「Self-Reference ENGINE」をオススメしたい理由とは|時空ラボ
「祖母の家を解体してみたところ、床下から大量のフロイトが出てきた」
なぜか、頭の中に絵が浮んできませんか?
「Self-Reference ENGINE」(円城塔)には、時間・空間を超越した、別の秩序に翻弄される楽しみがあります。
◎個人的な評価
★★★★☆
本書はプロローグ、20の短編、エピローグが収録されており、それぞれが緩く組み合わされた長編と捉えることもできます。ジャンルとしてはSF小説のようですが、そうした枠に収まらない、文学的な読み方も求められる一冊といえます。
◎「Self-Reference ENGINE」の紹介
「Bullet」「Box」「Ground 256」と題された短編から、それぞれテキストを抜き出してみましたが、いかがでしょうか。
私たちがこれまで拠り所にしてきた秩序が、一瞬で揺さぶられてしまいます。
リタは未来から撃たれた
一年に一度、その箱をどこかの方向へ倒し中央へ戻す、それだけが我が家に伝わる奇妙な家法だった
本棚はまだ天井から生えてくる途中のようで
「Self-Reference ENGINE」では、こうした物語を数学的、論理的、理系的ともいえる描き方で紡いでいます。
そこが本小説の醍醐味といえるでしょう。
ほかにも靴下のフェティッシュな話、巨大知性体との時間を超えた戦闘の話、日本文学という謎の言語を解読する話などが載っており、ひと言でまとめるのは難しい一冊だったりします。
◎「Self-Reference ENGINE」の感想
個人的に気になった作品は、前述した「Box」という短編なのですが、皆さんはからくり箱って知っていますか?

箱根の伝統工芸品である寄木細工には、定められた手続きに従って面を動かしていくと蓋が開く仕掛けが施された「秘密箱」というものがあります。
これはかなり緻密に作られていて、開けるまでの過程が面白いのですが、中には14回の手順を踏まないと開かない箱もあるみたいですね。
本書で登場する箱も、一定の手順で転がすことによって蓋が開くといいます。
一年に一度、身内が集まって箱を転がす……ただ、それだけ。
特に計画性もありません。
蓋が開くまでの道のりの遠さと、目的が薄れ儀式化した行為に、壮大さと卑小さが同時に感じられ、妙に引き付けられました。
◎「Self-Reference ENGINE」をオススメする理由
「Self-Reference ENGINE」では、特に時間をテーマにした内容が目立ち、SF的な話がロジカルに展開されています。
文学に論理的・数学的なアプローチを組み込んだともいえるこの一冊は、それだけに文系的な(感覚的な)読み方も求められ、人によってはやや難解な小説に映るかもしれません。
私は今回、初めて円城塔氏の作品を読んだのですが、少々変わった読書体験をもたらしてくれたように思います。
不思議な秩序だけど、不条理ではない……。
これは癖になりそうですね。
ここまでお読みいただき、ありがとうございました!
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