだけで世界の見え方が変わると思います。そして意外と、この事実を教わる機会は少なかったりするのです。



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