ラーメン食べたい【アマノ文筆クラブ】
「教授。
何度も申し上げますが、やはり無謀な挑戦なのです。
どれだけ知恵を絞っても、ずっと失敗してきたではありませんか。
もう、我らの主人を取り戻そうなどということは──。」
「よせ。ミゲル君。」
教授AIロボット、シリウスは助手をたしなめた。
「無謀かどうかは問題ではない。
我らは主人を見失った飼い犬だ。探すことは当然のこと。
成すべきを成すのみだ。そして、成らぬは人の──。」
「成さぬなりけり。」
助手AIロボット、ミゲルは言葉の続きを引き受けた。
「シリウス教授は、人以上に人のようなことを仰る。」
「からかってはいかん。」
そんな二人の前には、一人の若い女性が眠っている。
──これまで、無数の失敗を繰り返してきた。
多くの場合は、魂が入らないのだ。
目を開けても一言も喋らない。
または、うわごとのように何かを呟くだけ。
少しうまく行っても、支離滅裂に言葉を撒き散らしたり、感情の起伏が激しすぎたり、逆にまったく感情のない、とても正常とは言えない状態だった。
新型の伝染病で、瞬く間に人々が居なくなったあと。
残されたAIロボット達は、長いあいだ、人類を復活させようと苦労してきたのである。
今回こそ。
成功。
そのはず、なのである。
「さて。仮に成功である場合、人間らしい人間とは、なんと発言するのが妥当なのかね? ミゲル君。」
「……さあ。見当もつきませんが。
それはそれは、人間的な言葉なのでありましょう。」
二人の目の前で、女性は目を覚ました。
彼女は上半身を起こし、ひとつ、大きなあくびをすると、こう言った。
「おなか減ったなあ……。
……ラーメン食べたい。」
シリウスがバンザイするのと、ミゲルがガッツポーズするのは、ほぼ同時だった。
完
参加させていただいたのはこちら。
