香港の菠蘿包、韓牛の焼肉、五指毛桃のスープの日。【ジウメイのおいしい日記】
先日香港入りし、その日のうちにいつもの中環のテーラーにチャイナドレスのオーダーに行き、10日後の仮縫いの予約をして来た。2010年に初めて香港に来た時から作り続けているクラシックな旗袍は、私が生まれて初めて物理的に何かをコレクションしたいと思った物かもしれない。基本的に私は物を集めるよりも捨てる方が好きで、靴もじゃんじゃん履いて履き潰すタイプだし、バッグの類も時計やアクセサリーも何も集めていない。コンサートには行ってもグッズは買わないし、化粧品も何年も買い替えないし、小物とか置物にも興味がない。そんな私が唯一、香港に来る度に少しずつオーダーして集め続けて来たのが「LINVA TAILOR」のドレスだ。
背中にジッパーはなく肩から脇にかけてスナップボタンで留めるタイプの昔ながらのスタイルで、もちろんシルク100%で生地は伸びず、着る時も脱ぐ時もとても神経を使う代物なのだけど、普段信じられないほどガサツな私が、そのドレスの着替えの瞬間だけ強制的にエレガントな人間にならざるを得ないのがちょっと貴重な時間のように思えて、たまに着るようにしている。この前パリに行った時現地に住んでいるスタイリストの友人に「ところであんたってメンズ服とチャイナドレスの間の服って持って無いの?」と聞かれて、確かに「真ん中がない」っていうのが私の人生の選択そのものを表している気がする。
今朝は溜まった洗濯物を近くのクリーニング店に出してから「紅茶冰室」で日本のメロンパンのような菠蘿包と香港名物エバミルク入りのミルクティで朝食。夫とそれぞれ午前は本を読んだり作業をしたりして過ごし、ランチに最近出来た韓国の韓牛協会がやっている焼肉店へ。めちゃくちゃ家賃の高い尖沙咀で、これほどの好立地と広さのレストランを経営できる資本力恐るべし。スタッフさん達はおそらくマレー系の人たちで韓国語は通じないものの、韓国人の店長さんがしっかりフォローしてくれるので問題なし。肝心のお肉もソウルで食べるものと遜色なく、しばらく中華系の食事が続いていたせいもあって夫が想像以上に喜んで食べていた。
うちの夫は70代の韓国にルーツを持たないごくごく一般的な日本の中高年にしては、韓国料理というものを相当愛している方だと思う。もちろん無類の韓国料理好きの私との結婚による影響はかなり強いらしいけど、そもそも彼の亡くなった父親が戦時中の日本人には珍しく当時から韓国料理や韓国文化そのものへのリスペクトがあった人だったという下地があるからだと思う。義父は戦後韓国の会社と商売をし頻繁にソウルに出張に行っていて、夫は当時まだほとんどの東京の人間が知らなかった胡麻油の塗られた韓国海苔を日常的に食べていたらしい。

昔こっちに住んでいた時に毎日のように通っていた、日本のものが何でも揃うスーパー「City Super」で夫が朝ホテルの部屋で食べるヨーグルトを買ったり、私の忠告を無視して半袖ばかり持って来た夫が風邪ひかないようにショッピングモールでパーカーを買ったり、懐かしい場所を少し散歩してから一旦部屋に戻ってゴロゴロ。この休憩が私たちの旅行には必須で、午後3時くらいから6時くらいまでのダラダラとしたお休みを毎日とる事によって、どんなに歩いても食べても旅疲れがほとんどないまま帰国できているんだと思う。私は一人旅の時も必ずそうしている。


夜は私の好きな深水埗にあるローカルに人気の点心専門店へ。席につくなり何のお茶にするか聞かれ、プーアル茶と答えるとすぐに洗杯のセットが運ばれて来た。全然汚れていないけど一応お茶で食器を洗うというこの飲茶リチュアル。毎回これをやる度にままごとをしている気分になる。蝦餃や潮州粉粿、凰爪などの定番点心の他に、肺の機能を補う五指毛桃のスープと水捌けをよくするアヒルのスープを注文。五指毛桃は日本ではほとんど見られない広東省や香港で特に有名な生薬で、北京にいる友達のお母さんは広東省の農家さんにお願いして五指毛桃を無農薬で育てて送ってもらっているらしい。流石。
