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日本人の物語00949【南北朝初期】塩冶判官讒死 師直の執心

実は大学時代には数学にハマっていて、「俺にしか書けない高校数学の参考書を書いてやる!」と一念発起して、二次関数から始まる解説書を延々と書いていました。今はそのファイルは消えてしまいましたが。
どうも私は塗りつぶすように何かを解説していくことが好きなんですね。今となっては日本史以外に手を出す暇はなくなってしまいましたが、時間があれば数学の解説書も書いてみたいです。

 師直の顔世御前に対する執心はひどくなるばかりで、何度も侍従局を呼んで、
「このままでは恋の病で死んでしまいそうだ。主君のために捨てようと思っていた命を、人妻のために失ってしまうのは実に悲しい。もし死ぬことになったなら侍従局を道連れにしようぞ」
などと恐ろしいことを言い出します。現代風にいうとストーカー殺人ですね。
 侍従局ももはや扱いかねて、
「師直殿に、顔世御前が湯から上がって素顔でいるところを見せれば、愛想が尽きるかもしれない」
と思って、
「あなたは顔世御前を見もせずに想像しているだけでしょう。人の話は当てにはならないものです。まずは遠くから様子を見てみましょう」
と提案しました。そもそも侍従局が顔世御前の美人ぶりを大袈裟に語ったことが原因なのに、今更何を言っているのでしょう。
 侍従局は、塩冶判官が留守の日を調べて、ちょうど顔世御前が風呂に入る時間帯を選んで塩冶の館まで師直を案内しました。
 師直がそっと衝立の隙間から覗くと、ちょうど顔世御前が湯から上がったところで、濡れた髪を垂れ下げた姿でした。そのあまりに美しい姿に、師直は物の怪が取り憑いたようにわなわなと震え始めました。
 侍従局が
「そろそろ帰りましょう」
と言って師直の袖を引きますが、師直は全く起き上がろうとせず、体が痙攣したような状態でした。恋の病とはこういうものなのでしょうか。
 侍従局は家人の協力を得てどうにか師直を引きずって送り帰したものの、師直はその後もすっかり恋の病に伏せってしまったといいます。侍従局は師直のあまりの狂気ぶりに恐ろしくなって、家を捨てて田舎へ逃げ帰ってしまいました。
 こうして、師直にとって顔世御前への取り次ぎを頼める唯一の相手がいなくなってしまいました。
 師直はどうにかして顔世御前に会おうと知恵をひねって、遂に禁断の方法に手を染めてしまいます。

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