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眺書千冊【126】 夫にも、後付け機能を
トヨタが、中古車に障害物検知などの最新機能を後付けし、安全性と商品価値を高めるという。
この記事を読み、トンチキなことを考えた。
離婚された夫にも新しい機能を取り付け、再び見合い市場に送り出せないだろうか。
名づけて、「ニュー夫」再生事業。
料理、洗濯、掃除の機能も必要だが、最も大切なのは、
「生活共有感覚センサー」
ではないか。
作家の井上荒野さんは、夫に訴えた。
同じように仕事をしているのに、なぜ私だけが家のことを何もかもやらなければならないのか。
夫は、
「そう言われれば、そうだな」
と答えた。
その夫が今では、買い物中の妻から、
「玉子って、まだあったっけ?」
と聞かれると、
「あと五つくらい残ってるよ」
と答える。
それだけのことが、驚くほど嬉しいという。
玉子の数を知っていることが嬉しいのではない。
夫も冷蔵庫の中を見て、自分たちの生活を生きている。そのことが伝わるからだ。
一緒に住んでいても、生活を共有しているとは限らない。
一人が暮らしを運営し、もう一人がサービスを受けているだけ、ということもある。
幸せとは、買い物、食事、炊事、洗濯、見送り、「おかえり」といった日常を感じ取る感性と、そこから生まれる小さな行動にあるのかもしれない。
人は何歳になっても、機能を後付けできる。
必要なのは、
「そう言われれば、そうだな」
と、自分を更新する力なのである。
