vSphere基盤における「ストレージ」と「物理ネットワーク」の境界線定義 〜LUNの概念から物理結線まで〜

最近何かと話題なVMwareですが、多くの日系企業で商用展開が難しくなったということで仮想基盤を移行する企業が増えているということです。
とはいえ、まだまだVMware基盤に頼る企業は多いということで、また入りとしてもベテランになっても使われる確率は依然として高いと思われます。
今回もそんなベストプラクティスを語っていきたいと思います。

さて、サーバインフラの設計・構築において、エンジニアが最も混乱しやすいのが「ストレージの接続形態」と「物理ネットワークの収容設計」です。

特に仮想化基盤(vSphere)においては、ESXiが見るストレージ(データストア)と、ゲストOSが見るストレージ(ファイルサーバ等)の区別が曖昧になりがちです。また、サーバ筐体の選定が終わった後、ネットワークチームと行う「物理レベルのすり合わせ」も、プロジェクトの遅延要因となりやすいフェーズです。

本稿では、以下の2点を主軸に、インフラエンジニアとして押さえておくべき設計の要点を解説します。

  1. データストアと外部ストレージ(NFS/SMB)の明確な違いとLUNの概念

  2. サーバ調達後のネットワーク物理設計(ポート収容、メディア種別、MTU)


1. 「データストア」と「外部ストレージ」の決定的な違い

「ストレージ」という言葉は広義であり、文脈によって指すレイヤーが異なります。vSphere環境においては、以下の2つを明確に区別して設計する必要があります。

① データストア(Datastore):VMの「土地」

  • 接続主体: ESXi (Hypervisor)

  • 用途: 仮想マシンを動かすためのシステム領域。仮想ディスクファイル(.vmdk)や構成ファイル(.vmx)が格納される場所です。

  • プロトコル: FC, iSCSI, NFS (ESXi用)

  • イメージ: 家(VM)を建てるための「土地」です。土地がないと家は建ちません。OSが起動するためのCドライブやルートパーティションは、必ずこのデータストア上に置かれたVMDKファイルの中に存在します。

② 外部ストレージ(Guest Mount):VMの「倉庫」

  • 接続主体: ゲストOS (Windows / Linux)

  • 用途: OS起動後にマウントするデータ共有領域。業務データ、バックアップファイル、ユーザーのドキュメントなどが置かれます。

  • プロトコル: SMB (CIFS), NFS (汎用)

  • イメージ: 家(VM)から出かける「貸倉庫」です。OS自体はデータストア(土地)にありますが、アプリケーションがデータを書き込む先として、ネットワーク越しに倉庫(NAS)を利用します。

【設計のポイント】
「ファイルサーバを構築したい」という要件があった場合、ファイルの実体を「①VMDKの中(データストア上)に置く」のか、「②直接NAS(Isilon/NetApp等)に書きに行く」のかでアーキテクチャが全く異なります。大規模環境では②が選ばれる傾向にあります。


2. 「LUN(Logical Unit Number)」を直感的に理解する

ブロックストレージ(FC/iSCSI)を利用する際、必ず登場するのが「LUN」です。 初心者が躓きやすいこの概念を、物理的なイメージに落とし込みます。

LUNとは「切り分けられたケーキの1ピース」

エンタープライズストレージ(筐体)には、数十〜数百本の物理ディスク(HDD/SSD)が搭載されています。これを巨大な1つのプール(RAIDグループ)として扱います。

しかし、サーバに「このプール全部使っていいよ(例: 100TB)」と渡すことは稀です。 そこで、プールから必要なサイズだけ論理的に切り出します。

  • RAID Group / Pool: ホールケーキ全体

  • LUN: 1切れにカットされたショートケーキ

この「切り出された論理的なディスク」に番号(Number)を振ったものがLUNです。 サーバ(ESXi)から見ると、LUNは「1本の物理的なHDD」のように見えます。これをフォーマット(VMFS化)してデータストアとして利用します。

【なぜLUNを分けるのか?】
1つの巨大なLUNですべてを賄うと、I/Oが競合した際に性能劣化の原因となります。また、障害時の影響範囲を局所化するためにも、用途やクラスタごとにLUN(データストア)を分割するのが設計のセオリーです。


