日本人の物語00064【神代】美斗能麻具波比
さて、「美斗能麻具波比(みとのまぐわい)」とは性交を意味する言葉です。古事記ではこれを以下のように興味深い言葉使いで表現しています。
イザナギはイザナミに対し、
「あなたの体はどのようになっているのか」
と尋ねます。イザナミは
「私の体はほとんど出来上がっているのですが、一箇所だけ足りずにくぼんでいるところがあります」
といいます。これを聞いたイザナギは、
「私の体もほとんど出来上がっているのだが、一箇所だけ余って出っ張っているところがある。余っているところとくぼんでいるところを重ねて国を産もうと思うがどうだろう」
と提案します。何だか卑猥な印象を受ける人もいるかもしれませんが、古事記ではこのような露骨な表現がなされているのです。
さて、2人は天の御柱の周りをそれぞれ反対向きに回り、出会ったところでまぐわいをしようとします。なぜわざわざ反対向きに回って裏で合流するのか、よく分かりません。
出会ったところでイザナミが
「なんて良い男なんでしょう」
と声をかけ、イザナギが
「なんて良い女なんだろう」
と返事をしました。そうしてまぐわったところ、産まれてきたのは手足のない蛭子(ひるこ)でした。2人は悲しんでその子を葦の舟に乗せて流してしまいました。さらに、次に産まれてきたのも不完全な淡島(泡のような島という意味でしょうか)でした。
手足がなかったからといって流してしまうとはひどい……と思うのですが、既に死んでいたのかもしれません。遺体を海に流すのは葬送の意味をこめた行為なのでしょうか。
2人は高天原に戻って、何がいけなかったのか、神々に相談します。
神々の薦めで太占(ふとまに)をしたところ、「女から先に声をかけたのが良くなかった」と判明しました。太占とは、鹿の骨を焼いてヒビの入る方向で占う行為をいいます。
2人は天の御柱に戻ってやり直しました。逆回りで御柱の周囲を回って、今度はイザナギの方から
「なんて良い女なんだろう」
と言い、それを受けてイザナミが
「なんて良い男なんでしょう」
と答えます。そうしてまぐわったところ、今後は国が次々と産まれたというのです。
古代においては、結婚は男から申し込むものでした。「女が主導権をとるのは良くない」という思想が表れているように思えます。
