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30年ぶりに読んだ山田詠美作品。「三頭の蝶の道」の感想文|時空ラボ

久しぶりに山田詠美さんの小説を手に取りました。
たぶん30年ぶりくらい。

Wikipediaで確認したところ、「ベッドタイムアイズ」「ソウル・ミュージック・ラバーズ・オンリー」「風葬の教室」「熱血ポンちゃん」「ぼくは勉強ができない」「4U」など、1997年ごろの作品まで追っていたようです。

もうそれらの内容のほとんどを忘れてしまいましたが、私は当時かなり山田詠美さんのファンだったと思います。

しかし「三頭の蝶の道」(山田詠美)には、少し戸惑いを覚えたのも正直なところです。



◎個人的な評価

★★★☆☆
偉大なる3人の女性作家、河合かわい理智子りちこ、高柳るり子、森羅しんら万里まりが死を迎え、その人となりを編集者や作家が振り返るという趣向の小説です。実在にモデルとなる作家がいるようで(ネットで調べれば出てきます)、山田詠美さんらしき作家も登場します。

◎「三頭の蝶の道」の紹介

河合理智子、高柳るり子、森羅万里は、同時期に活躍した作家です。
当時は「女流作家」という扱いにくくられ、「女流文学」は男性の作品より劣るという風潮がありました。

そのような中、3人は共闘するというよりも、渦巻く愛憎で結びついていたようです。

本小説は、それぞれの作家が亡くなったあと、深く関わっていた作家や編集者が、河合理智子、高柳るり子、森羅万里の思い出を振り返り、偉大な作家の人となりを明るみにしていきます。

作家の生き様を描いた話は私にとって興味深く、この「三頭の蝶の道」も楽しみに読み始めたのですが……。
山田詠美さんの作品ってこんな感じでしたっけ。

◎読み始めから気になったこと

本書の第一印象は、冒頭から登場人物の数が多いというものでした。
はじめの2ページで計6人もの作家や編集者が現れます。

  1. 河合理智子

  2. 鈴木しょう子:河合理智子と交流を続けてきた作家。86歳

  3. 玉川桜子:同じく交流を続けてきた作家

  4. 山下路美ろみ:同じく交流を続けてきた作家

  5. 林田さき:編集者

  6. 間宮まみや乃里子のりこ:咲の先輩編集者

このことに不満があるわけではなく、何か読者を振るい落とすような、あえて不親切なタイプの小説なのかな? と思っただけです。

河合理智子の葬儀(告別式)が質素に執り行われたという寂しい描写の中、名前の付いた人物が故人も含め6人も登場したので、少し面食らったところがありました。

◎この文章は意図したものなのか?

一方で、文体はやや過剰に思えるほど古風というか、何か紋切り型の言い回しが目に付きます。
例えば、以下のような文章です。

鈴木しょう子は、棺に覆い被さるようにして号泣していました。ちょっとお、なんで先に逝っちゃうのよお! そう叫んで遺体の頬を撫でる様子は、(略)本当に、その死を悼んでいるのが伝わってくるのでした。

どうでしょうか。
「棺に覆い被さる」「なんで先に逝っちゃうのよお!」「遺体の頬を撫でる」は、あり得るのかしら。

この小説が、事実とフィクションの境界を曖昧にしているからこそ、こうした細部が気になってしまいます。

ただ、「棺に覆い被さる」「なんで先に逝っちゃうのよお!」「遺体の頬を撫でる」が、事実をベースにしたものなら、私の勘ぐり過ぎですね。

とはいえどうしても、以下のような紋切り型の表現が気になってしまいます。

森羅万里は、ぺろりと舌を出しました。

◎「三頭の蝶の道」が放つ強烈な個性

この「三頭の蝶の道」は、まずオーディオブックとして配信されたものらしいですね。
書籍として発行されたのはそのあとだといいます。
こうした前後のいきさつが、文章表現に影響を与えたのかもしれません。

3人の女性作家の生き様を蝶に見立てて描いた本書からは、山田詠美さんが後世に残しておきたいものをはっきりとくみ取ることができます。

女流作家が女性作家として地位を確立していく過程においては、河合理智子、高柳るり子、森羅万里に限らず、女性作家は強烈な個性を身にまとって相対する必要があったのでしょう。
同業者のお見舞いに、鉢植えをプレゼントしたなんてエピソードも出てきます。

そうした意味で、本書のやや直球的な表現は、強烈な個性を際立たせる術だったようにも思えてきました。

私としては30年ぶりの山田詠美作品に戸惑いを覚えてしまいましたが、自分が変わったのか、山田詠美さんが変わったのか……。
どこかで過去の作品を振り返ってみるといいかもしれませんね。


ここまでお読みいただき、ありがとうございました!
以下のマガジンでは、いろいろな書籍の感想文をまとめているので、よろしければ覗いてみてください。


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