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エロビデ屋のFAXから産まれたホラーパンク・BAND③

Occult9 インタビュー③(聞き手:K.T.)
― 90年代半ば、大阪の雑踏と孤独のあいだで生まれた音

Occult9 の音には、説明できない“影”がある。
その影は、音楽的なルーツだけではなく、
当時の生活そのものから滲み出ている。

今回は、90年代半ばの彼の日常について聞いた。


──当時、どんな生活をしていたんですか?
「学校は単位さえ取れば良かったし、友達もいないですから……たまに講義に出るくらいで。
朝早く起きてバイト行って、夜もまたバイトしてました」

──意外ですが朝は早かった?
「早かったですよ。阪急で南森町って所にあった弁当屋に行ってました」

──ほか弁みたいな?
「全然違う。狭くて暗い雑居ビルの2階で、弁当作ってオフィス街に台車で売りに行くスタイル。ゲリラ的に(笑)」

阪急電車の朝の空気。
油の匂いが充満する仕出し弁当屋。
その“生活の重さ”が、彼の声の端にだけ残っていた。


──昼は何を?
「キックボクシングのジムに行ってました」

──ジムのあと?
「区役所で寝るか、パチンコです。バイトまで時間があるので」

区役所の固い椅子での仮眠。
パチンコ屋の騒音と煙。
どちらも“居場所ではない場所”だった。


──夜は?
「深夜までビデオ屋です」

──どんな店だったんです?
「狭い店です。ただの店番。客なんか来ない」

──TSUTAYAとかではない?
「フッキンビデオ(笑)」

深夜の蛍光灯の青白さ、
埃っぽい棚、
ほとんど客の来ない通路の静けさ。

Occult9 の“影”は、
こういう場所の空気とつながっている。


──天神橋筋商店街の近くに住んでいた?
「いいえ、結構遠い」

天神橋筋商店街の朝は、
段ボールを集めるおじさん、
レゲエのおっちゃん(今は絶滅危惧種)、
立ち飲み屋の活気、
昼の光に満ちた雑踏。

その賑やかさの中で、
彼はいつも“浮いていた”。

──賑やかな場所ですよね。
「そうですね。明るいです」

──その明るさは、どう感じていました?


「……自分とは関係ない感じです」

その一言で、
彼の20代の孤独がすべて伝わった。

雑踏の中で自分だけが取り残されていく感覚。
客観的に見れば見るほど、
さらに暗くなる日々。


──そんな生活の中で、Occult9 はどんな存在でしたか?
「唯一の自己表現です」

──唯一。
「はい。他に何もなかったので」

弁当屋の朝の匂い、
ジムの汗、
区役所の椅子の硬さ、
パチンコ屋の騒音、
フッキンビデオの深夜の静けさ。

その全部が、
Occult9 の音の“影”になっていた。


──音楽的な影響は?
「なんでも聴いてました。ハードコアも、ポップスも」

──ポップスというと?
「ジューシーフルーツとか、ビートルズとか」

──ビートルズはポップス?
「あまり詳しくないんで……」

ジューシーフルーツの“軽さ”と、
ビートルズの“構造”。
独りで過ごした時間の中で、その両方を並列に聴いていたという事実が、
Occult9 の奇妙なバランスを説明している。

寂しさだけでもない。
暗さだけでもない。
ただ静かに、必要なものだけが残っていく。


──今振り返って、あの生活は Occult9 にどう影響しましたか?
「全部です。生活が先で、音はそのあとです」

──影が先にあった?
「はい。影があったからこそのイメージと音」

その言葉は、Occult9 の本質を示している。

occult9---"4.4.8"

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