「キャディさんが2度うつむく奇跡」~わたしの恥ずかし自分史×エピソード⑧
「バコッ!」
「あ、ありえない…」
ココロの中で呟く。
ある夏、千葉県の某ゴルフ倶楽部。
最終の18番ホール。
パー5のバーディー狙いのパッティング。
長さは約40センチ。
「バコッ!」
こともあろうに、パッティングでダフッた音。
ダフるとは…
芝に振り下ろしたクラブが引っかかる、穴をあけるような、よくあるミス。
ボールを打たずに、地球を打つ。それがダフり。
ダフッたおかげで、残り40センチのバーディーパットが、一瞬で残り2mのロングパット残しへ。
天国から地獄
非公開ながら、今回のゴルフでは多少「握って」おり、1打の差で天国から一気に地獄行の特急列車にかけこみ乗車。
今、ジブンで地獄の窯のフタを空けてしまった…
通常、アイアンショットでダフることは、アマチュアにとっては当たり前、1ホールに一度ぐらいはダフることだってある。
が、しかし、バッティング(グリーンの上でボールを転がすだけの道具)でダフることは、まずあり得ない。
それほど、この1打が大切で、重要で、重圧も計り知れないという訳だ。
セミの鳴く音。
残り3人の「にんまりした顔」。
目のやり場を失い、一斉に下を向くキャディーさん。
「うぇ~ん!」走り出すオレ。
目の前の池に、握っていたパターを一気に投げ込む!
「もう、ゴルフなんてやめたぁ~っ!」
あっけにとられ、グリーン上で硬直した3名とキャディさんたち。
女神降臨
と、その時、池の中心から「ゴボゴボ~」と音がしたかと思うと、水しぶきの中から「白いドレスと頭に王冠らしき装飾を施した女神?」が現れた!
その女神がワタシに問いかけた。
「これは、あなたが落としたパターですか?」
見ると、金色に光る、見るからに田中貴金属製?と思われる純金製のパターが一本。
「いえ、違います。これはボクのぢゃないです。」
すると、その女神は金のパターを持ったまま、「ゴボゴボ~」と池の中へ。
唖然とする我々。お互いに顔を見合わせる。
と、再び、池の中心から「ゴボゴボ~」と音がしたかと思うと、水しぶきの中から、また先ほどの女神が現れた。
その女神がワタシに問いかけた。
「これは、あなたが落としたパターですか?」
見ると、今度は銀色に輝く、見るからにプラチナか純銀製と思われるパターが一本。
「いえ、違います。これはボクのぢゃないです。」
女神は銀色のパターを持ったまま、ふたたび「ゴボゴボ~」と池の中へ。
結末は決まっている!はず…
グリーン上から池の淵まで集まった3名とキャディーさん。
全員が…ワタシをみながら「ウンウン!」とうなづく仕草。
ワタシも含めて、このシチュエーションには、共通の既視感。
最初に金でしょ、んで次が銀でしょ、最後に自分のが出てきて…
「あ、それです!それがワタシの斧(オノ)です!」
女神が「お前は正直者だ」と感心して、ジブンの斧の他に、金と銀の斧を授かる…だったよね。
「話の流れはわかってるよね…次、来るよ。」と3人。
「お客さん、ここ、大事だからね…」とキャディさん
「ここはダフっちゃダメよ!」
と、嫌な事を思い出させてくれるキャディさん。
全員が固唾をのみながら、池とボクを交互に見つめている。
「大丈夫!」
という意識を目線だけで彼らに送る。
と、みたび、池の中心から「ゴボゴボ~」と音がしたかと思うと、水しぶきの中から、また先ほどの女神が現れた。
最終日、最終18番ホール、グリーン勝負!
その女神がワタシに問いかけた。
「これは、あなたが落としたパターですか?」
見ると、今度こそ正真正銘、ボクのパター。ゴルフパートナーで5000円そこそこで買った、「スコッティキャメロン」。
「そ、それです!ボクが落としたパターはそれですっ!」
女神は「スコッティキャメロン」を持ったまま、しばらく我々を見つめている。
「こんなもん上から投げ込んだらアブね~ぢゃねーか!気をつけろ!タコがぁ~」
「?!」
今までの無表情でおしとやかな表情とはうって変わって、般若のような形相でワタシにそう吐き捨てると、「ゴボゴボ~」と池の中へ。
静 寂
波紋がようやく収まり、湖面に静寂が戻る頃に、ようやく我々全員が我に戻った。
振り向くとキャディーさんが、ため息をつきながらうつむきながら、グリーン近くの芝生を、つま先でつついている。
「お客さん、もってないね…またダフッちゃったね…」
そう言われているような気がした。
いたたまれない…
穴があったら…入れたい。ゴルフだけにね。
穴があったら入りたい!
ジブンのほうが、「ゴボゴボ~」と池の中へ沈んでいきたい!
「ジリジリジリ~!」
目覚ましの音だ…
今日は3月の6日、金曜日。
女神が現れるところからは、ボクの夢、妄想の世界の出来事。
その前まで、池にパターを投げ込んだのは事実。
そして、それ以来約25年間、クラブを握ることをやめたのも事実。
お後がよろしいようで。
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