日本人の物語01396【アイヌ神話】農耕の始まり
最近、執筆作業が滞っており、3ヶ月くらい何も書けていません。まあ来年末くらいまでは既に原稿があるので、しばらく書けなくても大丈夫なんですが。
アイヌラックルの神話の中でもう一つ重要なのが、
「民に農耕を教えた」
という点です。前述のとおり、北海道では7世紀頃から雑穀の生産が始まっており、それはアイヌラックルが教えたものだと伝わっているのです。
ある日、アイヌラックルは神々が住む山に出かけました。神々の歌や踊りに見とれていたアイヌラックルは、一人の美しい少女を見つけてたちまち恋に落ちました。アイヌラックルは少女が天界に帰るのを追いかけますが、途中で見失ってしまいます。
アイヌラックルは諦めきれず、同じ山に出かけては少女を探しましたが、もう二度と現れません。そこで別の女神たちが
「天を主宰する神の娘が病に倒れ、何をしても効き目がないらしい」
との噂話をしているのを耳にします。気になったアイヌラックルが天界に登ってみると、そこにいた翁神がこう言います。
「私の娘はお前に恋煩いしていたことが分かった。お前たち2人が私の試練に合格すれば、結婚を認めてやろう」
何だかスサノオがオオクニヌシに与えた試練(00080回参照)を思い出してしまいますが、ここでアイヌラックルに出された試練は一風変わったものでした。6人の音楽家が音楽や踊りを奏でる間、決して笑ってはいけないというのです。
アイヌラックルは笑わずに乗り切りましたが、娘の方が少し笑ってしまったため、試験は不合格となりました。翁神は
「では次の試練に合格すれば認めてやろう」
とチャンスを与えてくれます。その次の試練というのが、
・臼、杵、箕、鞘、機といった男が作るべき品々を作り、下界に住む人間の男たちに作り方を教える。
・衣類、冠、首飾りといった女が作るべき品々を作り、下界に住む人間の女たちに作り方を教える。
というものでした。2人はこれをこなし、無事結婚を認められました。
狩猟民族であったアイヌに農業を教えたのは、実際には本州の和人だったでしょう。しかしアイヌ民族は麦、粟、キビ、ソバ、ヒエ、緑豆といった雑穀の収穫はアイヌラックルという神が与えてくれたものと感謝し、祈りを捧げながら食していたようです。
ついつい日本神話と比較しながら読んでしまいます。
