日本人の物語00093【神代】イワナガヒメの帰還*
さて、「イワナガヒメ」という名前はどういう意味でしょうか。
妹のコノハナノサクヤヒメが花のような麗しい容姿だとしたら、姉のイワナガヒメは石のよう、つまり醜い容姿なのですね。
ニニギは醜い姉を見て驚き、その日のうちにイワナガヒメを実家に帰してしまいました。あまりにひどい対応です。
オオヤマツミは、娘がすぐに帰宅したのを見て、こう言いました。
「イワナガヒメを傍に置いてくれれば、御子の命は石のように長くなるはずでした。しかしコノハナノサクヤヒメだけを傍に置いたならば、御子の命は桜のようにはかなくなるでしょう」
これより以後、ニニギの子孫には「寿命」というものができるようになりました。
天皇の命が有限となったのは、ニニギがコノハナノサクヤヒメとだけ結婚したからだというのです。
桜は美しいが、はかない。石は美しくはないが、長く姿を変えない。なかなか哲学的ですね。即物的な美しさに捕らわれてはならない、ということでしょうか。
そういえばイザナミがイザナギを呪って
「私はあなたの国の人々を1日に千人、絞め殺しましょう」
と言ったことがありましたね。あの件によって人間に寿命というものができることになったのですが、あの呪いの対象はあくまで人間だけでした。
神の一族にまで寿命ができたのは、どうやらニニギが面食いだったことに原因があるようです。
するとニニギの父であるアメノオシホミミや、祖母に当たるアマテラスには寿命がありませんから、現代にまだ生きているのでしょうか。よく分かりません。
ちなみにニニギはこの逸話のとおりちゃんと寿命ができて、ちゃんと死んでいます。というのも、ニニギの墓が鹿児島県薩摩川内(さつませんだい)市にあるのです。「可愛山陵(えのみささぎ)」と呼ばれている墓です。神に墓があるというのも何だか違和感がありますが、宮内庁が指定しているので、一応公式ということになります。
さて、古事記のこのストーリー展開を見るに、ニニギがイワナガヒメを返した行為は、非難に値するものだと考えられているようですね。そのために報いを受けたと理解して良いでしょう。
アマテラスの息子、アメノオシホミミはいまいち頼りない男でしたが、孫のニニギは更にひどい人物のようです。

