日本人の物語01394【アイヌ神話】アイヌラックル登場
「ユーカラ」は伝説ごとにストーリーが異なり過ぎていて、最大公約数的なものを見出すのが大変でした。
まずは日本や元が進出する前のアイヌについて見ていきます。
アイヌ民族は文字を持たなかったため、「ユーカラ」と呼ばれる英雄の登場する叙事詩を口伝で伝えてきました。その「ユーカラ」はかなりの分量からなるものの、
・アイヌラックル(別名オイナカムイ)という名の英雄神の活躍
・ポイヤウンペという名の人間の英雄の活躍
がメインテーマであり、この2点を詳しく解説したいと思います。
ユーカラの物語は、幼い主人公アイヌラックルが山奥で母に育てられているところから始まります。
ある日アイヌラックルは、母から鹿を獲ってくるよう言われ、川を上っていきます。そこにセミとカラスが飛んできて、たちまち2人の少女の姿に変わりました。アイヌラックルが岩に隠れて2人の少女の話を聞いていると、
「国焼き村焼き棚さがし、大椀、胸元、鍋抱え、アイヌラックルのために頭巾を作りましょう」
「国焼き村焼き棚さがし、大椀、胸元、鍋抱え、アイヌラックルのために鉢巻を作りましょう」
などと歌っています。この「国焼き村焼き棚さがし」という謎の枕詞を聞いたアイヌラックルは、きっと悪口だろうと立腹しながら帰宅しました。
帰宅後、母は巫女の正装をしてアイヌラックルにその出自を語り始めます。
「はじめ、国土は荒涼として木も草も生えていませんでした。そこに天からチキサニの女神が遣わされました。天を主宰する兄弟神のうち、弟神がチキサニを深く愛するようになり、それを咎められて戦いを仕向けられ、弟神は毎日休む暇なく戦わねばならなくなりました。弟神はやむなく勝手に他人の家に入って棚を探って大椀を使って食べ、さらにはそれも面倒だと鍋を胸元に抱えて飯を食べたのです。さらに戦いのために村が焼かれてしまい、弟神は『国焼き村焼き棚さがし』『大椀、胸元、鍋抱え』などというあだ名を付けられてしまったのです。何を隠そう、その弟神とチキサニの間に産まれたのがあなたなのです」
何と、アイヌラックルは天を主宰する神の息子だったのです。そして母だと思っていたのは「日の女神」であり、チキサニから委託を受けてアイヌラックルを育てていた養母だったことが明らかになりました。
このように、アイヌ神話は神が世界を作ったところから始まるのではなく、アイヌラックルが自らの出自を知る場面から書き起こしているのです。時系列をあえて逆転させることで物語性を高めているわけで、なかなか面白いですね。
アイヌ神話は「美しく歌い上げること」に意義があるという、珍しい特徴を有するようですね。日本の和歌にも通じるものがありそうです。
