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僕が「部下を辞めさせてしまう上司」だったときの話

チームメンバーが立て続けに辞めてしまった

26歳のとき、僕は初めてチームリーダーになりました。

しかし、数ヶ月もすると、メンバーが立て続けに辞めてしまいました。

「小山さんのチームで働くの、きついです」と言われたり、間接的に聞いたりしていました。

今回は、かつて僕がやってしまったマネジメントの失敗について書きます。今でもすごく反省していて、かなり赤裸々な内容なのですが、この経験をシェアすることが、社内のメンバーやマネジメントに悩んでいる方にとってプラスになればいいなと思っています。

「よかれと思って」の罠

なぜ、メンバーが次々と辞めてしまったのか。

僕は「クオリティーが高い仕事をしたい」という気持ちが強く、「気づきがあるのに伝えないのはもったいない」と思っていました。

それでメンバーにも、すごい長文の、めちゃくちゃ細かいフォードバックをバンと送ってしまっていたんです。当時はけっこうハードに働いていたので、夜中に長文のメッセージを送ることもありました。

決して「相手を否定しよう」と思っていたわけではありません。ただ純粋に、メンバーの給料を早く上げたかったし、成長してほしいと思っていました。かつ、仕事の水準は、今出せる目一杯のものをやりたい。「だから、思いついたことは全部言っておいたほうがいいよね」と。

本当に「よかれと思って」の行動でした。

マネジメントの失敗って、そういう場合が多いのかもしれません。「この人はダメだ」みたいに悪意がある人は、実はそんなにいない。だからこそ、よけいに難しい。気づかないうちに相手を追い込んでしまうのだと思います。

逆に「丸投げ」したら大炎上

それで反省した僕は「もう、メンバーの仕事に口を出すのはやめよう」と決意しました。真逆の方向に変えたんです。仕事を任せたら、あとはもうまったく見ないようにしました。

その結果としてミスが起き、クライアントにすごくご迷惑をおかけしてしまったんです。

ある案件で予算配分のミスがあり、それが成果にも影響してしまいました。最終的にはなんとか挽回できたのですが、最初はもうお葬式のような空気で、ひたすらクライアントに謝るしかありませんでした。

完全に僕の責任でした。予算配分は広告運用の仕事の基本です。それなのに「口を出してはいけない」と思いすぎて、ちゃんと見ていなかった。

「丸投げ」になってしまっていたんです。

その結果、部下によけいな失敗をさせて、逆に傷つけてしまいました。

弱みを克服しようとしたら、強みも消えてしまった

このときの僕は「自分の弱みを克服しよう」とばかり考えていました。

自分は、人との接し方に問題がある。だから、ものすごく気をつけてやっていこう、と。弱みの克服に、全神経を集中していたんです。

ふと気づいたら、ただの「もごもごした人」になっていました。

それまでは「いい仕事しよう!」「絶対いける!」という感じで、自信を持ってバーッと話して、それで提案がうまく行ったり、成果も出ていました。それで初めて、少しはチームの役に立てていたんです。

でも、弱みを意識するあまり、遠慮してもごもごしてしまって。単によくわからない人になってしまいました。役に立てている実感がなく「自分、なんでここにいるんだろう」と思うぐらいでした。

弱みをなくそうとしたら、強みまで失われてしまった。

「これ、なんにもいいことないな」と途中で気づきました。

「仕事って東大受験じゃないんだよ」

そんなとき、アナグラムの創業者である阿部さんと話をしました。そのとき言われたことは、今でもよく覚えています。

「小山さん。仕事って、東大受験じゃないんだよ」

「仕事って東大受験じゃないから、9教科ぜんぶ完璧にやらんといかんわけじゃないよ。『この1本の勝ちパターンだけで一生食える』みたいなものを探せばいい。それが商売だから」と。

「マネジメントでも、小山さんが教えるのが合う人と、合わない人がいるじゃん」「合わない人はそもそも、小山さんの下につけないほうがいいんだよ」「小山さんのチームには、そこがいちばん成長できるタイプの人だけ集めたらいいよ」

「すべての仕事を完璧にできなければいけない」と思っていた僕にとって、この言葉は衝撃的でした。弱みになる状況は、避けてしまえばいい。むしろ、強みを最大限発揮できるように、環境を整えるほうが重要なんだ、と。

「活躍できる環境」はとても限られている

それ以来、採用や配属、そしてチームの環境づくりにすごく気をつけるようになりました。

・テキストでのコミュニケーションが中心の環境
・忙しすぎて視野が狭くなる状況

このあたりは特に、自分の弱みが出やすくなってしまう環境だなと思ったので、なるべく避けるようにしました。チームメンバーとリアルで話す機会を増やして、会話がしやすいようにデスクの上のモニターをどかしたりして工夫しました。

