『ひとりぼっちのスケッチブック』

教室のすみっこ。それが、僕のいつもの場所。
にぎやかな声が、まるで遠い国の音楽みたいに聞こえる。
みんな笑っているのに、僕だけが、見えないガラスの箱に入ってしまったみたいだ。
「ひとり」
その言葉が、ずっしりと胸の上に乗っかっている。
これは、あなたのすぐそばにある、ちいさな物語。
休み時間になるたびに、僕はスケッチブックを開く。
話すのは苦手だけど、絵を描いている時だけは、本当の自分になれる気がした。
描くのは、いつも「虹」。
でも、僕の描く虹は、みんなが知っている七色の虹じゃない。
ある日は、真っ黒な虹。悲しい気持ちの色。
ある日は、灰色と青が混じった虹。空が泣いているみたいな色。
言葉にできない気持ちを、ぜんぶ色に閉じ込めて、誰にも見せずにそっとページを閉じる。
それが僕だけの秘密だった。
ある日の放課後。いつものように教室のすみっこで絵を描いていると、うしろから小さな声がした。
「きれいだね」

振り返ると、隣のクラスの女の子が立っていた。
いつも静かで、あまり話したことがない子だ。
僕は慌ててスケッチブックを隠そうとした。こんな暗い絵、見られたくなかった。
「ご、ごめん…」
でも、彼女は首を横に振った。
「ううん。その虹、なんだか私の心みたい」
彼女は、僕の描いた、くすんだ紫色の虹をまっすぐ見ていた。
「私の心も、時々そんな色になるから」
彼女はそう言うと、自分のカバンから小さな折り紙を取り出した。
そして、僕の目の前で、ゆっくりと青い鳥を折ってくれた。
「はい、あげる」
小さな青い鳥が、僕の机の上にとまる。
「ありがとう」

やっと言えたその言葉は、自分でも驚くくらい、あたたかい音がした。
次の日、僕は新しいページに虹を描いた。
くすんだ紫色の中に、一本だけ、小さな青い線が入った虹を。
メッセージ
ねえ、君は今、どんな色の心をしている?
もし、君が「ひとりだ」と感じて、分厚い壁の中に閉じこもっているとしたら。
その壁に、小さな絵を描いてみない?
歌を口ずさんでみない?
好きな物語を書いてみない?
君だけの表現は、見えない糸みたいに、誰かの心にそっと届くことがあるのかもしれない。
「きれいだね」って言ってくれる人は、いないかもしれない。
でも、どこかで同じ色の心をした誰かが、君の作った小さな虹を、そっと見つめているかもしれないよ。

結び
君が紡ぐ、君だけの色。
それは、世界でたった一つの、特別な虹になる。
大丈夫。君は、ひとりじゃない。
そのスケッチブックの次のページを、一緒にめくってみよう。
