日本人の物語00086【神代】タケミカヅチの派遣
オモイカネの提案がことごとく失敗し、葦原中国は未だアマテラスのものになっていません。アマテラス側の次なる手は一体何でしょうか。
オモイカネは言います。「次はタケミカヅチ(建御雷)を派遣するのが良いでしょう」
このタケミカヅチこそが、失敗続きだった葦原中国攻略に終止符を打つ男です。
タケミカヅチの名をご記憶でしょうか。イザナギがヒノカグツチの首を斬ったとき、飛び散った血の中から産まれた神の一人でしたね。
まず、タケミカヅチの登場シーンが振るっています。タケミカヅチは十拳(とつか)の剣を逆さまに海に刺し立てて(なぜ剣が海面に刺さるのか、などと突っ込んではいけません)、その剣先にあぐらをかいた状態で登場します。お尻に剣が刺さって痛いじゃないかと思ってしまいますが、まあ何らかの霊力を持っていて大丈夫なのでしょう。
タケミカヅチはオオクニヌシに話しかけます。
「お前が領有する葦原中国は、アマテラスの子が治めるべき国である。お前の考えはどうか」
オオクニヌシは答えます。
「私は答えるわけにいきません。息子のコトシロヌシ(事代主)が答えるでしょう。しかしコトシロヌシは魚を釣りに美保崎(みほのさき)に行ったまま帰ってきません」
美保崎は一度登場した地名ですね。島根半島の北東端にある岬のことです。オオクニヌシは恐れをなしたのか、自らは答えずに息子に責任をなすり付けたということでしょうか。
そうしてコトシロヌシが呼ばれたのですが、コトシロヌシは
「わかりました。ではこの国はアマテラス様のお子に譲りましょう」
と答え、「天の逆手(あめのさかて)」と呼ばれる仕草をして、すぐに姿を隠してしまいました。面倒事に巻き込まれたくなかったのでしょうか。「天の逆手」とは、手の甲と甲を打ち鳴らす仕草のことと考えられており、相手を呪う行為に当たります。コトシロヌシは国を譲るに当たって、相手に呪いをかけたのです。
タケミカヅチは「コトシロヌシはこう答えたが、他に意見を言う者はいるか」と尋ねます。オオクニヌシは「もう一人の子、タケミナカタ(建御名方)がおります」と言います。タケミカヅチとタケミナカタ。なぜこうも似た名前なのでしょう。区別がつきづらいですね。
ちょうどそのとき、そこへタケミナカタがやって来ました。こちらも登場シーンがなかなか振るっています。千人がかりで引くほどの大きな岩を、手の先でもてあそびながらやって来たというのです。かなり強そうです。
タケミナカタは
「我が国へやって来て、こそこそと物を言うのは誰だ。力比べをしてやろうじゃないか」
と言います。どうやらタケミナカタはひどく好戦的な人物のようです。
かくしてタケミカヅチとタケミナカタの「力比べ」が始まります。
