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日本人の物語00075【神代】草薙の剣

 スサノオが待ち構えていると、遂にヤマタノオロチが現れました。頭が8つ、尾が8つの化物です。ヤマタノオロチはスサノオの存在に気づかず、8つの酒樽にそれぞれ頭を突っ込んで、酒をガブガブと飲み始めました。
 しばらくすると酒が回って、ヤマタノオロチはその場でぐっすり眠ってしまいます。この隙を狙って、スサノオは剣でもってヤマタノオロチに斬りかかりました。体から血がほとばしり、斐伊川は赤く染まりました。
 怪物退治のために結婚を条件にしたり、酒で眠らせてから倒したり、何かと卑怯な手段が目につきますが、当時はまだ武士道といった概念もないでしょうから、仕方ないでしょう。
 尻尾を斬ろうとしたとき、スサノオはヤマタノオロチの中に何か固いものが入っていることに気づきました。尻尾の中を見てみると、そこには神々しく輝く剣がありました。スサノオはこの剣を取り出し、高天原にいるアマテラスに献上します。
 この剣こそ、「天叢雲剣(あめのむらくものつるぎ)」、そして後に「草薙の剣(くさなぎのつるぎ)」と呼ばれることとなる、三種の神器の最後の一つです。
 ここで三種の神器についてまとめておきましょう。
・八咫の鏡(やたのかがみ): 伊勢神宮(三重県伊勢市)に安置
・八尺瓊の勾玉(やさかにのまがたま): 皇居内に安置
・草薙の剣(くさなぎのつるぎ): 熱田神宮(愛知県名古屋市)に安置
 神武天皇以来、天皇即位の際にはこれら3つを揃えて即位式を行うこととされています。これらが揃っていないと天皇とは認められないのです。今も伊勢神宮、皇居、熱田神宮にそれぞれ神器が安置されているはずです(多分)。
 さて、ヤマタノオロチ退治が行われたという伝承地が、島根県雲南市の斐伊川沿いにあります。そこには現在「ヤマタノオロチ公園」があり、スサノオとヤマタノオロチの対決を再現した石像と、スサノオが箸を拾ったという「箸拾いの碑」があるようです。
 そしてその公園から少し離れたところに、斐伊神社があります。斐伊神社は、スサノオがヤマタノオロチを倒すために矢を放った場所と伝えられています。祭神はスサノオとクシナダヒメです。
 この斐伊神社の境内には「八本杉」があります。八本杉は、スサノオがヤマタノオロチの首を埋め、そこに植えたという杉のことです。杉は斐伊川の氾濫で流失してしまったため、現在ある杉は明治6(1873)年に植えられたものとのことです。
 神話上の出来事について、かくも具体的な場所が伝わっているとは不思議ですね。

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