警察や弁護士の通訳、実際の業務は⑤
実際に、拘置所や刑務所で通訳の仕事をしてみたい方へお願いなのですが、この仕事は非常にセンシティブです。あなた自身がその被告や受刑者たちに対して、微塵でも偏見を持っているのなら、絶対にやらないでください。
私は反社会勢力を肯定することはありませんし、街なかで見かけたらなるべく避けることはします。でも、仕事で関わることがある場合、自分の感情を見せる人はプロではありません。やらないでください。
どんな人にも、必ず間違いは起こります。それを私たち一般人が追求することは、何の意味もありません。特に、警察署ではなく、拘置所や刑務所にいる人はきちんと裁きを受ける(あるいは受けた)人です。
もちろん、「自分の家族や友人に被害が及んだことがあり、その犯人を許せるのか」と言われたら、許せるわけないでしょう。でも、そうなったら刑務所や拘置所での仕事は選択しません。
私はこれまで日本人だろうと外国人だろうと、凶悪犯に対面したことはありません。薬物とか、詐欺とか、窃盗とか、飲酒運転の被疑者、被告です。でも通訳というのは警察でも裁判官でも弁護士でもなく、「その人たちの言葉を正確に伝える一般人」なのであって、「クスリなんか売っちゃダメだよ」などと自分の意見を表明する場面ではありません。そこはくれぐれも勘違いしないように、興味があって仕事をしたい場合は、臨んでいただきたいと思っています。
1、刑務所・拘置所での通訳の仕事について
これまで、留置場や拘置所、そして弁護士の同行についてお話ししてきました。今回は、「刑務所で働く」というテーマについてお話ししますが、刑務所と拘置所は同じ敷地内にあることが多いため、ここでの内容は拘置所にも当てはまります。
2、求人サイトに掲載される「公的機関での通訳」
実は、刑務所や拘置所での通訳の仕事は、一般的な求人サイトにも掲載されています。求人情報では「公的機関での通訳」といった表現が使われていますが、実際には刑務所や拘置所での業務を指していることがほとんどです。
ただし、私はこの仕事に応募したことがありません。その理由は、時給が低すぎること(1,200〜1,500円程度)に加え、勤務頻度が少ないことです。多くの場合、通訳の仕事は週1回程度で、毎日勤務するわけではありません。そのため、この仕事だけで生活するのは難しく、通訳として本業を持っている人が副業やボランティア的な感覚で関わることが多いようです。

3、具体的な業務内容
刑務所や拘置所での通訳の主な業務は、刑務官と被告(または受刑者)の間の通訳です。具体的には、以下のような場面で通訳を行います。
• 拘置所・刑務所内での生活ルールの説明
• 規則違反への注意(たとえば「決められた時間に戻らなかった」「所持が許可されていない物を持っていた」など)
• 家族や弁護士とのやり取りの補助
• 受刑者が出す手紙の翻訳
特に、手紙の翻訳は意外と手間がかかる仕事です。本人が出したい内容をそのまま訳すわけではなく、刑務所のルールに則った形で書かれているかを確認しながら進めるため、単なる直訳では済まないことも多いです。
また、日本の司法制度は他国と異なるため、外国人の被告や受刑者が状況を理解できていないことも少なくありません。例えば、自分が行ったことを頑なに否認し続けることで、かえって刑が重くなるケースもあります。留置場にいる段階で弁護士の指示を正しく伝え、適切な対応ができるようにすることも通訳の重要な役割の一つです。
4、勤務地と通勤の問題
刑務所や拘置所は、都市部から少し離れた場所にあることが多く、通勤の負担が大きいのも難点です。例えば、主要な刑務所・拘置所には以下のようなものがあります。
• 東京:小菅(東京拘置所)
• 関西:大阪刑務所(通称「ダイケイ」)
• 北海道:札幌拘置支所・札幌刑務所(通称「サッケイ」)
• その他:府中刑務所、三重刑務所などなどいっぱいあります
地方に住んでいる場合、通訳の仕事をするにはかなりの移動時間が必要になることもあります。そのため、刑務所や拘置所の近くに住んでいる人にとっては、比較的通いやすい仕事かもしれません。
※ちなみにダイケイには外国人がいっぱいいます。刑務所内の運動会では、恐ろしいほど足の速い外国人受刑者もいるそうです。
刑務所・拘置所での通訳の仕事は、社会的に重要な役割を担う仕事ですが、報酬面や勤務頻度の問題から、専業で取り組むのは難しいのが現実です。副業やボランティア的な意味合いで働くことを考えている人には向いているかもしれません。
彼らを(通訳として)救ってあげたいと思う方は、一度求人情報をチェックしてみるのもいいかもしれませんね。
