「NUDGE 実践 行動経済学 完全版」をオススメしたい理由とは|時空ラボ
私たちの日常は、大小さまざまな選択・行動によって占められています。
しかし、それぞれ実際に選んだ行動は、果たして本当に合理的な判断に基づいたものなのでしょうか?
「NUDGE 実践 行動経済学 完全版」を読んで、なぜ私はフリーアドレス制のオフィスでいつも同じ席に座るのか……といった些細な習慣に、あらためて気付かされました。
◎個人的な評価
★★★★☆
行動経済学によって得られた知見を応用するための方法「NUDGE」(ナッジ)について解説した書籍です。464ページありますが、エピソードが豊富なので行動経済学の入門書として最適に思えます。
◎「NUDGE 実践 行動経済学 完全版」の紹介
意外と私たちの意思決定は、直観的で、感情的で、バイアス(思考の偏り)に影響されています。
個人的に興味深く思ったエピソードが、アメリカで、銃で殺された人の数と銃で自殺した人の数を調べたときの調査結果の話でした。
直観的には、殺された人数の方が多いように思ってしまいますね。
しかし実は、自殺者の数は他殺者の約2倍にも上るといいます。
つい他殺者の方が多いと思ってしまうのは、世の中では銃で殺された人の報道が多いことから、私たちは自殺よりも他殺の方を思い浮かべやすくなっており、考え方にバイアスがかかっていたのでしょう。
皮肉なことに、人はたいてい「自分の家族を守りたい」と思って銃を購入しますが、家族の誰かが自殺する確率を押し上げる可能性の方が高いというわけです。
「ナッジ」(NUDGE)とは、何かを強制するのではなく、人々の行動パターンを利用して「そっと後押し」することにより、より良い選択が行えるように誘導する手法です。
著者の一人、リチャード・セイラ氏はノーベル経済学賞を受賞したとのことで、本書の信頼性も高いといえるのではないでしょうか。
◎「NUDGE 実践 行動経済学 完全版」の感想
過去にも私は、何冊か行動経済学に関する本を読んだことがあるのですが、本書「NUDGE 実践 行動経済学 完全版」は理論だけでなく、具体的な事例が多いのが特長といえます。
私たちがクレジットカードでお金を使いすぎたり、サブスクリプションサービスを解約し忘れたり、医療保険の契約時に悪い選択を取ったりするのは、なぜなのでしょうか?
こうした行動の一つひとつに説明が付くことが、本書の面白いところだと思いました。
一方で、私たちの行動パターンを悪用するという考え方が生まれることも容易に想像できますね。
そのことを本書では「スラッジ」と呼んでいますが、手間や時間をかけさせるなどの障害によって、私たちに特定の行動を起こしにくくさせるわけです。
例えばサブスクリプションサービスの中には、解約する手順が分かりにくかったり、手間がかかったりするものがありますが、これは典型的なスラッジのケースといえるでしょう。
ほかにも「NUDGE 実践 行動経済学 完全版」には、家電の購入時に保険に入るべきか?といった疑問への模範回答などが載っていて、いろいろと興味深いですよ。
◎「NUDGE 実践 行動経済学 完全版」をオススメしたい理由
「NUDGE 実践 行動経済学 完全版」は豊富なエピソードによって、そこから得られる示唆を分かりやすく伝えてくれます。
意外と日常の中にナッジまたはスラッジが紛れ込んでいるので、このナッジが私にこういう行動を取らせたのか、このスラッジのため私はこの行動を取らなかったのか……といったことに気付けるようになるのではないでしょうか。
いずれにせよナッジの効果は「そっと後押し」する程度のものではありますが、公共の政策から企業のマーケティングまで、活用の応用範囲は広いように思いました。
◎「ファスト&スロー」もオススメ
行動経済学に関しては、その理論について詳しく解説した「ファスト&スロー」も読み応えがあります。

この著者であるダニエル・カーネマン氏(やや変わり者みたい?)もノーベル経済学賞を受賞しており、「NUDGE 実践 行動経済学 完全版」の著者とは交流があるそうです。
「ファスト&スロー」では、思考の働きには速く直感的に考える「システム1」と、ゆっくりじっくり考える「システム2」があり、これによって認知バイアス(判断の偏り)が生まれることを説明しています。
私は本書を読んで、「なんで自分はいつもこんなに考え込むんだろう」という疑問に対するヒントが得られました。
きっと「システム2」を使いすぎていたんでしょうね。
ここまでお読みいただき、ありがとうございました!
以下のマガジンでは、いろいろな書籍の感想文をまとめているので、よろしければ覗いてみてください。
