町田康さんの『私の文学史』から学んだ文章術|時空ラボ
作家の町田康さんはよく「(文体に)癖がある」と評されるそうで、本人は「これは評価として正しくないんじゃないかな」と思っているとのことでした。
なんだか意外ですね。
そうなると私は「文体とは何だろうな?」という疑問が喚起され、町田康さんの著書『私の文学史 なぜ俺はこんな人間になったのか?』から、特に「文体」というテーマにフィーチャーしつつ、文章術にまで踏み込んで考えてみたくなりました。
なお、本のタイトルからして町田康さんらしいですね。
この短いタイトルの中でも「私」と「俺」という2つの一人称が組み込まれていて、なんだかおもしろいです。
◎影響を受けたつもりの文章
ちょうどこの町田康さんの著書を読んだばかりなので、どことなくいま書いている文章もその影響を受けているような気がします(恐れ多いですが)。
皆さんとしては、「あなたのいつもの文体を把握しているわけでもないので、受けた影響など知る由もないです」と思われるかもしれません。
そうした考えの差異は仕方のないことと承知しており、私が町田康さんの影響を受けたと勝手に思うのも、本来は自分の中にしまっておけばよいだけの話なのでしょう。
◎そもそもの私の文章の書き方
ただ、なぜ私がいま影響を受けていると感じたかというと、自分はふだん、もっと簡潔な文章を心掛けていたためです。
仕事がら(編集やライティングに携わっています)、小説とは異なって、何かを解説する用途の記事を作成してきました。
その際は、同じ情報を伝えるなら短い文章で済んだ方がいいんじゃないか、効率がいいんじゃないかという考え方をしていたわけです。
(町田康さんの文章が簡潔でないとか言いたいわけでは決してありません)
これはこれで役に立つスキルではありえたのですが、『私の文学史 なぜ俺はこんな人間になったのか?』を読んで、いままでと違ったアプローチを試みるのも面白そうだなと感じました。
「このような文章を書こう」という意思そのものが、文体である
上記、本書から引用させていただきましたが、そういう意味では「簡潔な文章を書こう」という意志が、これまでの私の文体そのものだったのかもしれません。
◎簡潔すぎる文章はおもしろくならない?
簡潔な文章を否定するわけではないのですが、たとえば文章の簡潔さを突き詰めていくほど状況は希薄になり、最低限の説明に近づいていくようです。
あまりネタバレしてもいけないと思うものの、ここでも『私の文学史 なぜ俺はこんな人間になったのか?』からいくつか引用してみます。
豊かな響きを出そうとすると、多少のノイジーな要素を入れておいたほうがいい。あるいは何か嘘の物事を本当らしく見せようと思ったとき、あまりに見せたいものだけを出していると、それが嘘に見える。
とても興味深いです。
文章にはノイジーな要素を入れた方がいいというのです。
おもろない文体は、純粋な要素で成り立っていれば成り立っているほどおもろないともいえるんです。
これ、自分が目指していた簡潔な文章とは真逆の考え方です……。
なぜ私は味気ない、そっけない、遊びのない文章を目指していたんでしょうね。
◎文体でチェックしたいポイントは3つ
そして、文体でチェックしたいポイントは3つあるそうです。
自動的な、オートマティックな言葉遣いになっていないか
ひたすら珍奇な言葉を求めるんじゃなくて、古さもあって、自分がその言葉をどこまで本当に理解して使っているか
オリジナリティに拘泥しないこと
無自覚に定型文を使っていないか、また、言葉の持つさまざまなバックグラウンドを理解したうえでその言葉を使用しているのか……。
こちら私が簡単にまとめてしまいましたが、本来はもっと奥行きのある話だと思います。
ただ私が特に興味を持ったのは3つ目でした。
オリジナリティに拘泥しないこととは。
たとえば創作中は本を読まないようにするとかして、誰かしらの何かしらの影響から自分を遮断する心構え……そんなものは必要ないと言っているのです。
誰かに憑依されることを恐れない。真似を恐れない。それは盗作するということではなく、その人の影響を受けることを恐れない。
前述したように、私はいまこの文章を書いていて、かなり町田康さんの影響を受けているのですが(伝わらないかもしれませんがそうなのです)、そうして出来上がったこの文章が何かニセモノであるかのように扱う必要はないということなのでしょう。
とても心強い思いです。
とはいえ私個人としては、町田康さんの文体の面影があるなんて言われたら、光栄ですし、舞い上がってしまいますけどね。
ついでにいうと、特定の作家になりきって書くのは意外とおもしろかったりしますよ。
ここまでお読みいただき、ありがとうございました。
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