ほるもん文化3『在日朝鮮人が選挙に行く日』(新幹社)を読む①
リサイクルコーナーでひっそりと

取材先で調べものと休憩がて公立図書館に寄ったところリサイクルコーナーを発見。何か掘り出し物がないかと漁ってみますと『ほるもん文化3 在日朝鮮人が選挙に行く日』(新幹社)というムックがありました。1992年に刊行された本でNPO法人神戸定住外国人支援センター・金宣吉理事長、作家の金重明氏が編集委員として参加しています。
一見して朝鮮総連系のプロパガンダ本かと思いましたが、これが非常に味わい深い内容でした。
基本的には参政権獲得を訴える活動家グループの論壇・文芸誌といった内容です。もともと在日コリアンの参政権をめぐっては朝鮮総連は慎重・反対という立場、民団が推進と大別できます。
本書は総連、民団の党派性に寄らず比較的、自由に主張しています。
金重明氏の強烈なパンチ
戦前の記録や国籍問題など資料的にも興味深い記事があるので、おいおい照会していきます。本書は在日コリアンの権利闘争の記録でもありますが、同時に「在日とは」という自問自答にもなっています。
特に金重明氏のあとがきは鮮烈でした。
この地球上で、単一民族幻想という邪悪な夢に、いちばん酔いしれているのは朝鮮人ではないかと私は思っている。たとえば、大韓民国における外国人に対する差別待遇や「帰化」制度を眺めると、日本政府や日本社会のやり方が可愛らしく思えてくるほどだ。
また多摩川の朝鮮人部落に迫った「0メートル0番地――戸手河川敷の人々」を寄稿した金栄氏も在日社会を批判しています。
差別撤廃を絶叫しながらも、実は民族差別以外の差別に無頓着という在日の〝活動家〟にうんざりしている。そろそろ我々も、自身の差別性にこそ目を向けるべきではないだろうか。編集に顔を突っ込むようになったからには、少なくとも女性として言えることは大いに発言したいと思っている。
在日コリアン関係の出版物はおおかた学者、ジャーナリストの類による歯が浮くような礼賛が目立ちます。ところが本書の編集委員たちは日本社会と同時に在日社会へも一石を投じていました。
刊行は1992年。インターネットはない時代です。
逆に今の時代、左派の先鋭化が目立ちます。在日コリアン当事者であってもこうした自己批判は日本人シンパから袋叩きにされるかもしれません。