自分ひとりで考えると失敗するので、周りの人にも聞くようにしました。自分のことになると、客観的に見るのって難しいので。鏡を見ながら、バッティングのフォームがあっているか確認するような感じです。

特に人事には、今もよく見てもらっています。僕を含め、それぞれのチームが適切なフォーメーションになっているか。

「この人は自分のチームで見るより、別のマネージャーのチームの方が合いそうだな」と、他のマネージャーを頼ることも増えました。

そうすると、だんだんチームの雰囲気もよくなって、人数も増えていきました。

「人がちゃんと強みを発揮して、活躍できる環境って、本当に限られてるんだな」と、身をもって実感しました。

部下の「弱み」も、実は「強み」である

なによりよかったのは、自分の弱みを受け入れたことで、チームメンバーへの接し方も大きく変わったことでした。

うまくいっていないメンバーがいたときに「あのころの自分状態」になっているのが、なんとなくわかるようになったんです。「弱みに目が向きすぎて、強みも失われてしまっている状態だな」と。

そして「でも、この人の『弱み』は、ちょっと環境を変えれば『強み』に変わる可能性があるな」と思うようになりました。

自分もそれを、身をもって体験したからです。

それならば自分のやるべきことは、その人の弱みを、強みに変換できるようなアプローチをすることだと思いました。

強みは自分で気づかないことが多い

「自分には、そんなすごい強みなんてないです」という人もよくいます。

でも、自分の強みって、自分ではなかなか気づかないことが多いものです。

強みになりうる性質も、本人は弱みとしか思っていない。「克服しないといけない」と思い込んでいるケースが、とても多いと思います。あと、本人にとっては当たり前すぎて、気づいていなかったり。

強みというより「特徴」と言ったほうがしっくりくるかもしれません。そんなに大げさなものでなくても、その人なりの特徴や傾向というのは、誰にでもあるものです。

以下に、「弱み」と「強み」のトレードオフの例をざっと並べてみました。

【弱みと強みのトレードオフの例】
・臆病で心配性
 →ミスのない仕事ができる
・上司がなにを言っても響かない
 →タフで過酷な現場で耐えられる
・自責の念が強くて落ち込みがち
 →責任感を持ってやり遂げられる
・短絡的で浅い
 →目標達成に向けて最短で動ける
・リスクを恐れて無難になりがち
 →もれなくリスクに気づいてケアできる
・柔軟さに欠ける
 →ひとつの方向にまとめ上げる力が高い
・他者を見下しがち
 →独自の突出した仕事を作れる
・注意散漫で道をそれがち
 →柔軟に手段をえらばず動ける
・保守的で変化を嫌う
 →深い専門性を持ち、品質を守り抜く力が高い
・深く考えずに動く
 →とにかく行動力があり成果を出せる
・想定外の事態に弱い
 →段取りを立てるのが上手で、無駄なく仕事を進行できる
・自信家で傲慢
 →大きな目標に怯まず、周囲を引っ張る力がある
・完璧主義で、動きが遅い
 →高い品質で最高のものを仕上げられる
・関係性で仕事をして癒着してしまう
 →人脈作りや、関係性の維持が得意
・発想が小さくまとまってしまう
 →リスクを最小限に成果を伸ばすことができる

*「自分に近いかも」と思える性質が、ひとつでも見つかればうれしいです

たとえば「真面目で心配症すぎる人」なら、納期が複雑で、進捗管理が重要な仕事をすると、ものすごく活躍できる。一方で、大胆な提案をしないといけないような仕事は、ちょっと難しかったりします。

同じ特徴でも、それが「強みになる状況」と「弱みになる状況」があるわけです。まずはそこを理解するのが、とても重要だと思います。

本人からしたら、前者は「普通に仕事しただけ」みたいな意識だったりする。逆に「大胆な提案が必要なのに、できない」というほうが、本人の中で意識が強くなっていることも多いです。できていないことばかりフィードバックされがちなので。

だからマネージャーは「隙あらば褒める」ぐらいがちょうどいいと思います。

なんでもかんでも褒めるんじゃなく、その人の特徴がよく発揮された場面を、ひたすらピックアップしていくのが大切です。そうすると、本人もそこに目が向いていきます。

逆に、なにかミスをしたときは、あくまで「強みの代償」という伝え方をする。「このミスは、普段こういうふうに発揮されている強みとトレードオフな側面もあるから。ここで足元をすくわれないように、多少意識しておくといいと思います」みたいな感じです。

そうすると、気持ちも落ちないし、ポジティブにやれるはずです。

必要なのは漠然とした優しさではなく、具体的な戦略

弱みは強みの裏返しである。だから、無理に克服しようとしなくてもいい。

これだけ言うと、すごく優しい言葉のように聞こえるかもしれません。ただ、注意しておきたいのは、なにも考えずにこの言葉だけを伝えても、まったく相手のためにならない。むしろ、すごく無責任だということです。

