BLとは時に男女の恋愛よりも純粋でせつない~映画(LOVE SONG)感想~
BLってどう受け止められる方が多いのでしょうか?
BLという二文字だけで敬遠するひとや、苦手意識で見ないって方もちらほらお見かけしたりします。
そんな苦手意識だけで見ないと篩にかけられてしまうとしたら、勿体ない映画を紹介したいと思います。
2025/10/31公開「( LOVE SONG )」
森崎ウィンとSnow Man向井康二のW主演
トメには及川光博。
タイ・バンコクと日本との共同制作。ロケもバンコクが中心
世界的なBLブームの火付け役となったドラマ 「2gether」を手掛けたチャンプ・ウィーラチット・トンジラーが監督。
これだけでもう期待しかない層と、興味が削がれる層に二分されるだろうか?BLと言っても所謂同人誌のようながっつり絡みのあるものとそうではないものにも分かれるし、どちらかと言えば前者を敬遠するひとの方が多いのではないだろうか。
「きのうなに食べた?」のようなBL要素はそれほどない作品もある。私は原作ファンだが、実写もキャスティングが素晴らしくて好きな作品のひとつ。
私の推しの1人のSUPER EIGHTの大倉忠義と成田亮の「窮鼠はチーズの夢を見る」はしっかりベッドシーンもあったが全編を通して美しい仕上がりだった。ティーザーからしてもう美しい
日本で一大ブームとなったのは言わずと知れた「おっさんずラブ」だろうか
ちなみに私は最初に単発で放送された相手役が落合モトキの『年の瀬 変愛ドラマ第3夜』をたまたま見て、あまりの面白さに夜中に爆笑して周りにこれを是非とも見てくれ!と奨めまくったが、連ドラ版は途中で挫折し映画は見ていない。コメディとしては秀逸だと思う。
さて本題の「( LOVE SONG )」について。
特にBLに抵抗なく(なんせ窮鼠~を見てBlu-rayまで持っているひとなので)
箱推しSnow Manの向井康二が出演するならとムビチケを買い、舞台挨拶中継回を2回押さえて観に行った。更にオーディオコメンタリーも見たので今のところ3回観ている。だがノベライズは未読。コメンタリーでそうだったのかと知ったことを踏まえての感想となります。
これはBL、なのか?
「2gether」は深夜にテレビでチラ見した程度。終始男性同士でいちゃいちゃしているドラマという印象で、まぁタイでは同性同士の恋愛は普通なのだからと何ら違和感もなく受け止めていた。
対してこの作品は、タイ人同士ではない。お互いに好意を寄せていた日本人同士がタイで再会して…という話。
再会したからと言って焼け木杭に火がついていきなりどうこうなる訳ではない。商業映画なのだから当たり前だがBL同人誌にありがちなやおい(ヤマなし、オチなし、イミなし)要素もない。そもそもBLを敬遠する層はそれが苦手なのではないかと思う。
向井康二演じる「カイ」(杉浦 海って名前だけでもうカッコいいじゃないか)と、森崎ウィン演じる「ソウタ」(廣木壮太)の両片思いの物語。
両片思い?って初めて耳にした単語だけど、本当にそれがしっくりくる表現。要はお互いに片思い同士で、両想いなのに、互いに想いが伝えられないと言う物語。日本人だから、という事が多分に作用する。これがタイ人同士ならさっさと両想いになって、向井康二曰く「好きって言えたら2分で終わる」映画となってしまうのだ。
好きと言えたら、世界は変わる
高校生の頃からお互いに想いを寄せていたカイとソウタ。
日本人だから、同性のソウタに想いを伝えられないと悩むカイに対し
ソウタは天真爛漫でカイに想いを寄せるも、大学時代にはカイに纏わりつく後輩のユキをカイの彼女だと勘違いし想いを伝えられずに過ごしていた。
実際にはカイは「ユキには全く興味がないから全然目も合わせてない。なのにそれにソウタは気付かない!(鈍感)」と言う旨の発言を向井がコメンタリーで述べている。
バンコクの道端でマッサージ店のお姉さん達に「カイー!カイー!」と手招きされたり、カメラマンとして契約している会社の女性社員スマイルにも気に入られてくっつかれていたり、クールなキャラで女性にもモテるカイ。
(タイでは兄弟でも腕組みしたりの距離の近いスキンシップは当たり前らしいので、普段の向井康二を見ているとメンバーへ対してのスキンシップに多分にしてこの人のバックボーンはタイなのだと感じるが、撮影時にスマイルにくっつかれているのは緊張してドキドキしていたと言う)
ソウタの方は男同士だからと言うのはあまり関係なく、彼女がいるから好きだと言えないのに対し、カイの方はと言うと想いを伝えられずにもがき苦しみ、ある日大学も辞めソウタの前から忽然といなくなってしまった。どんなに想っても相手に伝える事すら出来ない現実が苦しかったのだ。
6年後
ひょんなことからタイにカイがいることを知り、同時に降ってわいたタイへの長期出張に、もしかしたらカイに会えるかも知れないと言う淡い期待を胸に苦手な飛行機に乗りバンコクへ旅立ったソウタ。
その日のうちに裏路地でカイに再会する。
何でお前がここに居るんだよ、訳わかんねぇしとぶっきらぼうなカイに対し、会えて嬉しくて尻尾ぶんぶん振ってる仔犬のようなソウタ
「出ました!ウィンのつぶらな瞳!」とコメンタリーで向井が注釈したように、この再会の場面のウィンくんの表情がとても良い。夢でも見てるのか?と言う嘘のような現実に思考が追いついていない顔とでも言うのか。
