日本人の物語00084【神代】アメノホヒとアメノワカヒコ
せっかくオオクニヌシが完成させた葦原中国を、アマテラスが「ここは我が子が治めるべき国だ」と主張し始めました。我が子とはアマテラスの長男・アメノオシホミミのことです。
アメノオシホミミの名を覚えている読者は少ないでしょう。アマテラスとスサノオが誓約をして、互いに子を産み合って競ったというエピソードがありました。あのとき、スサノオがアマテラスの勾玉を手にとって、噛み砕いて産み出したのがアメノオシホミミでした。
アマテラスの主張は侵略に値するのではないか。そんな疑問が湧くのはもっともです。国譲り=侵略説については後ほど検討することにして、とりあえずストーリーを先に進めましょう。
アマテラスに指名されたアメノオシホミミは、天の浮橋に立って葦原中国を見下ろします。すると見えてきたのは、ひどく騒がしい国の様子でした。「騒がしい」というのがどういう状況なのか、古事記は明らかにしていませんが、要するにアメノオシホミミが突然降りていっても受け入れてもらえるような状況ではなかったということでしょう。アメノオシホミミは尻込みしてしまい、高天原に帰ってしまいます。情けないやつですね。
そこで、タカミムスビとアマテラスは、八百万の神々を集め、相談しました。どうすれば葦原中国をアメノオシホミミに治めさせることができるか、思案することにしたのです。
ここでタカミムスビが再登場しました。古事記で2番目に登場する神です。「お隠れになった」と言いながらここで再登場して、まるでアマテラスとコンビを組む最高司令官のように振舞っています。タカミムスビについても様々な説があり、謎の多い神です。
アマテラスは言いました。「葦原中国は、我が子が治めるべき国であるのに、今は荒ぶる国つ神が多いようである。どの神を遣わせて、荒ぶる神々を説得させれば良いだろうか」
これに対しオモイカネが提案します。「アメノホヒ(天菩比)を遣わせてはどうでしょう」
オモイカネといえば、あの天の岩戸事件のときに解決策を思いついた知恵の神でしたね。今回も上手く事態を解決してくれるのでしょうか。そしてアメノホヒとは、アマテラスの次男でしたね。彼もまた、アマテラスの勾玉から産み出された神の一人です。
オモイカネの提案により、アメノホヒが葦原中国に降りていきました。しかし、アメノホヒはオオクニヌシに媚びへつらってしまい、3年経っても報告がありません。タカミムスビとアマテラスは困ってしまい、また相談します。オモイカネは「今度はアメノワカヒコ(天若日子)を遣わしてはいかがでしょう」と提案しました。
こうしてアメノワカヒコが葦原中国に降りていきました。アメノワカヒコには、高天原の霊力を秘めた弓矢をあらかじめ持たせておきました。しかし、アメノワカヒコもまた、8年間に渡って何らの報告をしなかったのです。
実はアメノワカヒコは、オオクニヌシの娘であるシタデルヒメ(下照比売)と結婚してしまっていたのです。これでは報告が来るはずがありません。
こうして、高天原が送った使者は2人ともオオクニヌシに取り込まれてしまいました。