弱みは強みです。ただ、この言葉は「勝つための戦略」とセットになって、初めて成立します。

どうすれば、この人が会社やマーケットで、影響力を獲得していけるか。どんなキャリアのシナリオを描いて、経験を積んでいくといいか。そういった「戦略」をいくつか提示し、話していく必要がある。

「強み化」は戦略とセットなのです。

たとえば、情に厚くて人と接するのが上手い。ただ、ロジカルな資料作成などは苦手で、自信をなくしてしまっているーーそういうメンバーがいたとします。

この場合、まずは成果の出やすい案件で自信をつけてもらい、周囲にも認めてもらう。そのうえで、もう少し「人」に近い役割をやったほうが輝けるはずです。社内でファシリテーションをやったり、クライアントとの対話が重要な案件を担当してもらう。

逆に、お客さんの前で堂々と話したり、大きな絵を描くのは苦手。でも、とても几帳面で、細かい分析をしたり改善をまわすのは得意。そういう人は、アクセス解析やツール導入などのエンジニアに近い能力を身につけると、より輝けたりします。

一度でも成果が出ると、本人も自信がつきます。すると不思議なことに、苦手だったはずの仕事も、いつの間にかできるようになっていたりするんです。

人の可能性を信じ切る。そのためにも戦略が要る

こういうアプローチをするには、人の可能性を信じ切る必要があります。

ミスがあると、どうしてもそこにばかり目が向いてしまうので。「この人は絶対にいい仕事をできるし、みんなのリーダーになっていける」と信じていないと、そういう仕事の振り方はできません。

だからこそ「問答無用で愛を注ぐ」のではなく「具体的にどう成果を出していくか?」という戦略が必要なんです。

結局どこまでいっても、仕事はうまくいかないとダメです。「売上はあがっていないのに、褒められたらなんとかなる」なんてことは絶対にない。具体的に成果を上げさせられないと、全部が茶番になってしまいます。

自分の特徴が「強み」になる状況。そして、実際にお客さんから求められる経験。この2つが噛み合ってくると、やっと本人も「結構いいかも」と思えます。そういう確かな手応えがあれば、向こう2、3年は迷わず進める。

「あなたの弱みは強みだから、そのままでいいんだよ」という甘い話ではなく、ちゃんと成果を出すために、特徴を活かすような戦略を作る。

こういう考え方でメンバーと接するようになってから、自分のチームのメンバーがきちんと成果をだして、リーダーなどの重要な存在になっていくことも増えていったのです。

「失敗させて学ばせる」は悪手

仕事は基本的に、うまくいかないと意味がありません。

「失敗も経験のうち」みたいな考え方もありますが、それは少なくともマネジメント側が言うべきことではないと思います。

基本、失敗してもあまりいいことはありません。それはクライアントにとっても、本人にとってもです。失敗したら、成功体験が積めない。いい思い出にも、キャリアにもなりません。

失敗は、社内ですれば十分なんです。

社内のロープレでうまくいかなかったり、資料の内容がイマイチだったりして、上司にフィードバックされる。それが理想的な失敗経験だと思います。お客さんに迷惑がかかるのは、プロとして避けるべきです。

勝たせないといけないんです。なんとしてでも。最悪「ちょっと上司に巻き取られちゃったな」と思われても、勝つことのほうが優先だと思います。

勝つ前提で、どこまで部下に「自分でやったと思える経験」をしてもらえるか。そういう順番で考えないといけません。

ときには、新規事業のような「勝つか負けるかわからない勝負」もあります。そういう仕事を人に任せるときには「もし失敗しても必ず守る」という、相当の覚悟が必要です。

もちろん実際には、気をつけていても結局「お客さんにフォードバックをいただいて、教えられました」ということも多いんですけどね。でも、大前提としてマネージャーは「必ず勝たせる」という気持ちでいなければならないと思います。

メンバーの市場価値を上げるために

メンバーに「いい仕事」をしてほしい。
メンバーの給料を上げたい。

こういう気持ちは、マネジメントに失敗した当時から、実はあまり変わっていません。ただ、そのための正しいアプローチの仕方が、この数年かけてようやくわかってきたのかなと思います。

今、僕はありがたいことに、アナグラムの代表取締役を務めさせていただいています。だから今は、メンバー全員に対してこう思っています。

メンバーの市場価値を上げたい。

この会社で働くことで、自分の特徴を強みとして活かした、オリジナリティあふれる、迫力のある仕事ができるようになっていく。そんな会社でありたいと、常に考えています。

それが本人にとってはもちろん、お客さんにとっても、会社にとっても、大きな価値になると強く思っているのです。


noteを読んでくださってありがとうございます。
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