日本人の物語01321【室町/義持期】小栗判官伝説 判官殺害
最近、和歌山県の熊野大社に行ったときに『小栗判官物語』という本を見つけて購入しました。その本を見て知ったのですが、熊野大社付近には小栗判官に関する史跡が相当数あるようです。
小栗満重とその子の助重(すけしげ:1413~1481)は地元でひどく人気があったらしく、死後に「小栗判官伝説」が形成され、流布されました。史実とフィクションが巧妙に入り混じったストーリーなのですが、この機会に紹介しておきましょう。
小栗城主の小栗満重・助重父子は讒言によって謀反の疑いをかけられ、鎌倉公方に城を攻め落とされました。満重は自害しましたが、「小栗十勇士」と呼ばれる面々の活躍によって助重は辛くも城から脱出しました。この助重が「小栗判官」と呼ばれるこの物語の主人公です。(父の満重を小栗判官とする説もあります。)
10人の家来とともに東海道を下っていた判官でしたが、藤沢(神奈川県藤沢市)に来たところで日が暮れてしまいます。そこに横山太郎(よこやまたろう)と名乗る者が宿の提供を申し出てきましたが、横山は実は旅人を殺して金品を奪う盗賊でした。
横山は自邸に判官らを呼び、人を嚙み殺す暴れ馬を使って判官を殺害しようとしますが、馬術の名手であった判官は難なく馬を乗りこなしてしまいます。続いて横山は酒に毒を盛って一同を殺害する作戦を立てます。
このとき横山邸には照手姫(てるてひめ)という遊女がいました。照手姫は元々は公家の出身でしたが、両親の死後に男に騙され、東国に遊女として売られてしまっていたのです。ちなみに名前は「照手」や「照天」などバラつきがあり、異説では佐竹義篤の姪に当たるともいいます。
照手姫は判官を一目見て、
「この人を殺させてはいけない」
と直感しました。どうにかして判官を助けたいと思い、わざと酒を膝にこぼして拭きながら
「この酒には毒が入っています」
と小声で判官に打ち明けました。判官は横山の正体を知って酒を拒みますが、横山は無理やり毒を押し付けて11人全員を殺害し、その死体を上野ヶ原(うわのがはら:横浜市戸塚区)に捨てました。
その日、遊行寺(神奈川県藤沢市)の僧・太空(たいくう)は、夢の中で閻魔大王の使者と名乗る者と出会います。その者がいうには、
「小栗判官と家臣たちが上野ヶ原に倒れている。判官の命だけは救うつもりなので、急いで助け、熊野(和歌山県新宮市)で湯治させるように」
というのです。目覚めた太空はお告げ通りに上野ヶ原に向かい、10体の死体に混じって僅かに体が動いている判官を見つけます。
『小栗判官物語』を購入したおかげで、この話を非常に詳しく取り上げることができました。今後もしっかり史跡を巡ってエピソードを拾っていきたいと思います。
