スペインで見つけた「自分を愛する」生き方——V系とデスメタルを追い続けた私が、異国で0日婚を選んだ理由
「親だから」「社会人だから」という言葉は、時に個人の「好き」という感情を覆い隠してしまいます。
今回お話を伺ったのは、日本で長年、周囲に本当の自分を隠して働いていたという箕面もみじさんです。
20年間、一切ブレることなく、ビジュアル系(V系)やデスメタルを追いかけ続けてきた彼女。
そんな彼女が、なぜ、スペインで再会した彼からのプロポーズを受け入れ、「0日婚」を選んで、異国の地へ渡ることになったのか。
日本と、スペインの二つの文化を経験した彼女の言葉から、本当の心の自由を掴むためのヒントを探ります。
週末は「ヘドバン」で、首を痛めるまで自分を解放した20年
——もみじさんは、かなり移動の多い人生を歩まれてきたそうですね。
はい、生まれ育った場所から転勤で別の土地へ。
その後も仕事の都合で数年おきに環境が変わる、移動の多い人生でした。
でも、どこにいても、私の中心には「音楽」という一本の太い軸があったんです。
——V系バンドにのめり込んだきっかけは何だったのでしょうか?
学生時代は、その頃流行っていたバンドをよく聴いていました。
ある時、カラオケで友人が歌っていたV系バンドの曲をを聴いて、身体に衝撃が走ったんです。
気づいたらレンタルショップに走り、CDを借りまくっていましたね(笑)
そこから私の「沼」が始まりました。
——それから20年、ずっとV系一筋なんですね。
ええ。
その後は、美容師さんに勧められた1枚のアルバムがきっかけで、さらに激しいバンドにハマり、そこからはもうデスコアやデスメタルの世界から抜け出せなくなりました。
職場では「眼鏡にポニーテール」という地味な姿で、完璧に気配を消して働いていましたが、週末は一変してデスコアやデスメタル風の黒い服に。
一人で日本中、時には世界中を飛び回り、全力でヘッドバンキングをして、首を痛めて帰ってくる。
それが私の日常のすべてでした。
デスメタルバーでの出会い。タトゥーを纏(まと)った「運命のメタラー」
——そんなもみじさんが、なぜ国際結婚という道を選ばれたのでしょうか。
私はもともと結婚願望も、子供が欲しいという気持ちも、まったくありませんでした。
きっかけは、ライブ終わりに立ち寄るのが日課だったデスメタルバーです。
そこで「今日のライブは最高だった!」と、店主の方に報告するのが、私のルーティンだったのです。
ある日のライブ帰り、いつもの様にデスメタルバーに寄ったところ、
そこに、たまたま旅行者として日本を訪れていた、スペイン人の彼がいたんです。
——彼も音楽好きだったのですか?
はい、彼もゴリゴリのメタラーでした。
ロン毛に髭、腕はタトゥーがしっかり入った大きな体格で、「絶対海外から来日したバンドマンだ!」と思ったんです。
で、かっこいいなって思ったのが最初の印象でした。
でも話してみると普通の人で、すごく気が合って。
SNSを交換して、最初は「今どんな音楽聴いてる?」という、他愛ない音楽仲間の関係から始まりました。
——そこから一気に結婚へ……?
しばらくは友達関係が続きました。
私がスペインへ遊びに行った時に彼と再会したのですが、そこで突然、プロポーズされたんです。
まだ、付き合ってすらいない、まさに「0日婚」のような状態です。
でも、私は「海外に住めるならいいよ」と答えました。
彼への燃えるような愛というよりは、「この人と結婚したら、今とは違う面白い人生が始まるに違いない」というワクワク感が勝ったんです。
「なんとかなる」が合言葉。自分を追い込まないスペインの寛容さ
——実際にスペインで生活を始めて、日本との違いに驚いたことは?
一番は、自分にも他人にも「とにかく優しい」ことですね。
日本にいた頃は、「間違えてはいけない」「ミスを極力防ぐ」というマインドで必死に働いていました。
でもスペインでは、役所の手続きで「今日はネットが繋がらないから、また来週来て」なんて言われるのが日常茶飯事です(笑)
——それは、日本では考えられないルーズさですね(笑)
最初は驚きましたが、彼らは「そんなことで死ぬわけじゃないし、いいじゃない」というスタンスなんです。
この圧倒的な前向きさに触れて、長年張り詰めていた「正解を求めすぎて自分を追い込む癖」が、すーっと消えていきました。
——人間関係の築き方も違いますか?
そうですね。すごくオープンです。
日本では恋人同士の付き合いはクローズドになりがちですが、こちらはグループ交際が基本なんです。
旅行も夫の友達と一緒に行きますし、お互いに、格好をつけない自然なスタイルなんです。
驚いたのは、20代や30代の若者が、隣の家の人と週に一度お茶をしていること。
日本で正体を隠して一人で生きていた私からすると、「こんなに自分をさらけ出してもいいんだ」という発見は衝撃的でした。
「不安定」なのに「不安」がない。豊かさのハードルを下げた、スペインの知恵
——スペインのライフスタイルについて、もっと詳しく教えてください。
とにかく「人生を楽しむ」ことに全振りしています。
一番驚いたのは食事ですね。
スペインには、人と交流を楽しむための「1日5食」の文化があるんです。
朝食:軽く食べて1日が始まります。
午前のティータイム:11時頃、仕事の手を止めてコーヒー。
メインの昼食:午後2時〜3時頃。1日の中で最も食事に時間をかけます。
夕方の軽食:夕方6時頃におやつ。
夕食:夜9時〜10時頃から。
——夜10時に夕食!? 次の日の仕事に響きませんか?
スペインは夏場だと夜10時まで日が沈まないので、仕事終わりでもみんな公園で本を読んだり、飲みに行ったりしています。
「明日が辛くても、それは明日の話。今楽しければいい!」というマインドなんです。
驚くことに、夫の友人グループには正社員が一人もいません。
それでもみんな、仕事がなくなれば「じゃあ遊ぶしかねえな!」と笑っているんです。
医療費制度もありますが、それ以上に「なんとかなる」という一級の楽観主義が街中に溢れています。
言葉の壁は、こちらの30代以上の人々は、簡単な英語も通じないので、スペイン語の習得は必須ですね。
夫は、とても日本語が上手なので、いつもサポートしてもらっています。
「太陽が出ているなら、遊ばなきゃ損じゃない?」
——日本で「こうあるべき」という枠に苦しんでいる方へ、メッセージをお願いします。
こちらでは、お年を召した方同士が毎日カフェで何時間もおしゃべりしたり、体型を気にせず堂々と海で遊んでいたりします。
年齢や肩書きなんて誰も気にしていません。
「太陽が出ていて明るいなら、今を楽しもうよ!」
ただそれだけの、シンプルで力強いエネルギーに満ちています。
——自分の「好き」を貫く勇気が大切なのですね。
はい。私は20年間、自分の「好き」を、誰にも言わずに守ってきました。
でも、その「好き」をきっかけに出会った彼と、今はこの自由な場所で暮らしています。
自分の「好き」を信じて一歩踏み出した先には、想像もつかないような自由な物語が待っています。
自分を許して、人生を謳歌してもいいんだと、すべての方に伝えたいです。
JAPAN INTERVIEWについて
JAPAN INTERVIEWでは日本中のあらゆる人を対象に、インタビューを実施、そのリアルを発信する団体として活動しております。
経営者・学生・専業主婦・フリーター・精神疾患の方・ひとり親の方・施設に入られた方・フリーランス・さまざまな方がおられると思います。
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取材:lapis・文:黒江 れみ
