息子の部屋
散らかった部屋にこぼれる積み木とクレヨン
床の絨毯には赤や黒の線が支離滅裂に引かれている
カンタは自分じゃないと言う
じゃあ、誰なの?
私は問いただす
知らないよ、そんなこと
カンタは目を背けて、小さな声で言う
私はそのカンタの様子にどうしようもないほどのフェティッシュを感じてしまう
今度やったら承知しないからね
カンタは俯いたまま答えない
ただその右手の指は黒いクレヨンの線をなぞっていた
グラスにウイスキーをストレートに注ぎ、電気もつけずにテレビを見ている
正直言うとテレビなどみていない
音が鳴っているだけのしろものだ
カンタは既に隣の部屋で寝ている
カンタの書いた黒い線を見ながらウイスキーを飲む
このままカンタは大人になり、誰かを抱く
黒いクレヨンの線をなぞるようにその誰かの身体の線をなぞるのだろうか
私はまたゾクゾクしてウイスキーを煽る
テレビの音は変わらずうるさい
しかし、その音がなくなると自分の背徳心が露わになるようで私は怖かったのだ
キッチンのシンクの下にしまってあったコンビーフの缶詰を探した
無性にたべたくなった
あかりをつけずに探したのでかなり時間が
かかった
私はただ一心不乱に探した
カンタがそれを見たらお母さんは何しているのときくことだろう
私はそれに何かを答えられるだろうか
人間になるのを辞めたのよ
そう言ってカンタをケムに巻くのだろうか
わからない
テレビのある部屋を見るとあたたかそうか蝋燭がゆらめいている。
私はくしゃみをした
さっき炊いたアロマオイルか、いや、
窓の外でしんしんと雪が降っている
くしゃみはそのせいか
私は缶詰を諦めカンタの部屋に行き
窓を開ける
凍えるような風がカンタの部屋に入ってきて、カンタは意識なく毛布を顔の上まであける
私はそれを凝視した
