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選んだつもりで、選ばされていたーカルト支配・私が私でなくなるまでー(6)

     異端なVacation①

私は夏の早朝の匂いが嫌い。

子供の頃は夏の朝が大好きだったのに。夏休みのラジオ体操…虫除けスプレーをかけてもらい、スタンプシートを首から下げて走って行ったっけ。


学生部から40年も経つのに、夏の朝は今でも体の奥がゾワゾワする。



「ハンカチ路程?何それ?」

夏休みが近づく頃、学生部で初めて夏休みを迎えるメンバーたちから、そんな言葉が飛び交った。

なんでも、統一教会系の福祉団体で『野の花会』という組織があり、その名前を使ってハンカチを売り歩くらしい。


「ハンカチ詰めるよー」

学生部長の掛け声にみんなが集まっていくと、色とりどりのハンカチが山のように置かれていた。
「わあ、綺麗!欲しいなー」
「私、この花柄が好き!」

その頃にはもう、頭の中も相当なお花畑が出来上がっている。
入教生活を送っていると世間との感覚がズレ、次第にその幅が広くなっていくのだ。


私たちは透明な袋にハンカチを三角や四角に折り畳み、綺麗に見えるように詰めて行った。

「訪問して販売する時には、このハンカチは障がい者が肘や足の指を使って折っていると言うように」
「はい、わかりました」


嘘をついて同情を買って販売しても、統一教会のためにお金を出してくれたら、その人の条件(徳)になる。
それを私たちは信じて疑わなかった。

この社会の法律は偽物で、人間は本来”天法(てんぽう)”に従って生きなければいけない。
天法に則る善悪の判断基準はメシヤである文鮮明だから、その代身であるアベルからの指示は絶対なのだ。
アベルが「カラスは白い」と言えば白い。それほど、一般常識は教会員にとって紙一枚の重さにもならなかった。



全部の袋詰めが終わり、いよいよ訪問販売が始まる。
肩掛けバッグにハンカチをどっさり詰め、アルミバンというバンドエードも、ハンカチが売れなかった人にせめて買ってもらえるように何個か入れる。
ハンカチセットは3000円。
バラ売りはしない。結構なお値段だ。


早朝6時。
ペアごとに出発する。
大概、駅前の吉野家で朝食の牛丼を食べ、電車に乗って任地に向かう。
任地の住宅地図を広げながら、緊張で心臓が飛び出しそうだ。
電車内の周りの人たちが羨ましい。
皆、いつもの会社や学校、または遊びに行くのだろう。
私たちはこれから夜遅くまで、ひたすら訪問販売…。
売れるだろうか、罵声を浴びせられないだろうか。


任地に着いたらペアで町内を囲い込む。1人は右、1人は左。
ぐるっと回ってまた出会う。

「体の不自由な方にご協力お願いします!このハンカチ、障がい者の方が肘や足を使って折ったんですよ」
『ええ?うそ。それでこんなに綺麗に出来るの?』
「嘘じゃないんですよ。心を込めて折ってくれたんです」
『そう…。じゃ一つ頂くわ』
「ありがとうございます!」


既に良心は麻痺して、何の痛みも感じない。
こうして毎日十数時間、献金のための活動に夏休みの全てを費やした。



統一教会の初期の頃は、学生も学校を辞めて献身したらしいが、私たちの頃から地上天国を作るためには学歴も大事、世界の指導者になれる学生を育てよう、という方針に変わってきた。

実際、のちの祝福(合同結婚式)で、大卒という条件で、日本人女性が韓国人男性と次々マッチングされた。
再臨主の国韓国に嫁ぐのには学歴が必要なんだ…と、何となく解せない気持ちになったものだが、そこに文鮮明の強い反日感情と男尊女卑の思想があった事は、教会を離れたつい最近になって気が付いた。


いくら、み旨と同じように学業もしっかり!と言われたところで、勉強を許されるのは試験前の2週間だけ。長期の休みも毎日前線では、実際献身生活と変わらない。
あくまでも個人の可能性を伸ばす将来のための学業より、今月のノルマ、今日の実績が全てだった。


        *****

今回もお付き合い下さり、有難うございました😌


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