「乱歩と千畝」をオススメしたい理由とは|時空ラボ
探偵作家の江戸川乱歩と、外交官の杉原千畝(ちうね)。
この2人の生涯を1冊の本で追うというのは、本来ありえません。
「乱歩と千畝」(青柳碧人)ならではの読書体験でしょう。
◎個人的な評価
★★★★☆
愛知五中および早稲田大学の出身という共通点を基に、江戸川乱歩と杉原千畝の交錯を描いた物語です。千畝は「センポ」という呼ばれ方もしていたようで、ランポとセンポという組み合わせもいいですね。
◎「乱歩と千畝」の紹介
古本屋などを営む平井太郎(のちの江戸川乱歩)と、英語の道に進みたくて悩んでいる学生時代の杉原千畝が、早稲田のかつ丼やで出会います。
実はこれが最初の出会いではなかったのですが、そのときの描写はとても印象的です。
作者も特に力を入れたシーンではないでしょうか。
恥ずかしながら私は杉原千畝のことを知らず、先入観ゼロで本書を読んだので、ユダヤ人にビザを発行したエピソードでようやく名前と業績が合致しました。
江戸川乱歩の友人として描かれていたのは「命のビザ」の人だったんですね。
江戸川乱歩も杉原千畝も紆余曲折しながら各々の道を歩んでいくわけですが、北里柴三郎、横溝正史、松岡洋右、松本清張、山田風太郎といった豪華な脇役が物語を支えており、読み応えがあります。
◎「乱歩と千畝」の感想
ときに江戸川乱歩は、内的な要因から前に進めないでいます。
一方で杉原千畝は、外的な要因から前に進めないでいます。
対照的に描かれていた2人が一つの方向を目指したとき、思いもかけないシナジーが生まれるのですが、そこは私も心を揺さぶられるものがありました。
早稲田での出会いが、この出来事につながっていくとは……。
そう、本書ではすべてが結びついているんですよね。
◎「乱歩と千畝」をオススメしたい理由
「乱歩と千畝」では、同時代を生きた2人の主役を交錯させつつ描き切った作者の力量に感心させられます。
それぞれ全く別の道を歩んでいるので、単に出身校が同じというアイデアだけで1冊にまとめ切るのは難しいのではないでしょうか。
しかも、あえて複雑な時系列で物語を進めている箇所がいくつかあり、それが別のところで破綻なく結びついています。
私は何度もページを戻り、どの話がどこにつながっているのか確認しながら読み進めましたが、そのたびに納得させられました。
そういう読み方ができるのは、本書の面白いところですね。
それにしても早稲田にあったという三朝庵のカツ丼、ぜひ食べてみたかったです。
ここまでお読みいただき、ありがとうございました!
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