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「ババヤガの夜」をオススメしたい理由とは|時空ラボ

英国推理作家協会賞(ダガー賞)翻訳小説部門を受賞したというニュースから、恥ずかしながらはじめて「ババヤガの夜」という作品と、王谷晶さんという作家のことを知りました。

ただ本書はミステリー小説といえるのか……。
どちらかというとハードボイルド小説の要素が強いように思えます。
たぶん犯罪小説という位置付けなんでしょうね。

暴力的な描写が印象的な作品ですが、これまで読んできた同タイプの小説とは異なるところもあり、それが気になります。



◎個人的な評価

★★★★☆
新藤依子という喧嘩の強い女性が主人公のハードボイルド(?)小説です。新藤がヤクザの娘である尚子を護衛するという話なのですが、あっという間の展開でした。

◎「ババヤガの夜」の紹介

歌舞伎町、ヤクザ、暴力……といったワードから、典型的なハードボイルド小説だと思いました。
主人公が女性であること以外は。

新藤依子は新宿で喧嘩をしていたところをヤクザに確保され、暴力団の会長が溺愛する娘、尚子のボディガードを引き受けることになります。

その過程でもひと悶着あるのですが、たいていのハードボイルド小説で主人公は不承不承ながら依頼を承諾するケースが多いことから、このくだりはお約束といえるでしょう。
噛み合っていなかった新藤と尚子が徐々に絆を深めていく流れ、そして尚子が待ち受ける過酷な未来も想定通りです。

では、「ババヤガの夜」が他のハードボイルド小説と一線を画しているのは、どういう点にあるのでしょうか。

◎「ババヤガの夜」の感想

本書はハードボイルド小説の体でありつつ、実は目指すところがまるで異なります。

自分もそれほど同ジャンルに詳しいわけではなく、いま思い出せるのは「ブルース」(花村萬月)、「新宿鮫」(大沢在昌)あたりでしょうか。
その多くでは面子だったり、しがらみだったり、復讐だったり、信念だったり……そんな動機から主人公が巨大な敵に立ち向かいます。

しかし新藤と尚子は「理不尽からの解放」を求めるのです。
彼女たちのやり方で。
私は、そこに本書の面白さが凝縮されているように思います。

ベースには女性同士の連帯(シスターフッド)があるのですが、そのストーリーに意外な仕掛けが用意されていました。
(物語に破綻がないか? つい何度も読み返してしまいました)

そういえば、本書のこの仕掛けはミステリー的といえなくもないですね。

◎「ババヤガの夜」をオススメしたい理由

確かに「ババヤガの夜」の特徴として、暴力的な描写が挙げられます。
とはいえ暴力的というと、私はつい花村萬月さんの作品を思い出してしまうのですが、それと比べると本書はまだ一線を越えていません。

その代わり本書はハードボイルド小説という枠に収まらない複雑性を含んでいるように思います。
これは決してハードボイルド小説を卑下しているわけではなく、単なるカテゴライズの話です。

私は「ババヤガの夜」に対し、ハードボイルド小説のつもりで読んでいたけど、いつの間にか別の場所に連れていかれていた……そんな読後感を持ちました。

ちなみに「ババヤガ」とは、スラブ民話に登場する魔女を意味するらしいですが、本書における「鬼婆」を指しているようですね。

あと、カバーアートの作者は寺田克也さんで、とても力が入っています。
左下のドーベルマンの表情は、どの場面なのかな……?


ここまでお読みいただき、ありがとうございました!
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