「流血マルチバース」をオススメしたい理由とは|時空ラボ
孤島、龍神の詩、見立て殺人、記憶喪失……。
こういうワードを散りばめられてしまうと、横溝正史のような世界観が想起されませんか。
しかもシリコン製っぽい覆面を被った人物も登場するのです。
「流血マルチバース」(五条紀夫)は、さらに並行世界という要素を掛け合わせた、チャレンジングな小説に思えました。
◎個人的な評価
★★★☆☆
物語が途中で3つに分岐する小説です。ジャンル的にはSFミステリーともいえそうですね。かなりチャレンジングな作品でしたが、作者の試みはうまくいったのか。読了後は、あらためて「まえがき」を読み返してみてほしいです。
◎「流血マルチバース」の紹介
物語は、作家である著者が横浜大桟橋で、異様な風体の女性と出会うところから始まります。
本書はその女性から聞いた奇妙な話を基に紡いだ小説という体裁を取っており、ストーリーも著者によるメタ視点から語られます。
やや古風な語り口が、横溝正史を思わせる世界観にマッチしていますね。
「流血マルチバース」というタイトルも刺激的です。
話としては、高知県の土佐清水(市?)から南に50海里にある無人島、龍穴島を舞台に連続殺人が発生するというもので、物語が途中で3つに分岐するのが大きな特徴です。
その3つは、それぞれ孤島ミステリー、殺戮サバイバル、並行世界SFという味付けがされており、そうした荒唐無稽さを受け入れられるかが、本書を楽しめるかどうかの線引きになりそうですね。
◎「流血マルチバース」の感想
読んでいて特に期待したのが、この島に古くから伝わる4首の詩歌「龍神の詩」です。
どのように見立て殺人が進められ、それが3つの並行世界でどう交わるのか……とても想像が膨らむ小説でした。
見立て殺人って、まさに横溝正史ですよね。
個人的には大好物です。
ただ、本書はかなり意欲的で、最後まで楽しめる作品だと思うのですが、やや人を選ぶかもしれません。
とはいえマルチバース(多元宇宙論の考え方)を取り入れ、1つの作品内でミステリー、サバイバル、SFを書き分けるこの試みには、さらなる可能性を感じました。
五条紀夫さんの小説は初めて読んだのですが、これは癖になりそうです。
この作家さんはもう少し追ってみたく思います!
ここまでお読みいただき、ありがとうございました!
以下のマガジンでは、いろいろな書籍の感想文をまとめているので、よろしければ覗いてみてください。
