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選んだつもりで、選ばされていたーカルト支配・私が私でなくなるまでー(19)

     自立への憧れ③

6500組の祝福(合同結婚式)が行われると発表されてから、私達は皆マッチングのための写真を撮り、ソワソワした日々を過ごした。

今回はほぼ国際祝福、特に韓日祝福が大半であろうと言われていた。
だが全体的に女性信者が多いため30代で未祝福の人が沢山いたし、
おまけに韓国に嫁ぐ人は四年制大学卒、という条件がついてからは、私の気分はほぼ蚊帳の外だった。

(相手が)決まった!決まった!と興奮しながら、ドヤドヤと合同結婚式参加の準備をしていたメンバーが去ってから、勝共の寮も一時的に閑散とした。


祝福騒ぎが落ち着いた頃、私は寮の食事当番(食当)の仕事を与えられた。
約20人ほどのメンバーの朝夕の食事を準備する。

寮は小高い丘の上にあったので、買い物はとても大変だった。
車を出してもらう事もあったが、大体は徒歩で、かなりの重労働だった。

私は原付バイクを買ってもらうことにした。
一度食当になると、2〜3年人事にならない事が多いので、効率の良い事は早めに始めたほうが良かった。



ずっと歩いて来た…
伝道も珍味も念珠販売も…
テクテク テクテク
重い荷物担いで汗を流して。


それが、どう⁉︎
私は今、風を切って走ってる!
髪がなびいてる。


この、今までとは違うスピード感が私には新鮮すぎた。

街が輝いて見えた。
どこまでも行ける気がした。


その頃私はプリンセスプリンセスの”ダイヤモンド”や、渡辺美里の”マイレボリューション”をカセットテープでよく聞いた。

夢を追いかける、輝く女性に憧れた。

♪金のハンドルで街を飛びまわれ
楽しむことに釘付け
ブラウン管じゃわからない
景色が見たい♪


カウンセラーを目指した10代の頃。教会にいる限りもう一度同じ挑戦は出来ないけれど、人事移動が少なくて自分で時間を管理しやすい食当の間に、何か出来ないだろうか。


私はお小遣いを貯めて、ポータブルワープロを買った。
高校の時英文タイプ部で、ブラインドタッチが出来るという事だけを頼みに、ワープロ検定を受けてみようと思った。

ワープロは今ではパソコンの中の一つの機能だけれど、当時は商工会議所のワープロ検定と言えば、就職にも役立つ貴重な資格だった。

数ヶ月後の検定を予約し、それまで人事になりませんようにと祈りながら、毎日10分必ず練習した。

そして四級、三級、二級と、一年以上を費やし制覇していった。



毎日コツコツ続ける勉強。
バイクでちょっと遠くのスーパーに足を伸ばしてみる。
走りながら好きな歌を歌う。
自分に少しずつ自信が湧いてくるのを感じた。
責任者の中には、資格資格って躍起になって!と揶揄して来る人もいたが、身に付けた自信は小さくても重みがあった。




“ピンポーン…”

「…はい」

『こんにちは。一心天助です』


ある時夕食の支度をしていると、教会の移動販売の魚屋さんが訪ねて来た。


「今度こちらを回る事になりました真田と申します。よろしくお願いします」

「あ、はい。食当の安室です。よろしくお願いします」



ーー数奇な運命が動き始めた。


        *****


今回もお付き合い下さり、有難うございました☺️



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