この作品、全編通してウィンくんの表情がとても良い。
中でも車でアパートに帰る際に、助手席の窓の方を向いて頬杖をつき涙を浮かべる顔がとてつもなく良かった。ウィンくん自身はこのとき車の窓を開けて外の風を浴びたかったようだが、どうやっても窓が開かなかったそう。結果としては窓ガラスに写り込む街の灯かりが反射したりで良い絵になったのだが。
作品通してほぼタイ・バンコクロケの映像がとても美しい。
背景に写り込む風景が近代化された日本の街中とは違い異国情緒が溢れ、街並みに溶け込む寺院やミュージアム。ロケーションに拘っていたのが良く分かる。その中で繰り広げられる非現実的なようで紛れもない現実。
カイが何故タイに拠点を移していたのかは定かではないが、タイでは至極普通の事なのだから周りも普通にカイとソウタの事を応援する。
そう思うとジンさん(及川光博/一緒にバンコクへ出張している上司)とヒカリ(カイとソウタの大学同期。ソウタとは勤務先も同じ)は理解のある人たちなんだなぁと思う。
人を想う気持ちに男も女も関係ないとは思うが、日本の法律では許されていない。カイがソウタの前から消えたのも、ソウタの母に釘を刺されてしまったからだったのだ。
伝えられない想いを曲にして歌詞に認めるカイ。
誰にも言えなかった思いの丈を、いつの日かソウタに聴かせたくて暖めていた。(そう思うと「私の歌?」なんてはしゃいでいたユキが空回りも甚だしくて不憫だな)
大学時代に度々カイが鼻歌で歌っていた歌詞の未だないその曲を録音して持っていて、ずっと聴いていたソウタ。今どき?と思うような大学時代から使っている有線イヤホンで。一つのものをずっと長く愛するソウタがここで表されている。=忽然と消えたカイを心の中でずっと思い続けていたソウタと言うことなのだろう。
ある日カイが所属するバンドSUNBURSTのライブが行われ、その中で大学時代に作った曲が初めて披露されると言う。ずっと聴きたかった鼻歌のあの曲の完成形がついに披露されるのに何故かそのライブに行かないソウタ。
あの曲はきっとカイが好きな人に向けて書いた曲だから(この時点でまだカイはユキかスマイルが好きなんだと思っている)聴きたいけど聴きたくないと言う心境だったのか?それでもアンコール前にはライブ会場を訪れたソウタを確認すると、カイがアンコールで披露したのはせつない思いを綴ったあの曲だった。
それを聴いて自分の事だとは思わず号泣するソウタ。
カイに会わずに早々にライブ会場を後にして、酔っぱらって街を彷徨い迷子になり結局迎えに来てもらい初めてカイの部屋へ。
酔いつぶれて寝てしまったソウタはカイとキスをした夢を見る。
高校生の頃、実家に泊まりに来ていた隣で眠るカイにこっそりキスをしたことを思い出しながら。
カイの作った朝ごはんを食べながら、何故黙って消えたのか、同じ頃大学を辞めたユキを妊娠させたんじゃないかと言う噂は本当なのかと問うと
「お前それ信じてるのか?」「俺のファーストキスはお前だよ」「二回目のキスは昨日」「それでも妊娠させたと思う?」とたたみかけるカイ。
そう。カイはソウタを想う余り純潔を貫いていたと言うカミングアウト。
高校生の時のキスに気付いていたことも、まだ感触が残っているように感じた昨日のキスが夢ではなかったことにも驚いているソウタに「覚えてないなら三回目しないとな」とテーブル越しに三度目のキスをしたカイ。
立ち上がってテーブルについた右腕一本と腹筋で自分の身体を支えて左手を座るソウタの顔に添えた体勢で行ったキスシーンの美しいこと!
窓から差し込む陽の光に透けるカイのシャツとテーブルの向日葵。
(すごく腹筋を使った!らしい)
BLだけれどこれ以上の性描写はなく、男女の恋愛よりも淡くプラトニックでピュアではかなく切ない。もはやBLと言うよりも純粋な恋愛映画だと思う。
誰かを想うと言う事に素直になれたら、世界は変わること。
改めて考えさせられる映画だった。
正しく恋する2人に、恋をする。映画なのです。
そしてバンコクに行きたくなる映画!カノムトウキョウ食べたいし、もれなくカイチアウが食べたくなるのでナンプラー買って帰ったよ。
そして3回見たのにまだ見たいと思っている (LOVE SONG)
私の周りには推しの主演映画なら50回は観るとムビチケを50枚買って扇状に並べて写真を撮る人や、1日に同じ映画を5回見るような猛者がいるので私なんかはまだまだ足元にも及ばないのだが、そんな私が既に3回観ている映画。BLだから見ないと候補から外している人にこそ見て欲しい。
何故「( LOVE SONG )」なのかは最後まで観たら判明します。
タイ人の母親を持ち幼少期をバンコクで過ごしていたハーフの向井康二だからキャスティングされ、タイ語を話せるのは当然と思われるかもしれませんが、彼はそこまでタイ語を話せる訳ではありませんでした。この作品と、後に制作された全編タイ撮影タイ語の連ドラ「Dating Game~口説いてもいいですか、ボス⁉」の為に多忙なスケジュールの合間を縫って猛勉強の末タイ語を習得しているのです。
一度見たなら、是非とも森崎ウィン・向井康二ふたりの副音声解説コメンタリー付でも見て欲しい。
裏話や解説はもちろん、視聴者以上にキスシーンで盛り上がる(やかましい)コメンタリーに二人の事が大好きになってしまう未来が待っていますよ。
