日本人の物語00087【神代】国譲り*
タケミカヅチとタケミナカタの力比べが始まります。2人の名前が似ているせいで混乱されるかもしれませんので、復習しておきますよ。タケミカヅチというのが出雲を譲り受けるためにアマテラスの送り込んだ刺客。一方、タケミナカタというのがオオクニヌシの息子で出雲を守ろうとする側です。
まず、タケミナカタがタケミカヅチの手を取りました。するとその手がたちまち氷の剣となってタケミナカタを襲います。これに驚いたタケミナカタは、怖れて逃げ始めました。
今度はタケミカヅチがタケミナカタの手をつかみ、握りつぶして遠くへ投げ飛ばしてしまいました。こうして力比べはあっという間に決着がついてしまいました。
タケミカヅチは逃げるタケミナカタを追いかけます。信濃の諏訪で追い詰め、殺そうとすると、タケミナカタは命乞いを始めました。
「どうか殺さないでください。今後この諏訪の地から外へは出ません。葦原中国は献上いたします」
一体これを「国譲り」と呼んで良いのでしょうか。譲るというより、暴力と脅迫による侵略と言って良いように思われます。
出雲に戻ったタケミカヅチは、再びオオクニヌシに会いました。オオクニヌシは、
「この葦原中国は命令に従ってお譲りすることにいたしましょう。ただ、高天原に届くほどの壮大な宮殿を建てて、私がそこに住み、祀られることをお許しください」
と言います。つまり、自らが宮殿で祀られることを条件に、国を譲るというのです。
こうしてオオクニヌシを祀る宮殿が造られました。これが島根県出雲市の出雲大社です。
出雲大社の宮司は「出雲国造(いずものくにのみやつこ)」と呼ばれ、その初代はアメノホヒとされています。アメノホヒとは、出雲攻略のために最初にアマテラスが派遣した次男で、「オオクニヌシに媚びへつらってしまい、三年経っても報告がない」と言われたあの神のことです。つまり、アマテラス側の刺客であったアメノホヒが、オオクニヌシという敵の大将を祀っているわけなのです。何だか不思議な気がしますね。
現在の宮司は、84代目の千家尊祐(せんげたかまさ:1943~)氏です。神代から家系図が続いている家柄は、天皇家と千家家だけです。アマテラスの長男・アメノオシホミミの子孫が天皇家で、次男・アメノホヒの子孫が千家家というわけです。
尊祐氏の長男、千家国麿(せんげくにまろ:1973~)氏が、大正天皇の曾孫に当たる高円宮典子(たかまどのみやのりこ:1988~)女王と結婚したことは記憶に新しいですね。
また、上皇陛下が高校生だったときに、SPから逃げて友人と銀座を散歩した「皇太子銀ブラ事件」というのがあるのですが、このとき同行した友人の一人が千家崇彦(せんげたかひこ:1933~2007)氏という千家家の方ですから、天皇家と千家家とはかなり親密な関わりを持っているようですね。

