飲み水に溶け込んでいる量だけから判断すると物質の量はそれほど多くない
はじめに
日ごろ生命科学の研究で用いる試薬で、緩衝液(buffer)と呼ばれる溶液をよく使う。ほとんどは蒸留水に各成分を溶かして手作りする。pHや濃度などを微妙に調節して生体試料や成分を安定に保ち、取り扱うために適宜用いる。新たな研究に着手する際、ひとつずつの成分の特徴を熟知して適切に使い分ける。
初心者は最初のうちは何のことやらわからずマニュアル通りにやるしかない。そのうちにどれとどれを混ぜては不都合が生じるとか、身につけた化学の知識が大いに役立つ。キットで実験をすすめるばかりではそのあたりのノウハウがなかなか身につかない。
そんな経験とはべつに、日ごろの飲み水や料理には住んでいる地域ではこの国の平均的な軟水の水道水をふつうに使う。とくに支障はない。
きょうはそんな話。
溶け込む量
上で記した実験で日ごろ用いる緩衝液。含まれる塩類などの量は一般の方々ならばきっとけっこう多いと感じられる量。生理食塩水ですらそうで、ためしに食品に使えるグレードの試薬でつくり味見をしてみたが、なめておいしいものでない。
市販のイオン飲料などは、結構さまざまな「味つけ」によりわりと飲みやすい。そもそも生理食塩水とはイオン強度などは異なる。だから医療用途の経口補水液などはそのあたりをもうすこし考慮して、その組成や関与する塩や糖の濃度を定めている。
それらをためしに作ってみる。結構さまざまな成分をどっさりという形容がふさわしいほど溶かす。あきらかに水道水とはちがう。わたしたちのからだのなかを流れているさまざまな体液には、こういった成分がいろいろと含まれていると知れる。
浄水の技術
数年前に地元の浄水場を見学し、いくつか初めて聞く技術に目を見張った。完成した浄水を市販のペットボトルの水とともに「きき水」したが、まったく区別できずじまい。化学的な分析をおこなっても遜色ないという。浄水を得るまでのプロセスはつねに監視の目が行き渡り、何重にもチェックされていた。
それだけ安全の上にも安全を重ねて飲める水はつくられている。やり方は地域によってちがう。より手数をかける地域もある。せっかくよい状態で送水されても、水を使う建物の浄水タンクの管理が行き届かないとそこで問題を生じやすい。せっかく浄水場で厳しい管理で届けられても、口に入る間際で緩んでしまうとどうしようもない。
すると
水道水を煮沸させ、蒸発した残りの固形物はほとんど痕跡程度にすぎない。しかも重金属や有機塩素化合物などの人体に影響の危惧される物質は法律が定められ、つねに基準を下回ることを要求される。これはわたしたちが日ごろ口にする食品と同等。
1日に体に入れる水の量は総量で2Lほど。固形物の量は30〜200 mg/L (0.03~0.2g/L)程度。その大部分はカルシウム、マグネシウム、ナトリウムなどのミネラル。その量は地域によってその範囲でさまざま。軟水はその範囲の低いほうだし、硬水といわれる地域や一部のミネラルウォーターでもそれを若干上回るぐらい。そのうえで、法律の定めがあり消毒は欠かせない。
おわりに
この国では公共の水道と名のつく飲料水をふつうに飲用できる。その一方で、日ごろ食物や呼吸から飲水を上回る以上のさまざまな物質を摂り入れている。摂る分量や偏りなどによってさまざま。
監視の対象とされる微量でも影響を与えうる物質を含め、あらためて体にとり入れるさまざまな物質について考えるときりがない。水源の安全確保や環境維持も大切。人それぞれの考えがある。
科学者のひとりとして、つねにいろいろな視点に目が行き届くようにしておきたい。
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