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「舟を編む」をオススメしたい理由とは|時空ラボ

皆さんは、15年以上もかかるプロジェクトについて、イメージすることができますか?

例えばリニア中央新幹線は2011年に着工し、2027年に開業予定とのことでした(品川~名古屋間)。
やはりそうした規模の大事業なら、15年かかるのも納得ですね。

しかし「舟を編む」(三浦しをん)という小説では、それだけの期間をかけて、1冊の辞書を編纂しているのです。



◎個人的な評価

★★★★☆
辞書がどのようにしてつくられるのか裏事情が分かって興味深いです。テーマは地味ですが、ストーリーがライトなので、気軽に読み進められます。

◎「舟を編む」の紹介

舟を編む」は、「大渡海」(だいとかい)という中型国語辞典を編纂し、出版するに至るまでの過程を描いた小説です。

中型国語辞典とは、岩波書店「広辞苑」、三省堂「大辞林」、小学館「大辞泉」のような、20万~30万もの語数を収録し、百科事典クラスの情報も兼ね備えている辞書のことを指します。
(ちなみに大型となると収録語数がより多いことはもちろん、巻数も増えるらしいです)

本書は、そんな中型国語辞典を新たに刊行することの魅力、そして意義が伝わってくる小説です。
やはりこうした事典をつくるとなると出版社にとって大プロジェクトで、版元には相応の覚悟・体力が求められますね。

また、編纂する辞書の名前が「大渡海」というのも、思いが込められていて、とても良いと思いました。
皆さんお気づきの通り、「舟を編む」という本書のタイトルと結びついています。

◎「舟を編む」の感想

主人公である馬締(まじめ)光也は、辞書をつくることに対して並みならぬ情熱を抱えていますが、一方で日常的に溢れる「言葉」に思わず気を取られてしまい、会話の途中でも言葉の意味について考え込んで黙ってしまうような、やや抜けた人物です。

実は、辞書の編纂に情熱を傾ける人=変わり者という描き方が、少しステレオタイプに思えたのですが、一般的に馴染みのない辞書編纂を舞台にした小説なら、こうした分かりやすいキャラクターの方がいいのかもしれません。
登場人物が複雑で屈折した性格の持ち主ばかりだと、小説のテーマが伝わりにくくなってしまいますね。

それだけに、こうしたやや独特な世界を分かりやすく見せてくれるのは、「舟を編む」の魅力かと思います。

なお、個人的には、同僚の西岡正志が持つ隠れた情熱が好印象でした(妙にチャラい人物として味付けされていたのが残念です)。

◎「舟を編む」をオススメしたい理由

こだわり」という言葉が、もともとネガティブな意味で使われていたことを知っていましたか?
この小説を読んでいると、ふだん何気なく使っている言葉に対する意識が芽生えてきます。
あえて、そういう仕掛けが施されているんでしょう。

例えば、文中にはときどき辞書から言葉を引用した形式の表現が差し込まれています。
ストーリーを追うだけなら、読み飛ばしても差し支えないのですが、ちょっと立ち止まって言葉に向き合ってみようと思わされますね。

言葉というものに対し、より理解を深め、寄り添ってみたいという気持ちが生まれるのが、本書のとても良いところではないでしょうか。

◎なぜ文庫本ではなく単行本をオススメするのか?

なお、この小説は既に文庫本が発行されています。

もちろんこちらの方がリーズナブルでコンパクトなのですが……、本書に限っては単行本の方が良いのではないでしょうか。

舟を編む」で編纂されている中型国語辞典「大渡海」の装丁について、文中では以下のように記されています。

「大渡海」という文字も銀色で、藍色をバックに堂々たる書体で浮かび上がる

まさに単行本もそのようなイメージの装丁になっており、だからこそ個人的にはそちらをオススメしたく思ったのです。

※単行本は「大渡海」をイメージしたデザインなのです。

ちなみに、この小説はNHKでドラマ化されており、少し内容が異なる部分があるものの、お世辞でなく良質なテレビドラマでした。

主に小説の後半(新人の岸部みどりの登場以降)が描かれているのですが、前半の内容もさりげなく組み込まれており、書籍との相乗効果が楽しめます。
調べたら、DVDが発売されていました(Blu-rayではないんですね)。


ここまでお読みいただき、ありがとうございました!
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