ショートショート『数字に殺される』
僕の名前は櫛田敏郎(くしだとしろう)。
名前に「四(し)」と「九(く)」の音が三つも潜んでいる。 母は縁起のいい名前だと言ったが、僕には呪いにしか思えなかった。
とにかく数字が怖い。4(死)と9(苦)をみると、いつも不運がやってくる。
だけど、遭遇する的中率は半端ない。
朝、家を出る。
マンションのエレベーターが9階で止まっている。
通勤途中、スタバでカプチーノを注文する。受付番号は404。
僕はコテコテの文系で、数字とは無縁の人生を選んできた。
でも普通に歩いているだけで、ヤツらは容赦なく襲ってくる。
スマホに目をやると9:04になっていた。
去年、入社した会社で、ロッカーが割り当てられた。
番号494
思わず叫び声をあげてしまった。
「大丈夫ですか」
通りかかった女性社員が足を止めた。
さすがに「数字が飛び込んできて、、」とは言えなかった。
その日、飼っていたカブトムシが死んだ。
このままじゃ、いつか数字に殺される。
カウンセリングに行くことにした。
「4や9を見るとどうなりますか?」
「悪いことが起きます」
「具体的にどういったことですか?」
「自転車がパンクしたり、ラーメン屋で一時間並んで直前で売り切れるとか…」
先生は、じっと聞いていた。
そして、こう続けた。
「数字があなたを襲っているのではありません。あなたが数字を探しているのです」
わかった。
数字をみるのはやめよう。
アナログ時計で時間を確認し、スタバにも近づかなくなった。
1週間。
4も9も見なかった。
課長からは、作成した資料を褒められた。
先輩に昼飯もおごってもらった。
今週は順調だ。
「勝った……!」
路上で思わずガッツポーズをした。
ふと、見上げた街頭ビルの大型モニターが目に入る。
《本日の熱中症警戒アラート 39.4℃》
「ウソだろ……」
その瞬間、僕はその場に崩れ落ちた。
そこへ通りかかった見知らぬ通行人が、僕を見下ろしながら呟く。
「……この人。熱中症かしら」
今回よしまるさんの【さぶいぼ選手権】に参加しました。
こういうお題のある企画に参加させていただくのは初めてです。
身の毛のよだつ内容だったかはわかりませんが、私自身、ある数字が苦手で、別に不運はやってきませんが、避けるようにしています、笑。
でも、意識すればするほど、その数字に遭遇してしまうんですよね。開いたページ数だったり、記事でいただいたスキの数だったり。
そこから、今回のストーリーに至りました。
私もその数字を克服したいです、笑。
ここまで読んでいただき、ありがとうございました!
