日本人の物語00113【人代前期】ホムチワケの発話
古事記と日本書紀はこの後、垂仁天皇とサホビメの間に産まれたホムチワケのエピソードを描いています。
産まれてすぐに母を失ったホムチワケは、垂仁天皇の下で育てられます。しかし、ホムチワケは成人してもなお発話することができませんでした。何らかの言語障害ということでしょうか。
ある日、ホムチワケが白鳥を見て口をパクパクさせました。
それを知った垂仁天皇は、アメノユカワタナ(天湯河板挙)に命じて白鳥を追いかけさせました。日本書紀によると、アメノユカワタナは出雲まで白鳥を追いかけていって、ようやく捕らえることができたそうです。その白鳥を与えると、ホムチワケはついに話せるようになったのだとか。アメノユカワタナは鳥を捕らえた功績により「鳥取造(とっとりのみやつこ)」という姓を与えられました。そしてアメノユカワタナが後に支配した場所が「鳥取」という地名になったといわれています。
ちなみに47都道府県中、記紀神話にその由来を持つ地名は鳥取県と三重県だけです。
一方、古事記には全く別のことが書かれています。白鳥は越後(新潟県)で捕らえられ、天皇に献上されたのですが、それでもホムチワケは話さなかったというのです。
悩んでいた垂仁天皇の夢に、オオクニヌシが現れ、
「我が宮を整えて天皇の宮殿のようにせよ」
と言いました。オオクニヌシといえば出雲大社に祀られているはずなのですが、その宮が天皇の宮殿に比べると質素で、不満だったということでしょうか。
垂仁天皇は、ホムチワケを出雲大社に参拝させ、宮殿を整備させました。
参拝を終えて帰る際に、斐伊川付近に仮宮を作って一泊したところ、ホムチワケが突如として話し始めました。
「この川下にある青葉の山は、山に見えるが山ではあるまい。オオクニヌシを祀るための祭場ではないだろうか」
最初に喋ったことがこれかよ、と突っ込みたくなりますね。あまりに長すぎるセンテンスです。
ともかくこうして、オオクニヌシを祀ることでホムチワケは話せるようになったのです。このように、アマテラスの子孫たちに対して、事あるごとにオオクニヌシやオオモノヌシは祟りを起こします。出雲系の「国つ神」に対する祭祀を怠ってはならない、という教訓を記紀は伝えているのでしょう。
