日本人の物語00737【鎌倉末期】鎌倉末期概観
元徳3(1331)年4月29日の倒幕計画発覚から、元弘3/正慶2(1333)年5月22日の鎌倉幕府滅亡までの2年間を「鎌倉末期」としてまとめます。
「後醍醐天皇による倒幕計画が発覚し、一旦は朝廷側が敗れるものの、不死鳥のごとく蘇った後醍醐天皇に武士たちが次々と呼応し、見事幕府を倒す」という物語性の豊かな時代です。
この稿では『太平記』という軍記物語を主軸に話を進めていきます。太平記のエピソードは史実かどうか疑わしいものも多いのですが、あえてそれらを紹介していきます。
太平記には、護良親王、足利高氏、楠木正成、新田義貞、佐々木道誉といった魅力ある個性的な武将が次々と登場し、面白エピソードが満載です。
ちなみに太平記は後醍醐天皇即位から描き始め、鎌倉幕府の滅亡、次いで後醍醐天皇による建武政権の誕生、その崩壊から南北朝の動乱までを描いたものです。「2つの政権の崩壊には明確な原因があったのだ」と主張するために、執権北条氏と後醍醐天皇、両方を悪く描いているのです。ですから本章で描かれる鎌倉幕府と後醍醐天皇の姿は、少し割り引いて捉える必要があります。
また、太平記のもう一つの特徴が『平家物語』の影響を色濃く受けていることです。平家物語は仏教説話としての色彩が強く出ているところ、太平記もその二番煎じのような物語なのです。「太平記上のある登場人物が、平家物語上のある登場人物に似せて描かれている」といった人物ごとの類似点もあります。そうした点も着目して読んでいただければ、より楽しめると思われます。
鎌倉幕府崩壊から南北朝動乱につながるこの時代は、源平合戦に比べると比較的人気が少ないようです。しかし、昭和33(1958)年から連載された吉川英治の小説『私本太平記』や、それを元にした平成3(1991)年の大河ドラマ『太平記』、北方謙三の南北朝を舞台にした小説3部作『悪党の裔』『道誉なり』『楠木正成』などで一定の人気が出てきたようです。
まだ大河ドラマになったのは1作だけですし、戦国・幕末に比べるとファンは少ないようですが、令和3(2021)年から週刊少年ジャンプで『逃げ上手の若君』の連載が始まるなど、これから更なるファン獲得が期待される時代です。また史跡散策についても、赤坂城、千早城、笠置山といった関西の史跡もあれば、小手指原、分倍河原といった関東の史跡もあり、楽しみ方は豊富にあります。本稿でも鎌倉滅亡から南北朝までの魅力をしっかり伝えていくつもりですので、少しでもファンが増えてくれることを願っております。