3. サーバ要件確定後の「ネットワーク物理設計」

サーバのスペック(CPU/Memory)が決まった後、ネットワークチーム(NW担当)との調整フェーズに入ります。ここで重要なのは「論理(VLAN)」の話をする前に、「物理(ポートと線)」の話を固めることです。

ポート収容設計(物理インターフェースの役割分担)

物理サーバには複数のLANポートがあります。これらを「どの用途で、どのスイッチに繋ぐか」を定義します。

  1. Management ポート (Mgmt/OOB):

    • 用途: ESXiの管理コンソール(vCenterとの通信)、SSH用。

    • 帯域: 1Gbps で十分。

    • 重要性: サービスが全停止しても、ここが生きていれば復旧作業が可能です。

  2. IPMI / iDRAC / iLO ポート:

    • 用途: ハードウェア管理(BMC)。電源OFF時の操作や、ハードウェア監視用。

    • 特徴: OSとは独立して動作します。通常、専用の管理SW(ToR)へ接続します。

  3. Service / Data ポート:

    • 用途: 業務通信(Web/DB)、ストレージ通信(iSCSI/NFS)、vMotion。

    • 帯域: 10Gbps / 25Gbps などの広帯域を使用。

    • 構成: 冗長化(チーミング/ボンディング)のため、必ず2ポート以上を使用し、別々のSWへ接続します。

P2P(Point to Point)と結線表

ここでのP2Pとは、「サーバの物理ポートと、スイッチの物理ポートの1対1の接続関係」を指します。 ラック図を見ながら、「サーバAのPort1は、スイッチXのPort5へ」といった具体的な「結線表(Port Map)」を作成します。これが間違っていると、現地作業で手戻りが発生します。
ま、しょっちゅう手戻りあるんですけどね。


4. 現場で飛び交う「物理・リンク層」用語の解説

調整会議で曖昧にしてはいけない、物理層の基本用語を整理します。

① メタル(Copper / RJ45)

  • 概要: 一般的なLANケーブル(UTPケーブル)。

  • 用途: 1Gbpsの管理ポートやIPMIで主に使用。10Gbps(10Gbase-T)でも使われますが、消費電力と発熱が高いため、データセンターの主回線としては減りつつあります。

  • メリット: 安価、取り回しが楽。

② SFP / SFP+ / SFP28(トランシーバ)

  • 概要: スイッチやNICのポートに挿入する「変換モジュール」。

    • SFP: 1Gbps対応

    • SFP+: 10Gbps対応

    • SFP28: 25Gbps対応

  • 光ファイバー(Optical): 長距離伝送が可能。SFPモジュールに光ケーブル(LCコネクタ等)を挿します。

  • DAC (Direct Attach Cable): ケーブルの両端に最初からSFPモジュールが固定されている銅線ケーブル。3〜5m以内のラック内配線で「安価・低遅延・低発熱」のため、サーバ・ToRスイッチ間で標準的に採用されます。

③ MTU(Maximum Transmission Unit)

  • 概要: 1回の通信で送れるパケットの最大サイズ。

  • 標準 (Default): 1500 bytes。インターネットや一般的なLANはこれです。

  • ジャンボフレーム (Jumbo Frame): 9000 bytes

  • なぜ重要か: ストレージ通信(iSCSI/NFS)やvMotionなど、大容量データを流す際、1500バイトずつ細切れに送るとCPU負荷が高くなります。9000バイトに拡張することで、ヘッダ処理の回数を減らし、スループットを向上させます。

  • 注意点: 通信経路上の「サーバNIC、物理スイッチ、ストレージ」全てで設定が合致していないと通信できません。


5. まとめ:要件定義から物理設計へのブリッジ

インフラエンジニアの価値は、カタログスペックを決めることではなく、「確実に動く物理実装」に落とし込む能力にあります。

  1. ストレージ要件: VMの起動領域(データストア/LUN)なのか、データ保存領域(外部ストレージ)なのかを区別し、プロトコルを選定する。

  2. ネットワーク要件: サーバの背面ポートを見て、IPMI、管理、サービスのそれぞれのトラフィックをどの物理ケーブル(メタル/光/DAC)で、どのスイッチに収容するかを図面化する。

この2点をNWチーム・ストレージチームと早期に合意形成することで、プロジェクトの手戻りは劇的に減少します。 物理層は地味ですが、ここがシステムの安定性を支える土台であることを忘れないでください。

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